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絶対絶命

 ここから逃げたほうがいだろうか。


 さっきのアレがもし僕を認識したとして、その上で敵認定されていたとすれば、ここに留まるのは愚の骨頂と言えるだろう。


「………『告害』」


 念のためアレの位置を確認しておくか。


「は? ………嘘だろ」


 『告害』の地図を信じるなら、奴らはこっちに向かってきている。間違いない。奴らは僕をあの距離で見つけたんだ。


 しかも


「速い……」


 結構な距離があったはずなのにもう残り半分くらいになるまで接近されている。


「逃げないとまずいな」


 奴らの方向と真逆に走り出す。森の中を走るのは慣れていないが、今ここで躊躇していたら危険だ。


 





 大体5分くらい走っただろうか。そろそろ奴らのことを気にしなくてもいい安全な距離になったか?

 

 『告害』でアレの位置を確認………


「っ〜!」


 肩に激痛が走り、体のバランスが崩れてよろめく。


 まさか………



 慌てて真後ろを振り向く。そこに、いたのは、アレ、としか呼びようのない、最悪のナニカ。


 暗黒と言っていいほど黒くて、相変わらず立体感がない。


 唯一認識できるのはその巨大なゴリラのようなシルエット。


 鳴きも叫びもしない、歩く影がそこにいた。

 


「くそっ!」


 逃げきれなかった。それどころか気が付かないうちに攻撃までされていた。


 ナニカ、が大きく手を振りかぶる。


 慌てて僕は距離を取る。


 次の瞬間バキッといいう音と共に周囲の自然が破壊されていった。素手で木を折るほどの怪力。絶対に当たったら詰みだ。


「『爪撃』!」


 今使える攻撃をその敵に向かって叩き込む。これで死ねば最高だが、そうは問屋が卸さない。


「嘘だろ……」


 攻撃を防ぐための動作らしきものはされたが、それだけ。


 真っ黒なせいでよくわからないが、傷ひとつ、最高でもかすり傷程度のダメージしか入っていないんじゃないだろうか。

 

 少なくとも、有効打にはなってない。


「グァァァ」


「なんだよこれ!」


 初めて鳴き声を聞いた。まるで唸るような声だ。だが、今そんなことはどうでもいい。目の前のナニカ、から大きな黒い槍が放たれた。


 『告害』の効果に『危険察知』と似たようなものもあるらしく、嫌な予感を頼りに避けることができた。


 だが、その黒い槍の通過したところには、何も残っていなかった。別に周囲が破壊されているわけではない。


 ただ、その軌道上だけはまるで溶けるように物が消されていた。


 僕が最初に喰らった攻撃はこれだろうか。現に、僕の肩の服もちょうど傷口の広さ分なくなっていた。


「『爪撃』『爪撃』『爪撃』!」


 ひたすら攻撃を撃ちまくる。どうか、逃げる時間ぐらいはできますように。そう思って僕は全力でその場から逃げ去る。







「はっ、はっ、はっ」


 息が切れる。ずっと走っているように感じるのに、まだ後ろから追われている。


「グアァァ!」

「グアアァ!」

「グガァァ」


 最悪なことに敵の数も増えている。それに伴って、後ろから飛んでくる真っ黒な槍が増え、さらに手裏剣や苦無のようなものまでが飛んでくるようになった。


 どうすればいいんだ。とにかくもっと早く走らなければ………


「あっ!」


 足に何かが刺さるような激痛が走り抜けた。そして、走っていた僕はバランスを崩して転んだ。


 まずい、早く、早く立ち上がらないと!


「グルル」

「ガァァ」

「ガラァァ」


 懸命に顔を上げると目の前に、真っ黒な敵が迫っていた。周囲に黒いモヤが出ている槍を振りかぶった状態で。


 だめだ! 避ける時間が!

 

「あぁぁぁ!」


 僕の腹に、槍が突き立てられた。


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