おとなしく殺されるわけがない
試しに使うと言ってもどうすればいいのか………
じゃあまずは『危険察知』かr……
ここはダメなところだ。
そんな予感が駆け巡る。だめだ、とにかく動いて
ドン!
さっきまで僕がいたところに矢が突き刺さった。
「は?」
なんでこんなものが? これが『危険察知』の効果?
「おい! 魔人の生き残りがいたぞ!」
「殺せ!」
いつの間にか周りに武装をした人間が集まっていた。
周りにこれだけの屍があるんだ。当然軍だっているのか!?
「待ってくれ! 僕は魔人じゃ……」
「うるさい! おぞましき魔人如きが我々人間の高等な言語を扱うな!」
は?
あまりにも想定外の言葉をかけられる。
「皆んな惑わされるな! 魔人の言葉なんて聞くな! 奴らの言葉を聞いたら一生呪われるらしいぞ!」
「そうだそうだ! 魔人は死ぬべきもの、それだけだ! 殺せ!」
「「「「おおっ!」」」
そんな………
この世界はこんなに荒れているのか?
魔人というだけで、ここまで言葉を話す生物を嫌悪するのか?
ここまで無慈悲になれるのか?
「突撃!」
武装した人間が向かってくる。そして同時に弓矢も放たれる。
『危険察知』のおかげか僕は避けられている。だが、
「こいつすばしっこいぞ!」
「囲め!」
「まず足、次に目を狙え!」
だが、事態は悪化するばかり。
やるしかないのか? だが、僕の攻撃手段なんて………
「っ!」
ほおに矢が掠った。そして目の前に兵が迫ってくる。
もう、逃げるのも限界だ。
「『爪撃』!」
一瞬だった。
それを行使することを思い浮かべただけで、目の前の地面が『大きな爪で切り裂いた』かのような状態に。
当然、兵士も殺した。僕が。
「おい! こいつ攻撃してくるぞ!」
「卑怯な! 貴様に誇りはないのか!」
罪悪感があるかと思ったんだ。人を、殺したことに。
罪悪感があって欲しかった。
せめて、僕が生きるために殺すことになっても、それには躊躇いが、罪の意識があると願っていた。
だが、そんな未来はこなかった。
「ただ我らに殺されるという最低限の礼儀さえないのか!」
「せっかく我らが直々に来てやったのに!」
罪悪感なんて塵芥となって消えゆくほどの怒り。
目の前にいる人間を見ていると、心から殺意が湧いてくる。
「黙れ、貴様ら」
ギャーギャー意味不明なことを喚きやがって。
大人しく殺されておけとでも言うのか?
「馬鹿なの?」
そんなもの、誰が従うんだ。それが殺す相手に言うことか?
僕は全力で、抵抗する。僕の目的を、復讐をするために。
そのためにはまず、
「死ね!」