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触手

「また魔物狩りかよ……オレたち、ボロボロだってのに!」

 奏多(かなた)は叫んだ。彼女は結晶で出来た太刀を生み出し、一心不乱にそれを振り回していく。しかし先程の戦闘で酷く疲弊している彼女は、額から汗を流していた。その呼吸は極めて荒く、その身がいつまでもつかはわからない。同様に、ディランもまた満身創痍の有り様だ。彼は鉄の太刀を作りだし、魔物たちの攻撃に応戦していく。意識が朦朧としていく中、二人は必死に標的への攻撃を続ける。


 ほんの一瞬でもその手が止まれば、彼女たちに命は無いだろう。


 奏多は訊ねる。

「なぁ。オレの冗談、聞きてぇか? せいぜい気休め程度にはなるぞ」

 無論、彼女たちには気を休めている余裕などない。

「そんなこと言ってる場合じゃないでしょ! 奏多!」

「冗談だよ、今のは」

「ああ、もう! どうして君はいつもいつも!」

 ディランを振り回すのは、魔物だけではない。今まさに彼と共闘している女もまた、日頃から彼を振り回している身だ。


 その時である。


 突如、魔物たちの体からはおびただしいほどの触手が生えてきた。それらは奏多たちを捕らえ、強い力でその身に巻き付いていく。

「おいおい……妙にじゃれついてくるじゃねぇか。そんなにオレのことが好きか? よーしよしよし、今ブチ殺してやるよ」

 依然として、奏多の強気な態度は変わらない。その一方、ディランは生唾を飲み込み、必死に思考を巡らせている。このままでは、二人とも魔物に絞め殺されてしまうだろう。

「奏多! 早くなんとかしないと!」

 そう叫んだディランは、酷く動揺していた。

「わかってるよ、ディラン」

 奏多は歯を見せて笑い、自らにまとわりつく触手を結晶で覆い始めた。結晶はそのまま、まるで氷の如く魔物の体を包み込む。これで一先ず、彼女の敵対者の動きは止まった。当然、それだけではこの状況を切り抜けることなど叶わない。

「今だ、砕けろ」

 その宣言と同時に、彼女の標的を覆っていた結晶は勢いよく砕け散った。その破片は魔物たちの体に突き刺さり、彼らに深い傷を負わせていく。そして奏多を捕らえていた魔物はその衝撃を一身に浴び、その場で爆発した。その様子を横目に、ディランは覚悟を決める。

「よーし……」

 奏多の戦いを見ていた彼は、触手を覆うように鉄塊を生み出していく。そして彼が指を鳴らすと同時に、鉄塊は勢いよく砕け散った。この一撃により、彼を捕らえていた魔物も爆発する。そして鉄塊の破片もまた、奏多の生み出した結晶と同様に魔物たちを傷つけていく。その光景を前にして、奏多は腹を抱えて笑い始めた。

「ハハハハ! アンタ、なんでわざわざ指を鳴らしたんだよ! そうしないと鉄塊を破裂させられねぇのか?」

「い、いや……なんていうか……じょ、冗談だよ。これも」

 少しばかり格好つけたことを弄られ、ディランは苦しい言い訳をした。その言動は彼のプライドを守るどころか、更に奏多を笑わせてしまう。

「そりゃぁ良い。アンタは冗談の天才だな! 面白ぇや! ハハハ!」

「そ、そんなことよりさ……早く魔物の群れをどうにかしないと!」

 確かに、二人が一刻も早く魔物を殲滅した方が良いのは事実だ。しかしそれ以上に、ディランは自分がからかわれている状況を変えたがっているようにも見える。いずれにせよ、先ずは眼前の敵を倒すに越したことはない。残る魔物は、後三体だ。

「いくぜ、ディラン。ダイヤモンドの粉末を練り込んだ大剣を作るぞ」

「うん!」

 奏多たちは手を重ね合い、その場に一本の大剣を生み出した。奏多はその大剣を手に取り、その場から高く跳躍する。

「ネンネしな! 化け物ども!」

 彼女は凄まじい勢いで大剣を振り、三体の魔物を一刀両断した。そんな彼女の背後で、魔物たちは無惨に爆発した。

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