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魔王の勧誘

「は……?」


 今目の前にいるフィブリオテークという女性。彼女は、全ての魔人の王であると言った。


 魔人の王、それが意味するのはたったひとつ。


「……魔王、ですか?」


 慌てて主さまの方を見ると、首を縦にふって肯定している。


「魔人の王であるから、私が魔王だ」


 長年、人間と対立している魔人の頂点。それが目の前にいる。


 目の前の女性の魂は上位だ。つまり霊獣と同等の力を持つはず。魔王と言われてもなんの違和感もない実力なのは確かだ。


「さて、お主の名は?」


「……アオイです」


 名乗られておいてこちらが名乗らないのは失礼かと思い、素直に告げる。


 もう少し畏まるべきなのかもしれないが、それはどうしようもない。


 そもそも人とほぼ交流をしていない上に、唯一身近で尊敬すべき方だと思っている主さまは別に礼儀など求めてこない。


 なので世界の礼法なんて知る機会がないのだ。


「ではアオイ、我が軍に入る気はないか? かなりの高待遇を約束しよう」


「……え?」


 にこやかな自己紹介からいきなり勧誘された。


 我が軍に入る? つまり魔王の軍に? どこからそうなった? いやそもそもなんで僕を勧誘するんだ?


『貴様何を言っている? 挨拶、をするのではないのか』


「勧誘も挨拶の一つだ。不死鳥は口を出さないでいただきたい。そしてアオイとやら、どうだ?」


 主さまと口論したと思ったらその流れで僕に会話を振ってくる。


 この人の性格を表現するなら、我が道をゆく、というのがピッタリだ。


「……詳しい話をお願いします」


『いいのか客人。魔王は一度始まると非常にしつこいぞ』


 何を心配したのか聞いてくるが、しつこいくらいは構わない。


 それよりももしこれが本気の勧誘なら、絶対に聞かないと後悔することになるという思いの方が強かった。


「ほら、不死鳥はどこかに行け。本人がいいと言っているのだぞ」


『……』


「それでお主は何から聞きたい。なんでも答えてやろう。ちなみに待遇に関してだが、望む条件は可能な限り全て実現しよう」


 何から聞きたいか。僕が知りたいことは山ほどあるが、まずはこれだ。


「なぜ、僕を勧誘するんですか?」


 これが今回の一番の疑問点だ。なぜわざわざ僕を勧誘するのだろうか。僕が軍にいて、なんの利点があるのだろうか。

 

「なぜ? むしろなぜ勧誘されないと思った。実力のあるものは我が軍に欲しい。それだけだ」


「……え? 僕の実力? どのような点でしょうか?」


 僕はわざわざ高待遇で勧誘するほどの価値があるのか? 


 確かにちょっとした森林破壊くらいはできるが、そんなのたった一年しか鍛えていない僕よりもよっぽど強い人がいるはずだ。


 霊獣である主さまに傷を与えられるが、それもそこまですごいとは思えない。


 地球の赤ちゃんが爪で引っ掻けば強い大人にでも痛がるように、多少強ければ誰でも霊獣に傷くらい与えられるだろう。


 その程度のレベルだ。僕はこの一年かなり鍛えた自信はある。でも軍に高待遇ではいれるほどなのかという疑問がある。


「どのような? 何を言っている?」


 これまで多少不機嫌そうな顔か余裕のある顔しかしてこなかった魔王が、不可解だといった顔になった。


「そもそも中位魂の時点で勧誘するに決まっているだろう。私の配下の中でも中位に達しているものは極々少数だ」


「中位魂が? そんなに珍しいですか?」


「は? おい不死鳥」


 完全に理解できないものを見る目をした後、主さまの方を向く。


 何か僕は変なことを言っただろうか。


『なんだ。言っておくが我は何もしていないぞ』


「ではなぜここまで話が噛み合わぬ」


『本人にきけ。我に聞くな』


「……ではアオイとやら。一つ聞くが、中位の魂がどれだけ希少かわかっているか?」


「希少……?」


 上位の魂が本当に少ないのはわかる。霊獣は4体しかいないと以前聞いた。だが中位はそこまで珍しいのだろうか。僕もヘノーも中位だ。


「…………まさか本気で理解していないとは。貴様どうやって育てた?」


『特段何かはしてない。ああ、同時に霊獣の子と共に鍛えたが』


「どう考えてもそのせいであろうが」

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