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黄色の反応、その周囲には暗黒が

「ああ、成功したか」


 おそらく朝と思われる時間に時計のアラームがなった。ここは『虚無ノ塔』のなか。


 前回は真っ暗なままだったせいで今が何時か分からず寝過ごした。


 だが、そんなことをしていては時間がもったいない上に生活リズムも乱れてしまう。その反省を踏まえて、昨日はアラームのなる時計作っておいた。


 『虚無ノ塔』の中ではなんでも想像したものが創造されるとはいえ、電化製品まで再現されるのは不安だった。


 だがしっかりと今日は無事作動した、はず。


 早速外に出てみる。これでまた真昼間だったらまた何か新しい対策を考えなければならない。


「朝だ………」


 今回は太陽が真上にあるなんてことにはならなかった。


 これで電化製品も再現できるということがわかった。これで『虚無ノ塔』の外にも持ち出せたりするなら完璧だったんだが。


 流石にそこまでのことは望めないか。


「『霞喰』」


 早速今日のご飯を食べよう。まあこれをご飯と言っていいのかは謎だが。


 お、ここら辺は焼きたてのパンのような味だ。こっちはうどんらしき味がする。






「ふー」


 一応お腹が膨れるくらいには食べることができた。


「ん? なんだこれ」


 『告害』に変な反応があった。


 赤い点がいくつか遠くに丸く固まっている。まるで何かを取り囲むような配置だ。


 一方、その円の中心には一つの黄色い光がある。状況からするに、何かの動物が他の動物の群れに囲まれている感じか?


 黄色の表示は初めてだ。一度どうなっているのかみてみるか。


 ちょうど目の前に高めの木がある。そこに登れば丁度『告害』の例の表示のところが見えるかな。


「よっ、ふっ」


 枝の強度を確かめてから登っていく。


「よし。ここまで来ればみえるだろ」


 木の頂点近くまで登ってきた。


 確か方角はあっちだから………


「え?」


 あれ、か? 


 確かに地図で表示されている方向はあっちだ。位置的にもアレが赤い反応の正体だろう。


「アレは、なんだ?」


 だが、全くアレがなんだかわからない。


 何かを取り囲むように何体かいる、真っ黒な何か。サイズはゴリラくらいだろうか。


 だが、真っ黒で何もわからない。アレが生物なのかすら判別がつかない。毛が黒いとかいうレベルではない。



 いくら毛が黒い動物でも、さすがに黒くみえない部分が存在する。光に反射して、光沢なようなものが生まれてもいいはず。

 

 毛が黒かろうが輪郭がはっきりわかるし、当然のことながら頭や手、足と言ったように体の部分部分がはっきりしている。



 だが、アレは凹凸がないように見える。どこが手で、どこが足で、どこが頭で………そういうものが何一つわからない。


 黒というより暗黒、闇、そんな感想が浮かぶ。


 言うならば、空間を切り抜いて真っ黒な紙を一枚当てはめたような、そんなもの。

 いきなり三次元の世界に真っ黒な平面図形が入り込んだような、違和感。

 立体感がゼロなのに、アレの影を見る限り立体であるように思える。

 もはや影が地面から飛び出して動き始めているようにさえ見える。


「僕の頭がおかしくなったか?」




 

 アレは動いている。いくつかの個体が集まって、その中央に向かって攻撃をしているように思える。


「……近寄らないほうがいいか」

 

 謎の黄色の反応の正体はわからないが、これ以上あれをみているとダメな気がしてきた。


 一刻も早く立ち去ったほうがいい。アレは今まで地球で見てきたどんな生物とも、今までこの世界で見てきたどんな生物とも違う。


 今までだった鴉が水を打ってきたり、羊のような何かが攻撃をしてきたり、僕がいろんな『技能(スキル)』を獲得したり、地球では絶対にできないような体験をしてきた。


 だが、それでも僕はこの世界のことを全く知れていない。どんな危険があるかわからない。


 黄色の反応ならまた後で調べればいい。


「ここから降りるか…………っ!」


 今までにないほどの嫌な予感がした。寒気がして、冷や汗が滴り落ちる。


「………見られた?」


 かなりの距離があるし、アレが僕のことを認識したなんてそんなバカな。そう思っていたい。


 なのに、アレが僕を見た、そんな感覚が木から降りてアレが見えなくなった後も残った。

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