『血染メノ行者』
「はあっ、はあっはっはっ………」
呼吸が荒い。
それにもう全身傷だらけだ。今すぐこの場に倒れたい。
だが今倒れたらダメだ。まだ一人残っている
「………あとは、お前だ」
「ひっ! やめろ! 化け物!」
最後まで残っていた兵士が叫び声を上げる。
僕を殺そうとしておいて、自分の番になったら『やめろ』だと?
「やめろ! やめてください! あぁ! たの……」
「………『爪撃』」
何かを言おうとしていたがそんなもの聞く価値がない。
もう何度目かわからない『爪撃』を使い、兵士を殺す。
一体どれだけの人間を殺しただろう。だがそのこと自体には何も思わない。
何も思わないことが自体が一番哀しい。まさか僕がこんな考えに至る状況になるとは。
「………疲れた」
これからどうしようか。このままここにいても何も起きない。復讐のためにはまず力をつけなければ。
「っ!」
まただ。またこの感覚。何かステータスが変わった?
「ステータス」
__________
職業:『屍ニ生キル者』
『血染メノ行者』
技能:『屍ニ生キル』『技能継承』『爪撃』『危険察知』『虚無ノ塔』『霞喰』『鉄血魔法』『心魔力』『氷酷』『忌ムベキ剣』
__________
「は?」
一気に『技能』が増えた。それに『職業』が変わった。
『職業』って変わるものなのか?
待てよ。そもそも2つあるって正常?
………考えても仕方ない。新たな『技能』は全て効果が予想できない。
『心魔力』果たしかクラスメイトの一人が持っていた気がするが。
使ってみるしかないか。だが字面からしてヤバそうなのが二つ。
一つ目『鉄血魔法』。物騒なイメージしか持てない。しかも魔法の使い方は知らないから今のところ放置。
二つ目『忌ムベキ剣』。もうガッツリ忌むべきって書いてある。緊急時以外封印決定。
とりあえず新しいのを試してみる。いつまた兵士に出会うとも限らない。
「『虚無ノ塔』」
そう唱えた瞬間、僕の視界が切り替わった。
僕は今、何もないところにいる。何も、ない。
地面も草も虫も光も音も。
「なんだここ」
暗すぎる。せめて明かりは………は? 明るくなった!?
どこかに地面は………え?
僕のいたところが地面になった!?
どういうことだ? まさか………
「家がここにあるな」
何もないところに向かってそう呟く。すると次の瞬間、家が現れた。
「まさか、僕の想像したものを創造できるのか!?」
戻る時はどうすればいいんだ?
「あ、戻った」
念じるだけで簡単に戻れるのか。
その後何回か試した結果、いくつかわかったことがある。
・『虚無ノ塔』を使うとどこか別の空間に移動する。戻ろう、と念じれば元の場所に戻る。
・その中では自由に物を作り出せる。生物は不可能。
・何かを元の場所から持ち込んで、置いておくことができる。生物は不可能。
・『虚無ノ塔』の中で作ったものは元の場所に持ち出せない。
つまり、いくらでもカスタマイズできるプライベートな空間、を作れる。
すげえ、完全にチートだ。野宿の必要が一切ない。その上その空間だったら何でも作れる。