その頃、クラスメイトは
召喚されたクラスメイト視点です。
「では異世界の方々、本日の講座を開始させていただきます」
中世ヨーロッパ風の服を纏った講師が入室し、また今日も講座が始まる。
俺_濁川ハルト_がこの世界に10人のクラスメイトと召喚されてから一ヶ月が経った。今となっては9人だが。
召喚されたと知ったその瞬間は、ここが異世界かと喜びもした。だが、その感動を全て塗り替えるほどの衝撃がその俺を襲った。
親友だったアオイが殺された。それも同じクラスメイトの手によって。
あの一件以降、アオイのことを話すのは一種のタブー扱いされてる。
そして、みんなが赤城シンを恐れるかといえばまたそうでもない。むしろ、何事もなかったかのように日常を演じている。
他のクラスメイトたちはアオイが死んだ、そのことを無かったことにしている。
それを忘れ去れば、平穏が戻ってくると信じているようで、無性に腹が立つ。だが、俺には怒る資格はないのかもしれない。
考えるたびに後悔の念が溢れてくる。
あの時、なんとか赤城を止めようと思って叫んだが、剣を突きつけられて引き下がってしまった。
もし強引にでも止めていればと今でも後悔している。
もし、あの時あの剣に怯まずに赤城シンを殴ってでも制止したら、今もアオイは生きていたのだろうか。
それともどちらにせよあの王の強権によって排除されていたのだろうか。
「今日の講座は『技能』と『職業』についてです」
ここ最近は午前中に講義を受けて、午後は戦闘訓練になっている。
今は騎士団の人たちに一勝もできていない。
アオイを殺せと言った国王は許せないが、そのほかのこの世界の人は比較的優しく接してくれる。
不安で仕方がないが、今はその人たちを信じて、知識を蓄えることしかできない。
「では、みなさん『技能』、『職業』とはなんだと思いますか?」
「その人の能力じゃないんですか?」
『賢者』の『職業』を持っている、鴻巣ヒカリがサラッと答えた。
彼女はいかにも優等生といった感じで、学校にいる時も成績抜群、何か質問があるとすぐに手を挙げていた。
「貴方は確か、コーノズさんでしたか?」
「鴻巣です」
「コウノスさんですね。はい、貴方の言うとおり、『職業』はその人の能力です。では、その力はどこから来たものだと思いますか?」
講師の人が俺たちに問いかける。
「『職業』は『技能』、神からの贈り物、祝福です」
「神?」
「はい。この世に存在する全てのものは神のお造りになられたもの。我々の『技能』も例外なく神から付与されたものです」
「神さまって言うのはどこに行けば見れるんですか?」
別のクラスメイトの一人が講師の人に質問した。
この世界での宗教観がわからない以上、迂闊な質問はやめた方がいいと俺は思うのだが。
そんなことなどお構いなしのようだ。
「神の御姿を見ることは叶いません。しかし、世界には四つ神木があると言われています。どこに神木が存在するのかは不明ですが、その下に行けばあるいは……話が逸れましたね。では、配ったテキストをみてください」
講座の開始前に使用人のような人から配布されたテキストを取り出して机上に置く。
「そこには教会の教えを要約したものが載っています。皆さんもこの世界で生きる以上、しっかりと教会の教えを知っていただきます」
「………俺らはいつまで帰れないんですか」
ついに、講師に聞くやつが現れた。
クラスメイトたちと会話していて、しょっちゅう話題に上る。俺たちは、果たしていつ地球に帰れるのか、と言うこと。
俺にとっても一番大事なことだ。しばらくすれば帰れる、そんな返答を期待しながら待つ。
「それは私にはわかりません。貴方がたがここにいるのは全て陛下の思し召し。我々の計り知れることではありません」
「誰に言えば地球に帰してもらえるんですか?」
「私の管轄ではないのでわかりません。あなた方を召喚したのは陛下。私の知るところではありません」
「どうすれば帰れるんですか?」
「私にはわかりません」
「そもそも、帰れるんですよね!?」
「私には、わかりません」
「変える方法はあるんですか!?」
だんだん質問が悲鳴に近くなり、他のクラスメイトたちは静まり返る。
「私は、知りません」
教室が絶望感に支配される。どうすればいいんだ。こんなどこともわからない世界で、どうやって生きればいいんだ。
なあ、アオイ。
お前は死んだ後、どこに行った? 地球の天国か? それとも何も知らぬこの世界の天国か?
俺たちは、どうすればいいんだ。
誰か、教えてくれ。




