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春色の恋物語

作者: かふぇ。

春色の恋物語


如月 (きさらぎこう)

野中 七夏(のなかなな)

雅 遥/(みやびはるか)

水無月 椛/えみ(みなづきもみじ)


┈┈┈┈┈┈┈┈┈


倖♂:

七夏♀:

遥♂:

椛♀:


┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


七夏『桜はどうして綺麗なの?』



倖「あっちぃ……」


椛「とける……」


遥「ほんとに四月か……これ……」



七夏が思い切り扉を開いて現れる



七夏「皆の者!!次の劇はこれにしよう!!」


倖「……」


遥「……」


椛「……」


七夏「な、なに。みんなどうしたの?そんな蕩けちゃって」


椛「我らが部長はなんでそんな元気なの……」


遥「同意……エアコンつけようぜ……」


七夏「ダメよ!これしきの事でエアコンに頼っていたら夏を乗り切れないわ!」


倖「あちぃ……」


七夏「それより見て!ほら!いい台本見つけてきたんだから!」


遥「どれどれ……」


倖「俺にも見してー」


椛「桜の木の下でもう一度……?七夏が好きそうなやつね」


七夏「さすが椛!!そう!超ドタイプ!」


遥「でもどーせまた観客0だぜ。この高校に演劇部があるってこと自体知らない奴のがおおいし。」


七夏「いーのよ!私たちが楽しければ!」


椛「相変わらず熱いわね七夏は」


遥「気温も相まってさらに室温高くなってる気がする……リモコンリモコン……」


遥がリモコンに手を伸ばす


七夏「あ!!!ちょっ!ストーップ!」


倖「……」



問答無用で冷房のスイッチを押す



遥「おぉ……」


椛「おぉ……」


倖「これこれぇ……」


七夏「もー!部長の許可なしに冷房つけちゃダメって言ったじゃない!」


椛「七夏おいで。あんたも汗すごいんだから」


七夏「もー……しょーがないなぁ……」



七夏もみんなと一緒にエアコンの下に行く



七夏「おぉ……」


椛「ほら、やっぱ暑かったんじゃない」


七夏「う、うるさい!ほら!役決めよー!」


倖「俺桜の木がいい」


椛「私えみにしようかなぁ」


七夏「椛好きそー!」


遥「じゃ俺たんぽぽ?」


七夏「たんぽぽは女の子!だから……遥猫ね!」


遥「なに猫って……よく見たら人間えみしかいないじゃん」


椛「七夏が持ってくる台本っていつもそうよね」


七夏「だってせっかくだし人間以外もやりたいじゃん!」


倖「一理ある」


遥「え、納得すんの早」


倖「遥。諦めも肝心なのさ……」


遥「諦めなのか……」


椛「倖は諦めすぎでは……?」


遥「そうだよ。この間の打ち上げのカラオケでもみんなの意見ばっか聞いてたじゃん」


七夏「たしかに。実は初っ端からプリン食べたかったのみんなに合わせて我慢してたりとか」


椛「自分の好きな歌みんな知らないかもって歌わなかったり」


七夏「実はシルバーアクセサリー好きなのにウケ悪いかもって付けなかったり」


倖「いや。まって。なんでみんなそんなこと知ってんの」


椛「わかるよ」


遥「わかりやすいもん」


七夏「ほらほら!そろそろ喋るのおしまい!読み込みして〜!」


椛「はーい」



椛『桜がどうして綺麗かしってる?』


七夏「椛声出てる」


椛「ごめん。このセリフ好きだなぁって思って」


遥「あれだろ?死体が埋まっててその血を吸うからってやつ」


七夏「そんなグロい台本じゃないから!」


倖「いいな。この台本の解釈。桜の精が数多の恋をその目で見てきたからって」


椛「ハートの色ってことなのかな?」


遥「ちがうでしょ」


七夏「恋の色よ!」


遥「……」


七夏「というか!私たち花の高校生なのよ!」


遥「はじまった」


七夏「こんな部室でグータラしてちゃダメでしょ!」


椛「グータラしてない。劇してる。」


七夏「そーだけど!もっとさぁ!放課後みんなでクレープたべたり!恋バナしたりさぁ!」


倖「恋バナあんの?」


七夏「うっ……」


倖「ないんじゃん」


椛「それにあんたダイエットするって」


七夏「あー!もう!うるさいうるさい!」


椛「あ、怒っちゃった」


七夏「もう!私あっちで読むから!邪魔しないでよね!」



勢い良く扉が閉まる



遥「あ」


倖「あ」


遥「……どーすんの」


倖「こうなると長いよな……」


椛「そのうち出てくるわよ」


倖「俺、見てくるわ一応」


椛「好きねぇ…」


倖「まぁね」


遥「うわ」


椛「七夏ーあんたの好きな恋バナここにあるわよ」


遥「というか、よく気づかないわまじで。才能だよ」


倖「いいよ別に気づかれなくても」


椛「ひゅー」


遥「ひゅーひゅー」


倖「うざ」


椛「行ってあげなよ王子様」


倖「いや、隣の教室なだけだろ」


遥「王子様〜」


倖「うるせ」


倖が扉を開けて出ていく


遥「なぁ…あの二人いつくっつくかな」


椛「1年前からあの調子だもの。むりじゃない?」


遥「卒業までこのまんまだったりしてな」


椛「ありうる」


遥「……見てる方がもどかしいわ」


椛「それな」


遥「卒業式に告白とかすんのかな」


椛「でも大学みんな別でしょ?部活ももうあと何ヶ月出来るかわかんないし」


遥「……そいえば椛どこいくの?」


椛「M大」


遥「がち?」


椛「うん」


遥「俺もだわ」


椛「え、きも」


遥「え、ひど」


椛「うそうそ」


遥「倖はA大って言ってたな」


椛「意外と頭いいもんね。七夏はT大だって


遥「俺らだけか一緒なの」


椛「志望校変えようかな」


遥「…そんな俺の事きらい?」






倖「おーい七夏ー」


七夏「……なに」


倖「まだ拗ねてんの」


七夏「そんな時間経ってないもん」


倖「はいはい」


七夏の隣に座る


七夏「……なにしにきたのよ」


倖「読みに来ただけだけど」


七夏「向こうで読めばいいじゃん」


倖「どこで読もうと勝手だろ」


七夏「……」


倖「……なぁ七夏」


七夏「なに」


倖「大学…どこいくの?」


七夏「倖には関係ない」


倖「……あっそ」





倖「あ」


七夏「なに?」


倖「外」


七夏「え…」


窓の外には桜の花が舞っている


七夏「桜……吹雪……」


倖「綺麗だな…」


七夏「…うん」


倖「今日風強いからな。開けてみるか?」


七夏「うん」


倖が窓を開けると突風が教室内に吹き荒れる


倖「うわっ!」


七夏「わっ…!すごい風…!」


思わず2人とも目を瞑った



急に辺りが静まり返る


七夏「…ん……」


七夏「……え?どこ、ここ…?!外…??」


七夏「さっきまで教室に居たのに…なに…?」


白いモヤの中に人影が見える


七夏「倖…?」


えみ「…誰?」


七夏「…椛?」


えみ「……?もみじ…?」


七夏「もう〜やだなぁ!なになに?これなんなの?演出??どうせスモークでしょ〜!もー!やだなぁ〜」


えみ「……??」


七夏「いくらサプライズが好きだからってやりすぎだよ椛!」


猫「そいつは椛じゃない」


七夏「…え?!猫?!!」


えみ「猫さん。これは一体どういうこと?」


猫「知らん」


七夏「……?」


猫「貴様。名前は?」


七夏「…なな」


猫「なな。そうかこいつはえみだ」


七夏「えみ…?って台本の……?やっぱ椛じゃん!」


えみ「台本…?もみじ…??」


猫「何を言っとるんだこいつ」


七夏「ねぇ倖は?どこ行ったの?」


えみ「こう…?知らないわ」


七夏「ちょっと…冗談やめてよ」


猫「冗談を言っているのは貴様だろう。我が姫を困らせないで欲しい」


えみ「こら猫さん。言い過ぎです」


猫「…むぅ」


えみ「どこから来たのか存じませんが、あなたとは初めて会います。はじめまして」


七夏「なにが…起こっているの…」


えみ「……もしかして」


七夏「…」


えみ「迷い込んでしまったのかしら。こちらの世界に」


七夏「…わからない」


えみ「たまにいるの。別の世界からいらっしゃる方が」


猫「この混乱様をみるとそうなんだろうな」


七夏「……」


えみ「…猫さん。お茶を」


猫「ん」


えみ「お客人…ななさんと仰ったかしら」


七夏「はい…」


そっとえみが七夏の手を取る


えみ「不安だと思うけれどここから帰れなかった人はいないから大丈夫。ゆっくりしていって」


七夏「…うん」


えみ「それに、ほら上を見て」


七夏「え…わぁ…!!」


えみ「今は七色桜が満開の時期なの。運がいいわ。こんな綺麗に見れるなんて」


七夏「綺麗…こんな色とりどりの桜みた事ない」


えみ「そうね。今日は一段と綺麗。誰か恋をしてるんじゃないかと思うくらい」


七夏「…恋?」



遠くの方で倖の声が聞こえる



倖「うわぁ!猫が喋った!!」


七夏「倖?!」


えみ「あら。今日は随分賑やかだかこと」


猫「いやぁ参った参った。うるさくて敵わん」


倖「参ってんのはこっち…って七夏!!」


七夏「倖!!!」


えみ「お知り合い?」


七夏「そう!部員!」


えみ「ぶいん…?」


倖「仲間です仲間」


猫「ふぅん。あ、これ。桜茶」


七夏「美味しそう…!」


えみ「美味しいわよ。よかったらそちらのお客人も…」


倖「こうです」


えみ「そう。こうさん。どうぞ」


倖「どうも」


七夏「……甘くて美味しい」


倖「うまいな」


えみ「改めまして。ようこそななさん。こうさん。私はえみ。この七色桜を護る巫女です」


猫「猫だ」


えみ「ここには私と猫さんしかいないはずなんだけれど、たまに迷い込んでくる方がいるの」


猫「いつのまにかいなくなってるんだけどな。まぁ退屈しなくていい」


倖「ここは…異世界なのか」


七夏「…楽しそう!!」


猫「うわっ急にうるさいこいつ」


えみ「こうさんが来たから安心したのでは?」


倖「いや、いつもこんなんですよこいつ」


猫「さっきまでしょんぼりしていたぞ」


えみ「あなたが来てからですよ。元気になったの」


倖「……」


七夏は桜の木の回りを無邪気に調べ回っている


倖「…なら、よかった。」


えみ「あら」


猫「ふぅん」


倖「なんだよ」


えみ「いいえ。桜の花が綺麗な理由が分かっただけですわ」


猫「ここだったか」


えみ「相手は気づいていないみたいね」


猫「まぁ鈍そうだよな。がんばれ倖」


倖「…別に七夏が幸せそうならそれでいいんだ」


えみ「なに弱音を吐いているの」


倖「え」


えみ「ダメよ。『俺が幸せにする』くらい言えなければ」


倖「いや…それは俺のエゴ」


猫「逃げるな。その気持ちから」


倖「……」


えみ「貴方はななさんの一生を隣で見ていたいと思わないの?」


倖「だから!それは俺のわがままだ」


えみ「わがままでいいじゃない」


倖「え」


えみ「わがままでいいのよ。1度きりの人生くらい、わがままでいなさいな」


七夏「そうだそうだ!」


倖「え」


七夏「倖はわがまま言わなすぎなのよ!」


猫「……ふぅん?」


七夏「いい子すぎるのよ!」


倖「七夏……」


七夏「後悔するのは自分よ!」


倖「……」


えみ「…決まったようね」


七夏「ん?なにが?」


猫「ほらそろそろ」


えみ「桜が散る」


猫「大事なことは言葉にしなくちゃ伝わんないぞ」





倖「……七夏」


七夏「え?」


倖「俺……」


突風が吹き荒れ、倖の声がかき消される


七夏「…え?なに?風が……うわっ!」


倖「うっ…!」


桜の花びらが舞いながらあまりに強い風に倖も七夏も目を瞑る



えみ「いざ、恋ひ渡れ(こいわたれ)」


猫「またな。がきんちょたち」



見慣れた教室へ戻ってきている



七夏「ん……もーすごい風!」


倖「……」


七夏「倖?やっぱ窓閉めようよ」


倖「え?あ、あぁ…」


七夏「倖?」


倖「いや…今なにか……夢?」


七夏「やだなぁお昼寝してたの?今の一瞬で?」


倖「え、いや七夏も一緒に」


七夏「へ?いや、私は寝てないけど」


倖「……?なんだ今の…」


猫『逃げるな。その気持ちから』


倖「……」


七夏「やっぱ春って風強いんだなぁ…」


七夏「あ!見て!すっごい綺麗な桜吹雪!」


七夏「風強いと萎えるけどこの景色はサイコーかも…」


倖「七夏」


七夏「?」


倖「……あのさ」


七夏「なに…急に」


倖「好きだ」





七夏「…え?」


倖「聞こえなかった?じゃもう1回」


七夏「まって!聞こえた!聞こえたよ!」


倖「……」


七夏「……き、急に言われても」


倖「そうか」


倖「…言わなきゃ後悔すると思ったから」


七夏「…!」


倖「返事は…いつでもいいから」


七夏「まって!」


倖「…なに?」


七夏「……私も…好きかも」


倖「……」


七夏「…」


椛「あー!もー!焦れったいわね!」


七夏「椛?!!」


遥「あっおい!ばかっ!」


椛「七夏!あんたはどうしたいの?!」


遥「あーあーあ……」


七夏「わ、わかんない」


椛「わかんないはずないでしょ。あんなに私に相談しに来てたくせに」


七夏「私って本番に弱くて…」


椛「もーしょーがないわね」


椛が七夏の背中を叩く


椛「大丈夫。出来る。倖!!」


倖「はい」


七夏「好きです!!」


倖「…!」


椛「やれば出来るじゃん」


遥「はぁ…こりゃいいんだか悪いんだがわかんねぇアシストだな…」


椛「じゃあとはおふたりでどぅぞ〜」


七夏「へ?!椛達は?!」


椛「私たちはクレープでも食べに行くから初恋堪能しなさいよ!」


七夏「うっ」


椛「まったね〜!」


椛と遥が出ていく


遥「……よかったのかよ」


椛「ええ。友達の恋が叶ったんだから」


遥「……はい」


遥が椛にハンカチを手渡す


椛「……え?」


遥「目」


椛「あ……」



遥「……倖ってモテんのな」


椛「……七夏の事好きなのわかってたのに」


遥「……」


椛「目の当たりにするとしんどいんだねぇ」


遥「早く拭けよ」


椛静かに泣く


椛「…はぁ」


遥「クレープ。食べいくぞ」


椛「そんな気分じゃない」


遥「じゃアイス」


椛「びみょー」


遥「ラーメン」


椛「……あり」


遥「ありなのかよ」


椛「うん」


遥「じゃラーメン行くぞ」


椛「ん…」


遥「あ、桜」


椛「え……窓閉まってるのに」


遥「どこから入ったんだろうな」





遥「なぁ」


椛「うるさ」


遥「いや、なんも言ってない」


椛「俺にしとかない?でしょ」


遥「よくご存知で」


椛「聞き飽きた」


遥「いくらでも言うよ」


椛「倖がよかったの」


遥「そうかい」


遥「……いつか俺でよかったって言わせるから」


椛「……ぷっ。それなんのセリフ?」


遥「俺のセリフ」


椛「あっそ!じゃ遥の奢りね!」


遥「はいはい」





えみ『叶う恋あれば散る恋あり』


猫『永遠の恋なぞ存在しない』


えみ『咲いては散る桜のように』


猫『満開の時などないように』


えみ「儚い桜の恋心」






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