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俺の異世界備忘Log.  作者: BRACHIUM
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Log2.需要が無ければ値は付かない

「この品は、買い取りできません」


実に、れない返事だ。取り付く島も無い、とはこの事か。アイテムボックスから草を取り出して見せた開口一番、アイテム回収業者の店主が冷ややかな視線と共に、即答した。


「じゃぁ、どうすれば買い取ってくれるんだ?」


ヘルプ機能もアシスト機能も何も無い。そもそも、この世界の変化を楽しむのがWOOのWOOたる所以なのだから、そんなものは不要と言わんばかりの不親切設計だ。故に、ここは素直にこの世界の住人に聞いてみる事にした。


「こちらで買い取れる品は、鑑定済みのものに限られます。ですので、鑑定スキルで鑑定するか、もしくはアイテム鑑定業者に依頼して鑑定してもらったものをお持ち込みください」


なるほど、仰る通りだ。わけのわからん物には値の付けようがない、と言う事か。それはそうなのだが、「リアルを追及するのであれば、回収業者なら多少の目利きはできそうなものだろうに」とボヤくと、


「すいませんね。我々の商売にも、それぞれの領分というものがございまして――」


と、変に人間臭いリアルな対応をしてきた。


「くそぅ、恐らくこの流れで行くと、アイテム鑑定業者に鑑定してもらうのにも当然、カネがかかるんだろうな」


大正解。一握の期待を胸にその足で鑑定業者に向かい、鑑定依頼をしたら、まとめて銅貨20枚と言われた。


そりゃそうだ。あちらも商売なのだから、タダでやってもらえるなんて考えが甘すぎた。ましてや、大量にある草の山ならば、なおの事。むしろ、銅貨20枚で全部鑑定してくれるというのは、破格なのかもしれない。項垂れたままアイテム鑑定業者の店を出て、途方に暮れる。路傍に佇みながら手にしていた草を何気なくじっていたら、


<製作スキルを使用しますか?> YES or NO


システムメッセージと共に、視界の真ん中に選択肢が表示された。突然の出来事に、思わずYESの文字を触ろうと左手を伸ばしたが、文字が浮かぶ中空を触れてみても何の変化も無かった。


「は? なんだよこれ、触れねーじゃんか。てか、どうやって消すんだよ。前、見辛れぇよ!!」


文字が邪魔して視界がすこぶる悪い。両手を振って掻き消そうとしても、一向に消える気配は無い。


「ママー、あの人何してるのー?」


「ダメよ。ああいう人は、見ちゃいけません!」


通りすがりの母娘に物騒がられながらも、必死に足掻いてみたものの変化は無い。


「だから――イエスでもノーでもどっちでもイイってんだよ!!」


つもりに積もった苛立ちが口をついて出た瞬間


<製作スキルを使用しました>


新しいシステムメッセージが表示されると共に、手にしていた草が消えて同時にシステムメッセージも消えた。


「どういうコト……?」


呆気にとられて、開けた視界で自身の手を見つめるも、見つめる先の手の中には、何も無い。慌ててアイテムボックスを確認するとそこには、『紐(素材)』という新しいアイテムが表示されていた。どうやら、システムメッセージは声に反応するらしい。それはそれとして、思うところがあったので、急いでアイテム回収業者へと向かったのだが。


「この品は、買い取りできません」


実に、実に、攣れない返事だ。鑑定済みのアイテムだから買い取ってくれるものと思い、持ち込んだのに。


「素材状態のものは買い取りできません。『紐』というアイテムの状態であれば可能です」


だ、そうだ。なるほど、そうと分れば話は早い。アイテムボックスから草という草を根こそぎ取り出して、片っ端から捩り始める。


「イエス。イエス。イエス……」


何かに取り憑かれた様に呟きながら、捩り倒す。システムの選択肢は声に反応すると言う事は、先程学んだ。一心不乱に捩り倒し、全ての『草(未鑑定)』を『紐(素材)』へと変化させた。


「さて、どうすれば紐にできるんだろうか……?」


両手に『紐(素材)』を持ったまま呆けていると、アイテム回収業者の店主がこちらを向いて、何やらジェスチャーをしていた。


「あ? こう? こうして――こう?」


店主のジェスチャーに合わせて、両手に持った『紐(素材)』をひとまとめにして更に捩ってみると、


<製作スキルを使用しますか?> YES or NO


システムメッセージが表示された。


「イ、イエス」


手にしていた素材が消えて、アイテムボックスに『紐(小)』が表示された。


「こ、これなら、買い取ってもらえますよね……」


すがる思いで、アイテムボックスから取り出した『紐(小)』を手にして店主に詰め寄った。


「これ自体に、価値はありませんね。引き取ることはできますが、無償になります」


無情の返答だ。俺の期待していた返答は、それじゃない。苦虫を潰したような顔で押し黙っていた俺に、


「すみません、そろそろ閉店の時間なのですが――」


引き攣った笑みを浮かべた店主が、さっさと帰れと言わんばかりに声を掛けて来た。


「いや、待ってくれ。一体どうすれば値が付くんだ?!」


呆れ顔の店主に詰め寄って、教えを乞うた。渋面を絵に描いたような表情ではあったが、


「『紐(小)』一個では、大した使い道がありません。ですので、値が付きません。量が多ければ、『紐(中)』や『紐(大)』の素材となるので、ある程度の価値はあります。ただし、職人ギルドから安価なものが大量に出回っているので、買い取り価格は相応です。つまりは、需要が無ければ値は付かない、ということです」


店主は親切な対応をしてくれた。店主の説明には理がある。まさしくその通りだ。


「また明日にでも、出直します」


俺はそう言って、店を後にした。

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