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武器と服は同じものから

『大丈夫? なんかアオイ元気ないよ?』


「うん、大丈夫……」


 嘘だろ? 今まで頼りにしていた『爪撃』が消えたなんて……数少ない攻撃手段で、一番初めから使っていた攻撃なのに……


「『技能(スキル)』が消えたなんて…」


『ん? 『技能(スキル)』が消えたの? 統合されただけじゃなくて?』


「統合?」


『うん。似た効果の『技能(スキル)』に前からあったのが統合されてなくなるんだよ〜。よくあることだよ』


「まじか」


 じゃあ増えたやつのどこかに同じ効果のがあるのか? でも、どれだよ。


 新しく増えたのを列挙すると『蜃気楼』『影法師』『闇奏』『封ジラレタ鏡』。


 はいまず『封ジラレタ鏡』。やばい雰囲気しかしないので放置。


 できたら主さまっていう人に聞いてみるか。『忌ムベキ剣』も『封ジラレタ鏡』もそれまで触らない。どんなものかもわからず使うのは危険すぎる。


 残りの三つを虱潰しにしてみるか。


「ねえ『闇奏』ってどんなのか知ってる?」


『うん。あのダークオーガみたいに真っ黒な槍を作ったり、物を切り裂いたりできるんだよ』


 さっそく当たりか。これに『爪撃』が組み込まれていったのかな?


「『闇奏』」


 早速試そうと思って発動させた。結果、手に黒いモヤのようなものが現れた。


「これをどうにか固めれば槍みたいになるのか?」


 なんとなく僕の腹に刺されたのをイメージしながら黒いモヤの形を変えようとする。


 だが、結構難しいものだ。なんというかフワッとした粘土の形を整える感じ。しかもいまいち形がはっきりしない。


「こんな感じか?」


 一応槍と呼べる程度には形が整った。いずれは意識した瞬間にとかいうスピードを出せるようになりたい。


『お〜、よくできたね! 『技能(スキル)』を使えるようになるのって結構時間かかるのに』


「そう?」


 別に『技能(スキル)』はなんとなく使おうと思えば大抵は使えている。まあ一部使わずに放置を決め込んでるのもあるけど。


 それよりこのモヤモヤでものを切り裂くってどうすればいいんだろうか。


 単純に武器を作っただけだと意味がない。そもそも僕は武器の扱いなんて知らないし。


 だとすると、空中に鋭いものを作り出して飛ばすっていう感じか。飛ばすところまで『闇奏』でやってしまえば何も問題はない。


 ちょっと集中が必要だけど………


『アオイ〜? 何するの?』


 まずこのモヤを限りなく薄く、それでいて鉄より硬く固める。イメージは紙。だけど絶対に破けないし切れないし折れもしない紙。そして鋭く触れたものを切り裂くような。


 それを周囲にいくつか作り出す。大きさはだいたいB5程度。


『これ何〜? なんか触れたら斬られそうだけど〜?』


 あとはこの僕の周囲のものを敵にぶつけるだけ。


「___舞え、そして切り裂け」


 一気に加速して、周囲の草木を刈り尽くす。そこら中の木に鋭い切り傷ができ、何本かは倒れてしまった。


「なかなかいい攻撃になるね」


 今までの『爪撃』のように派手さはないが、狙ったところを的確に切り裂けそうだ。それにやり方次第でもっと別の使い方もできそうだ。


『ねえねえ』


「ん? どうしたの?」


『この木の切り口凄いよ。鏡みたいにツルツルしてるね!』


 言われてみれば切り口が真っ直ぐで、平らで、地球にいた時の機械での加工でもこうはならないってほどだ。


 なるほど、試しにやってみたけどここまで威力を出せるのか。だったらこれを使うのに慣れてきたらもっと強力に凶悪になりそうだ。


『その『技能(スキル)』いろんな形を作れそうだね!』


「まあ確かにやろうと思えばどんな形にもできるし………ん?」


 今何気にすごいことに気がついた。どんな形にもできる。それってつまり、服とか椅子とかも作ろうと思えば作れるのか。


 この世界に来てから服不足を実感してたところだ。今来ている服だって『虚無ノ塔』のなかで洗って入るものの、ずっと来ていることには変わりない。


 しかも言っちゃ悪いけどこの体の元の人格は随分とファッションセンスが狂ってたみたいで。


 服自体はいい物だった。上半身だけ見てもしっかりした服だし、下半身だけ見てもいいズボンだった。だが組み合わせが悪い。


 せっかくの服を打ち消し合うような壊滅的美的感覚が嫌というほど伝わってきた。流石に真っ赤な服にド派手な紫はないわ。


「えっと……ここをこうやって、どうせならフードもつけて……出来た」


『服作ったの?』


「うん結構いいできだと思う」


 ズボンとパーカーの繋がった、ローブらしきものを作ってみた。早速『虚無ノ塔』の中で着替える。へノーには一瞬いなくなるね、と告げて。


『アオイが消えたと思ったらまた出てきた!』


「どう? この服」


『う〜ん、真っ黒だね!』


「……」


 言われてしまった。自分でも思っていた。これで服を作ると真っ黒になるなと。だがこれは『闇奏』の性質上どうしようもない。


 だがそれでも、真っ黒はなぁ。そう思わずにはいられなかった。



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