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ステータスの仕組み

「“目覚めよ亡れ”……っ!」


『遅いわ!』


 詠唱をしようとした次の瞬間、真っ青な業火が僕を襲ってきた。


「『蜃気楼』!」


 詠唱は当然のことながらストップ。魔法が発動するわけもなく、即座に別の『技能(スキル)』を発動させて、攻撃を捌くことに移る。


 

 『蜃気楼』は僕の持つ中で最も防御に振り切れた『技能(スキル)』。


 昔僕がやった、一瞬だけ『虚無ノ塔』に逃げるという攻撃回避方法、あれを『技能(スキル)』にしたようなもの。


 『蜃気楼』を使うと一瞬だけ身体が異空間に飛ばされる。その間に攻撃は僕の体のあったところを通り抜けている。



 

『__“歌えよ揺らめく紅の子ら”』


 なんとか直撃を回避したと思ったら息をつくまもなく、主様の詠唱が聞こえてきた。


 前後左右、四方八方に蛍のような小さい光の球が現れる。




 光がだんだん強くなっている。まずい、このままだと……


 周囲の球が点と点をつなぐ様に、赤い光で結ばれていく。まるで獲物を捕えようとする蜘蛛の巣のようだ。


「くそっ!」


 最悪だ。


 予想通り周囲の赤い光が実体化して、僕をがっしりと絡めて固めた。


 

 このままだと動けない。周囲になんとか『闇奏』を出現させた。ここからこの拘束を切って……


『___“煌々とした箱庭は塗り潰される“”平穏の歌は地獄の音に等しく“__』


 

 まるで僕を囲むように半透明な立方体が無数に出現した。


 その立方体は回転しながら、引っ張られるように先端を鋭い刃物に変えていく。



『__“そして遂には終わりを告げる“』


 

 無慈悲にも詠唱が終わってしまった。つまり、主さまの魔法が完成した。


 半透明な刃物は回転をやめ、ピッタリと揃って僕の方に刃を向ける。


 対する僕の拘束はまだ解けていない。

 

 

 まずい、殺される………!












「はっ!」


『目覚めたか』


 まだ意識がはっきりとはしない。なんとなく視界が少しおかしいような気がする。


 あの主さまの魔法が完成した後、僕は攻撃に耐えきれずに気絶したのか。

 なんとか拘束されたまま『闇奏』で応戦したが、さすがにあれに対処するのは無理だったか。


『訓練は終わったぞ。やはり我と戦うのは早すぎるのでは? このままでは死にはしなくとも大怪我するぞ』


「いえ、このまま訓練をお願いします」


 やはり実践が大切だと思って主さまと戦闘訓練をするように頼み込んだ。初めから勝てるとは思っていない。


 実力差がありすぎるとはいえ、それでも実践で『技能(スキル)』を鍛えた方がいいと思った結果だ。


「どうしたら強くなれるんですかね……」


 流石に今回の戦闘訓練は酷すぎだ。完全に防戦一方、こちらの攻撃なんてする暇がなかった。


『ひたすら鍛錬を積むしかない。訓練を積めば、魔物を殺せば技能だって手に入る』


「『技能(スキル)』か……」


『技能は己の魂の力。誰に与えられるものでもない。自らを鍛え抜くしかないのだ』


「でも今回の訓練では、なにも新しい『技能(スキル)』を得られていません」


 なんとか強い『技能(スキル)』を手に入れたい。それが復讐への近道、最短ルートなんだから。


 だが何も新しいものは手に入れてない。


『あせるな。まずは今現在自らが持つ技能を使いこなせ。それに、ステータスに表れていないだけで力はついていってる』


「そうなんですか?」


『そうだ。鍛錬をするたびに己の魂に力がついていき、一定以上その力が溜まると『技能』として現れる』


「……」


 それは初めて知った。


 魔物を殺したり、特定の条件を満たすと『技能(スキル)』が手に入れられて、というゲームのようなものを想像していた。


 だが、実際は違った。自分を鍛えて鍛えて、一定以上強くなると『技能(スキル)』として出現する、そういう仕組みなんだ。


『そもそもステータスというのが何なのか知っているか?』


「いいえ」


 僕はこの世界について全くと言っていいほど知識がない。


『ステータスは、『知る』ことができるシステムだ』


「知る?」


『自分がどんな力を持っているのかを、技能、という形で明示する。自分の力の把握システム、それがステータスだ』


「へー」


『ただし、細かく一つ一つ自分の持っている能力を表示していたらきりがない。だからある程度、一定の方向性に力が溜まると『技能』と呼ばれるものとしてステータスに表示される』


 一定以上その力が〜っていうのはそういう意味か。


 それに確かに一つ一つ示していたらそれこそキリがない。

 例えば僕はちょっと早く走れるし、人よりちょっと丁寧に字を書ける。

 だけど、そういうちょっとしたものなんてそれこそ無限にある。


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