表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

49/116

魂毒: 現在使用可能

「僕はこの世界で生きていけるとと思いますか?」


『敵対という意味では大半のものなら相手にすらならぬだろう。……ただ、稀に中位魂を持つ魔物がいる。時に非常に厄介な敵となるから、十分注意せよ』


 今まで中位魂というと人間か魔人かしか想定していなかったが、転生を繰り返す魔物がいるかもしれないのか。


 恐ろしく強い『技能(スキル)』を持っていてもおかしくなさそうな響きだ。


『……客人を殺した者についてだが』


「! 『英雄』ですか」


 まさか主さまからその話題が出るとは思わなかった。以前の、一番最初の身体の僕を殺したやつ。


 他のクラスメイトとはもう一年以上会っていないが、今どうなっているだろうか。


 同時に召喚された時に友人と呼べる奴もいた。あいつが今無事に生きていることを祈る。


 そしてあの『英雄』は……もはや名前もあまり呼びたくない。


『鍛え方にもよるが、そ奴は場合によっては客人よりはるかに強くなっているかもしれぬ』


「そんなにですか……」


 僕もこの世界に来てからだいぶ鍛えたという自負がある。それでも届かない可能性があるのか。


 もしあいつが僕より強かったら、もう復讐どころの話ではない。


『数えるほどだが、魔人の中にも上位魂に至った者はいる』


 それはそうだろう。この一年で僕がこれだけ強くなれたことを思うと、天才と呼ばれる人ならもっともっと上にいけるはずだ。


『これからの話はあくまで一例だ。以前、英雄、と呼ばれる職業をもった魔人が神の名を手にした。確かその者は今は魔王配下の最上位にいる』


「配下の中で最上位!?」


 確か基本的に魔人は全て魔王の配下だったはず。つまり、魔人という種族の中でもトップクラスの実力者ということになる。


 どれだけ魔人がいるのか知らないが、人間と長期間戦い続けているだけの戦力、それだけの人口はいるはずだ。


 その中でのトップ。一体どれだけの能力があるのだろうか。


『英雄という職業はそれだけの才能の証。例えば聖剣一つとっても極めれば桁違いの攻撃力が生まれる』


「そこまで?」


 前は『聖剣創造』によって作られた剣で襲われた。切れ味はありそうだったが、あれにそこまでの力があるとは思えない。


『客人の技能にある剣と似たようなものだ。聖剣の真価は、剣としての性能ではないと聞く』


 僕の剣とは『忌ムベキ剣』のことだろう。この『技能(スキル)』は無限に魔物を生み出す能力を持つ。剣、は形だけだ。


『英雄の本来の能力は、聖剣を媒体にした聖域の構築。つまり全ての生物の排除にあるらしい』


「は?」


 聖なる剣が聖域の構築をすることまでは、まだ理解できる。生物の排除?

 

『曰く、聖剣は一切の生物を嫌う。故に聖域内全ての命を消す』


 ……無茶苦茶だ。無限の魔物をっていうのも大概だが、聖剣の能力はもっとぶっ飛んでる。


 全ての命を消し去る能力ってことか? そんなものもはやどうやって対処すればいいのか。


「もしそれを使われたらどう対処すればいいんですか?」


『知らぬ。そもそも我がみたのは魔人の上位魂の英雄。あまり気にしても仕方がないとも思う』


「……」


 対処法がわからない命を消す攻撃、があるかもしれない。危険すぎる。


 奇襲をかければいいのかもしれないが、それでは復讐の意味がない。かといって正面から行くと……


 そもそも僕を殺した『英雄』がどれほど今強いのか。


『客人、聖域などほんの一部の例に過ぎぬ。客人を殺した英雄は独自の技能を持っている可能性だってある。もし、復讐をするのであれば十分に対策を練ってからにしろよ。……ヘノーの泣き顔など見たくないからな』


「……はい」


『以前我が使うな、といった技能は覚えているな?』


「『光吸ノ毒牙』ですよね」


 昔言われたのでしっかりと覚えている。結局猛毒ということしかわからなかったがこの『技能(スキル)』がどうしたんだろう。


『そろそろそれを使ってもいいと判断した。これからの戦略に組み込め』


「え? ……なぜですか? というかなんで禁止していたんですか?」 


 主さまが真剣そうに伝えてきたこともあって以前から使っていなかったが、結局なぜ禁止していて今なら使っていいのだろうか。


『この技能は、魂毒を作り出すものだ。そして魂毒とは、対象の魂を蝕む毒』


「魂を……あ」


 魂を蝕む毒、の時点で一瞬何に使うのだろうと考えた。そして気がつく。かなり重大な事実に。


『なんだ?』


「……『光吸ノ毒牙』って、中位魂や上位魂を持つ人を、本当の意味で殺すための毒ですか?」


『そうだ』


 以前言っていた「魂を壊す攻撃手段」はこれのことだったのか。まさかそんな攻撃手段を自分が持っていたとは知らなかった。


 僕のような転生できるものを、完全に根本的に殺す毒。そして神殺しの毒と以前言われた理由もわかった。


 上位魂、つまり神の名前を冠する『技能(スキル)』を持った相手を殺せるからだ。例えそれが霊獣でも。


 そこまでわかって、まだひとつわからないことがある。


「……なんで以前は使っちゃダメだったんですか?」


『負担が大きかったからだ。魂は破壊されれば一部は自然に戻る。そしてまた一部は、殺した相手に取り込まれる。これによって殺ろした側は新たに力を手に入れるわけだが』

 

 そういえば以前言われた気がする。なんとなく聞き流していたが。 


 今まで魔物を倒すと大幅に強くなっていたのは、魔物の魂の一部を取り込んでいたからなのか。


『大した力も持ってない者が、いきなり中位魂やその上の魂の一部を取り込んでも負担が大きすぎる。下手すればもとの魂が押し潰されて即死だ。一年ほど前の弱い客人が魂毒を使って中位のものを倒しても、結局は客人自身が取り込んだ魂に耐えきれず死んでしまう。故に禁止していたのだ』


 思った以上に危険な代物だった。


『それに客人は技能継承という技能を持っているだろう?』


「はい。それが何かあるんですか?」


『あれは倒した相手の魂を、通常より効率よく吸収するためのものだ。そのため強くなりやすい。だが反面、中位や上位の魂も過剰に取り込む。故に客人は常人より殺した敵の魂に押し潰されやすいのだ』


 あの『技能(スキル)』にそんな効果があったのか。


 せっかく敵は倒したのに、その魂のかけらに押しつぶされて死ぬなんて死んでも死にきれない。


 その意味では主さまが使うなと言ったのがよくわかる。


「今なら大丈夫なんですか?」


『我に少しでも傷を入れられるほどならば、もう大丈夫だろう』


「……」

 

 なんてアバウトな選定基準。


 だがこれで中位魂の相手と戦闘をしても、根本的に勝つことができる。ここは『光吸ノ毒牙』を使えるようになった僕自身の成長を祝おう。


 そして、これからの戦略にどう組み込むか。なかなか楽しいじゃないか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ