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忌まわしきその剣 ①

「はぁっはぁ……はっ!」


 服の袖口を一気に引き伸ばし、鞭のように振るって敵を切り裂いていく。


 

 一度『闇奏』で作ったものは好きなように形状を変化させられる。そして、僕の服は『闇奏』で作られている。


 その性質を使って、服から攻撃というトリッキーな戦法が可能となる。



 さっきからずっと服を変化させて敵を切り捨てて、その上で周囲に『闇奏』で作った刃物を浮かべて応戦している。


 だが、それも限界が近い。呼吸を整えるまもなく大量の魔物が襲ってくる。



 いつまで経っても魔物は減らない。むしろどんどん増えていく。


 こんなに魔物がいて、増え続けている理由は明白。


 あそこにある、銀色と紫色の禍々しい剣のせいだ。あの周囲がまるで渦巻くように歪み、そこから魔物が吐き出される。


「っ〜〜!」


 足に激痛が走って、頭から地面に倒れ込む。


 余計なことを考えていたらもろに四足歩行の魔獣の体当たりを喰らってしまった。


 咄嗟に頭は守ったが、衝撃のせいで眩暈がして平衡感覚が狂う。

 周囲の敵の数の把握も攻撃を捌き切ることもできなくなった。


「まずい……!」


 






 こんなことになった理由は、少し前の主さまとの会話。










『客人を鍛えるといったが、まず必要なのは現状把握だ』


 主さまに語り掛けられる。確かに現状把握は大切だ。だが、それより前に一つどうにかしたいことがある。


 主さまは非常に大きい。その巨体のせいで会話する時にずっと僕が真上を向いている。正直首が痛い。


「あの、すいません」


『なんだ』


「変な話ですが、貴方の顔を見ずに会話してもいいですか? 正直首が痛いので」


『ほう、それは気が付かなかった。安心しろ、客人の視線に合わせよう。我は自らの大きさくらい変えられる』


「眩しっ!」


 主さまの身に纏っている炎がより一層強くなった。目を開けているのもきついくらいだ。


 ようやく光が落ち着いて、見やすくなったところにいたのは。


「縮んだ……?」


 まるで小鳥のようなサイズの、燃える鳥。


『ああ、これでは小さすぎるか』


 そう言って再度光が強くなり、大体僕くらいのサイズの鳥が現れた。


『これで問題ないか?』


「……はい」


 小鳥サイズの時とのギャプがすごい。一番初めの印象は恐ろしい怪物で、次に急に可愛らしくなって、今は普通に威厳がある。


『では、改めて聞こう。客人の持っている中で最も優れた技能はなんだ』


「便利さで言うと『虚空ノ塔』ですね」


『どんなものだ?』


「僕だけの場所に行けるというか……今使ってもいいですか?」


 実際に見せたほうがいい気がする。この目の前の木の枝をしまわなきゃと思っていたからいいタイミングだ。


『かまわぬ』


「じゃあこの木の枝持っていきますね。ごめんヘノー、ちょっとどいてね」


『は〜い』


 木の枝が積まれていところに行って、それを抱える。そして発動させる前に、僕の肩にいるヘノーにどいてくれるように頼んだ。


「じゃあ使いますね。『虚無ノ塔』」


 視界が切り替わり、僕のカスタマイズした空間に辿り着いた。早速この木の枝をどうにかしないといけないので、目の前に倉庫を創造する。


 そこにどさっと全部の木の枝を置いてから、元の場所に戻る。戻るとすぐに主さまが話しかけてきた。


『おおまかには理解できた。空間に干渉して独自の空間を作り出すのか。そしてその空間内では自らの意思が具現化される』


「詳しくはわかりませんが、大体そんな感じだと思います」


 なんで一瞬使っただけでわかるのかは置いておく。霊獣パワーかなんかだ。きっと。


『では、客人の持つ技能の中で最も強いものはなんだ』


「……最も強いもの」


『ああ、単純な火力でも絶対的な防御でもなんでもいい。最も戦闘で使えると思う技能を述べよ』


 持っている『技能(スキル)』は合計15個。そのうち今使っている攻撃系統の『技能(スキル)』は2つ。


 『闇奏』と『水鴉ノ咆哮』だ。


 この二つの中では圧倒的に『闇奏』が便利だ。どんな形状も作れるし、攻撃にも何にでも使える。


 だが、まだ使ったことがないのが五個を超えてる。


「まだ使ったことがない『技能(スキル)』が多いのでよくわかりません」


『使ったことがない?』


「はい。なんとなく『技能(スキル)』の名称が危険そうだったので」


『なんとなく危険とは……どんなものだ』


 使ったことがない理由を語ると、主さまに呆れられた。


 確かに『なんとなく危険そう』という理由は我ながらふわっとしていると思う。


 でも名前に『忌むべき』とか『封じられた』とかついてたら警戒するじゃないか。


「一つは『忌ムベキ剣』です」


『………ほう。なかなか客人の感は冴えているようだ』



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