『技能』の本当の能力
人間と魔人はそれぞれの領土を抱えている。そして、その境目で最も激しい争いが発生する。
魔人、と一口に呼んでもその中には様々な種族がいる。強いものから、弱いものまで。
その魔人の村は『どこにでもある弱い村』だった。
それがたまたま激戦地域にあった、という『どこにでもあること』。
その村は人間に襲われる、という『どこにでもあること』が起こった。
そして邪悪な魔人、として村人は皆殺しにされた。
その死体をよそに、人間は宴会を始める、という『どこにでもある』行事が始まった。
だが、ここからは『どこにもない』こと。
あそこで『英雄』を持つ赤城シンに殺された………
ふざけるな………
なぜ僕を殺す………
勝手に召喚して、その上殺す?
ふざけるな………
「復讐………」
え?
声が出た?
「僕は生きているのか!?………声が違う」
おかしい、僕はこんな声じゃなかったはず。僕の思った通りに声が出ているのに、声が違う。
ふと周りを見渡すと、屍、屍、屍、屍……そして血の海。
「どこだ、ここ」
よく見ると僕の体も傷だらけだ。いや、傷だらけだった? 僕の記憶に何か別の記憶が混ざっている。
僕だけど、僕じゃない。
魔人の村に生まれた、育った、人間が襲ってきた、殺された………
なんだこの記憶。それに、この記憶だと僕は死んでいる。
「まさか、転生?」
転生だとしたらなんでそんなことが……
待て、一つだけ心当たりがある。
「まさか、『職業』か!?」
『屍ニ生キル者』
「ハハハッ………嘘、だろ…….」
まさか、文字通り、『屍に生きる』という効果………
言い換えるなら、『死んでもどこかの死体に転生する』。
「アハハッ! ハハハハハッ! ッハハハ!」
もう笑うしかない。こんな状況。
「………何が、不吉だ! 国王!」
そんなくだらないことで僕を殺そうとして!
「よくも僕を殺してくれたな、『英雄』!」
あんな馬鹿げた国王の命令を聞いて、意味の分からない八つ当たりまでして!
「国王! 『英雄』! 絶対に復讐してやる!」
僕は貴様らに、何年かかろうと復讐してやる!
「っ!」
なんだ? 今一瞬僕の身体に何かが走り抜けたような………
ステータスをみよう。なぜかそう思った。
「………ステータス」
__________
職業:『屍ニ生キル者』
『復讐鬼』
技能:『屍ニ生キル』『技能継承』『爪撃』『危険察知』
__________
『職業』も『技能』も両方増えている。
転生したからだろうか。
それにしても『復讐鬼』か。なかなか今の僕にぴったりなものだ。
『爪撃』と『危険察知』はよくわからない。
試しに使ってみればいいのか?