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魔物退治

 奏多(かなた)は手慣れた手つきで剣を振り回し、周囲から襲い掛かる魔物を次々と斬り倒していった。彼女に倒された魔物たちは次々と爆発し、周囲に肉片を飛び散らせていった。一方で、戦闘に不慣れなディランはどこかぎこちない戦いを繰り広げていた。

「ディラン、後ろだ!」

「うわぁ!」

 奏多に警告されたまま、ディランは咄嗟に背後へと振り向いた。彼の背後には、人影一つ見えなかった。

「ハハハ! 嘘だよ!」

 こんな場面に出くわしてもなお、奏多の態度は相変わらずだった。

「ちょっと! こんな時にふざけないでよ!」

 ディランは少し取り乱しつつも、一心不乱に剣を振り回していく。そんな戦いを繰り広げている最中、奏多は依然として不敵な笑みを浮かべている。

「なあディラン。アンタ、ハンバーガーが好きだったよな?」

「そうだけど、それが一体?」

「この魔物ども、実は食肉に適してるんじゃねぇか?」

 無論、そんな確証はない。彼女はあくまでも、ディランをからかっただけだ。ディランは深いため息をつき、金属の鎧を身にまとう。そんな彼に続くように、奏多も宝石の鎧に身を包む。防御を固めた二人を前にして、魔物たちはなすすべもないだろう。


――否、鎧には一つだけ弱点がある。


 魔物のうちの一体が、奏多の身に飛びついた。その魔物は彼女の首に腕を通し、それを折り曲げようと力を加えていく。いくら鎧を身にまとっていても、関節まで守ることは叶わないだろう。

「おいおい……魔物にも、絞め技を使うくらいの知性はあるのかよ。笑えねぇ冗談だな!」

 完全にその身を拘束されてもなお、奏多は至って冷静だ。彼女の鎧からは結晶の針が伸びていき、魔物の肉体に突き刺さっていく。こうなれば後は、どちらがより長く相手の攻撃に対応できるかが要となる。首を絞められている奏多は真っ赤な顔をしているが、その一方で魔物の全身は血まみれになっている。そこで彼女は一本の大きな針を鎧から生やし、相手の腹部を勢いよく貫いた。生命活動が停止した魔物はすぐに爆発し、その灼熱の炎に彼女を巻き込む。爆炎をまとった煙に包まれつつ、奏多は地面に転がる。煤だらけの全身から血を流しつつ、奏多は笑う。いかなる危機を前にしても、彼女は決して動じないようだ。


 そんな奏多が背後へと振り向くと、その視線の先では一体の魔物がディランの体に馬乗りになっていた。魔物は彼の顔面を何度も殴り、その拳を返り血に染めていた。その光景を前にして、奏多は深いため息をつく。

「どうやら、遊んでる場合じゃねぇようだな」

 そう呟いた彼女は、己の手元に結晶の剣を生み出した。その刀身は二メートルにも及び、それでいて綺麗な光沢をしていた。奏多は剣を振り上げ、魔物の頭上へと跳躍した。それから勢いよく剣を振り下ろし、彼女は眼前の敵を一刀両断する。それから彼女はディランの方へと手を伸べ、どこか優しげな微笑みを浮かべる。

「立てるか? ディラン」

「うん……なんとかね」

 ディランは奏多の手を掴み、彼女に引っ張られるまま立ち上がる。二人の周囲は、まだ何体もの魔物に包囲されている。そこで奏多は、一つの案を思い浮かぶ。

「一気にカタをつけるぞ、ディラン! 頑丈なワイヤーを作れるか?」

「ああ、もちろんだよ」

「パーフェクト。オレは宝石の粉末を作るから、この場に疑似的なダイヤモンドワイヤーを張り巡らせるぞ!」

 さっそく彼女はディランの手を握った。二人の力が合わさり、きめ細やかなダイヤモンドが練り込まれたワイヤーが生成されていく。そして魔物たちは彼らの方へと駆け寄っていき、全身に深い切り傷をつけられていく。

「終わりだ! 化け物ども!」

 奏多がそう叫んだのと同時に、辺り一帯は激しい爆発に包まれた。

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