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死ぬならば道連れに

 痛い、というのは不思議な感覚だ。例えば、ほおをつねったら痛いと感じるだろう。物にぶつかった時も痛いと感じるだろう。


 だが、体に大きな衝撃がやってきても、必ず痛いと感じるわけではないみたいだ。


 腹に槍を突き立てられているのに、僕からはもう痛いという感想さえ消えてしまった。


「ギャギャ」

「グアァァ」


 僕に槍を突き立てた奴らの鳴き声が聞こえる。今の僕には地獄の門の開く音に聞こえてしまう。


 また、殺されるのか………


 この世界に来て、殺されて、転生して、そして今また殺される。酷すぎるだろう。一体僕が何をしたっていうんだ。


 ああ、召喚されそうになった時に突き飛ばしたけど、ユキはいま元気かな。


 あの『英雄』にどうにか刃をとどかせたかった。復讐だってまだできていないのに……


 また何もできないまま殺される…



 奥歯がギシとなった。このまま何もできないまま、死んでたまるか! こういう時のための『技能(スキル)』だろう。



 だが、僕のこの怪我をどうにかする手段はない。ああ、認めるさ。僕はこのまま死ぬだろう!


 しかし、このままおとなしく死を迎えるなんて到底容認できない! できるわけがない!


 こういう言葉がある『死なば諸共』。ああ、今の僕に最適な言葉だ!


 僕は最後まで、醜くとも足掻いてやる!


「………『水鴉ノ咆哮』……全、方位……無差別……!」







 叫び声が聞こえた気がする。直後に体を駆け上がるこの感覚。ステータスの変化を知らせているんだろう。


 道連れ、に、できたか………ふふっ、思わずほおが緩むような気がした。ああ、ちゃんと敵を殺せた……


 僕はもうダメか……意識、が………


 ………どうせならせめて、『忌ムベキ剣』を試したかったな………



 

 意識を失う直前に、ガサッという何かの忍び寄る音が聞こえた気がした。














「っは!」


 まだ生きてる? いや、ここはどこだ? また転生した?


『目覚めたんだ〜。よかった!』


 いや、転生ではないか。前と同じ身体だ。じゃああの傷から回復したのか? どうやって?


『痛いところない〜?』


「え?」


 声が聞こえた? そしてふと、肩に違和感を感じる。なんかずっしりして、それでいてなんとなく温かい。


「うわぁぁ!」


『どうしたの?』


 僕の肩にいたのは、なんというか液体が丸くなったような………紫色のスライム?


「え、っと話してるのは、貴方ですか?」


『ん? 話しているっていうよりは意識を飛ばしているから、念話かな』


 いや聞きたいのはそこじゃない。が、結局この声の主はこの肩にいる物体、いや生物かな。


『さっきはありがとうね。君があの魔物の注意を惹きつけてなかったら今頃ボクは食われてたよ』


「魔物?」


『うん。あの真っ黒なやつ』


 あれか。なんとなく『英雄』の『技能(スキル)』を聞いた時に魔物がいるのかな、とは思っていたけどあれが魔物なのか。


「というか注意を惹きつけた?」


『うん。ボクが囲まれてた時に君が木の上から見てたでしょ』


 あの時のことか。あれを助けたと言っていいのかは謎だが。ってことはあの黄色の反応はこのスライムらしきものなのか?


『あの後気になって気配のする方をみにきたら、君が倒れてて、それでボクが治したんだよ〜』


「治してくれたんですね。ありがとうございます。でも、どうやって?」


『もちろんボクの『技能(スキル)』を使ってだよ』


 そんなことができるのか。そもそもこのスライムは魔物? それとも魔人の一種? それ以前にこの目の前の人、もといスライムの名前すら知らない。


「名前はなんて言うんですか?」


『ボクはへノーだよ〜。そうそう、普通に楽にしゃべってね〜』


「わかった。僕はアオイ。ところでへノーはスライム?」


『ボクは普通のスライムじゃなくて、トキシックスライムだよ』


「へーそうなんだ」

 

 まずい、僕の笑いが引き攣ってないか心配だ。だって、名前が……トキシック、つまり直訳すると『有毒なスライム』。


 僕の傷、本当に治ってるよね!?


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