二度と殺されないように
あの技の仕組みは簡単で、まず『滅流』を発動直前の状態にしておく。そして的は考えない。即ち無差別全方位だ。
そして、相手の攻撃が届く直前に発動させ、すぐに『虚無ノ塔』に逃げ込む。
これによって僕が自爆することを避けられる。そして相手の攻撃も届かない。
最後に、『虚無ノ塔』から元の場所に戻る。
すると、僕が戻った時には敵は全滅、敵にとっては『攻撃したと思ったら相手が消えててしかも反撃された』というわけだ。
別に最後に元の場所に戻らず『虚無ノ塔』にしばらく引きこもってもいい、と思うかもしれない。だが、そこには問題がある。
まず第一に戻る場所は元いた場所、つまりついさっき戦闘をしていた場所だ。
たとえば1日『虚無ノ塔』に引きこもったとする。
だが、結局戻るのはあの死体だらけの戦場。死体のせいでそこに新たに動物がやってくる可能性も高い。
そうする戻った瞬間敵が目の前に、なんてことがあり得る。
かといって死体が完全に無くなるまで待つのは長すぎる。しかも『虚無ノ塔』の中だと時間がわからない。
まあ結論として一瞬で戻る必要があるわけだ。
しかしタイミングを間違えれば自分の攻撃に当たって自爆、敵の攻撃到達前に逃げられなくて致命傷、なんてことがあり得る。
だからこその緊急時にしかこれは使えない。
「そういえばステータスがなんか変わったんだった。ステータス」
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職業:『屍ニ生キル者』
『血染メノ行者』
技能:『屍ニ生キル』『技能継承』『爪撃』『虚無ノ塔』『霞喰』『鉄血魔法』『心魔力』『氷酷』『忌ムベキ剣』『水鴉ノ咆哮』『告害』『主従契約』
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「『技能』が減った!?」
ここまで僕がかなり頼りにしていた『危険察知』がなくなってしまった。今までいろんな攻撃を避けるために頼っていたのに……
いや、それだけじゃない。『滅流』も消えている。僕のたった二つの攻撃手段が………
そもそも何で『技能』が増えたり減ったりするんだろうか。
一応あの恨むべき国王が『これからの戦闘で強力なスキルを…』みたいなことを言っていた。実際僕は戦いのたびに強力な『技能』を増やしていってる。
しかし『技能』が減るのはなぜだ。
「………増えたのに期待するしかない」
3つも増えたんだ。何か有用なものがあるかもしれない。
検証だ。『水鴉ノ咆哮』は名称から察するにさっき殺し切ったやつのか? だとすると『滅流』との違いが気になるところだ。
万が一『滅流』と同じ性質の攻撃だった時のことを考えて、しっかりと攻撃の的を意識しよう。
目標はあの木だ。
「『水鴉ノ咆哮』」
瞬時に僕の前に水の塊がいくつも現れた。そこから視認できないほどの猛スピードで何か、が飛び出していく。
ドオン!と破壊音が響く。
目標だ、と軽い気持ちで選定した木は、粉々になるまで破壊され、砕け散った。
「………『滅流』の上位互換か」
よかった。なんとか攻撃手段の確保ができた。
これで咆哮が聞こえるとか言うような『技能』だったら絶望か発狂かするところだった。
次は順当に行くなら『告害』か。この流れで行くと『危険察知』の上位互換か?
「『告害』………なるほど」
なんというか、ゲームのマップでもみているような気分だ。
視界の端に地図らしきものが見える。地図には一つの白い点、そしていくつかの動く赤い点がある。
おそらく地図を見る限りこの白い点は僕の位置だ。そしてこの赤い点は多分『危険なもの』の場所だと思う。
「早速赤い点が近づいてきてるな」
地図上の一つの点が白い点に向かって移動している。僕の予想、が正しければ、今から何かが現れるはずだ。
「メエエェエェ!」
「やっぱりか! 『水鴉ノ咆哮!』」
謎の動物が茂みから現れ、攻撃してきた。即座に攻撃を叩き込んで仕留める。
予想通り『告害』の能力は『地図を表示し、そこに自分の位置と敵の位置を示す』ことか。
今までなんとなくでしかわからなかった『危険なもの』の位置が明確にわかるようになった。
まだ試してないのは『主従契約』。だがこれは現時点では何も意味がない気がする。
「『主従契約』」
念のため発動させようとするが、何も起こらない。
まあこれは予想通りだ。何せこれは多分『契約』。相手がいないとそもそも契約しようがない。
やはり嬉しいのは『水鴉ノ咆哮』。攻撃手段はもっともっと欲しい。
あの『英雄』に復讐をするためには、こんなんじゃ足りない。二度と誰かに理不尽に殺されないようにするには、こんなのじゃ全く足りないんだ。
『英雄』は今この瞬間にも未知の『技能』を磨いているかもしれない。
僕には教えてくれる人がいない。本当に今の『技能』の使い方で合っているのかすらわからない。
もっと効率的な使い方があるかもしれないし、僕の使い方では根本から欠けているところがあるかもしれない。
僕がこうしている間にもやつは僕の使えない『魔法』を使えるようになっているかもしれない。
わからないことだらけだ。だからこそ、僕はもっと戦うしかない。戦場が唯一の僕の教官なんだから。
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