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ほっとカクテル―『Bar at Takai』にようこそ―  作者: 澄原千景
3杯目~クリスマスとトムアンドジェリー~
32/35

クリスマスパーティー!

 「それではみなさん、メリークリスマス!」

 「「メリークリスマス!」」

 鈴が鳴るように、グラスを合わせる音が次々と重なる。それを合図に、バー貸し切りのクリスマスパーティーが始まった。

 テーブル中央には、ゆかがこの日のために用意したメインディッシュのロティサリーチキン。香ばしい匂いを漂わせながらツヤツヤと輝いている。他にも、ホクホクのキッシュや、彩り豊かなポテサラツリーなどの料理が並べられ、思わず胸が弾む華やかさだ。

 しかし、奈央と仁は違う意味で胸の奥が弾んでいた。

(むぎちゃん、喜んでくれるかな……ううん、喜んでくれるに決まっているわ!あれぐらいの歳の子で、ぬいぐるみが嫌いな子なんていないもの!……たぶん。)

(やばい、ドキドキしてきた……!いやでも、いけるでしょ!だってむぎちゃん本好きだし、大丈夫なはず……大丈夫だよね?)

 落ち着かない気持ちの遣り場に困って、2人ともただただ食事とお酒を口に運んでいく。けれども、美味しいはずの料理と、それらを作ってくれたゆかと健には本当に申し訳ないが、おかしな緊張のせいでしっかり味わうことはできなかった。


「はあー、おなかいっぱい。」

 宴もたけなわ。幸せそうな声を上げたむぎをはじめ、全員のお腹が膨れ始めた。その頃合いを見計らってか、次のお楽しみに向けてゆかが口火を切った。

「むぎちゃん、実は今日ね、クリスマスプレゼントを準備してるの。」

「え!ほんと!?」

「うん。ねえ、サンタさん?」

 ゆかから送られる視線をきっかけに、奈央と仁が目を見合わせる。お互いに腹を括ったように頷き合った2人は、赤と緑にラッピングされたプレゼントをそれぞれ手に取って、立ち上がった。

「そう!むぎちゃんがいい子でがんばりやさんだから、特別に仁サンタと奈央サンタが来てあげたよ!」

「きっとむぎちゃんに喜んでもらえるプレゼントを考えてきたのよ!だから、はい!これどうぞ!」

 奈央が赤いリボンを結んだプレゼントを、むぎの両手に優しく預ける。リボンを解き、開いた包みの中から現れたのは、真っ白なもこもこのくまのぬいぐるみだった。

「わあっ……!かわいい!」

 むぎが嬉しそうに顔を綻ばせて、ぬいぐるみを抱きしめる。その姿を見て、奈央は一瞬表情を緩ませると、すぐに得意顔になって鼻を膨らませた。

「ま、まあ当然よね!たっっくさん探して見つけてきたんだから!喜んでくれると思ってたわよ!」

「うん!うれしい。なおちゃん、ありがと!」

「んっ……どういたしまして、むぎちゃん。」

「あはっ、変な顔~。」

「う、うるさい!次は仁君の番でしょ!」

 素直な感謝に上がりかけた口角を何とか抑える。それをごまかすように、茶化してきた仁へと注目を向けさせた。

 仁が後ろに手を組みながら、ゆっくりとしゃがむ。そうしてむぎと目線を合わせると、隠すように持っていた包みを差し出した。

「はい、どうぞ。仁サンタからのプレゼントだよ。」

 奈央のプレゼントよりも控えめな大きさの包みを受け取り、リボンを解く。中から現れたのは、色鉛筆でひよこが描かれた、手作りの絵本だった。

「むぎちゃんとたっくさん遊んだけど、僕はむぎちゃんと絵本を読む時間がすっごい楽しかったの。だからね、一緒に読みたいお話を作ったんだ。どう……かな?」

「これ、じんくんがかいたの?」

「そ、そうだよ。まあ、奈央ちゃんみたいに上手じゃないんだけど」

「かわいい~!」

 自信が萎んでいく仁を照らすように、むぎが喜ぶ。

「ん~、いまよみたいけど、じんくんによんでもらうの、たのしみにしてるね!」

「っ!!~~うん!楽しみにしててね!」

 はぁ~、よかったぁ~と仁がへなへなになりながら腰を落とす。両腕にプレゼントを抱えながらにこにこ顔のむぎを見て、智宏がほっとしたように声を掛けた。

「よかったなあ、むぎ。サンタさんにプレゼントもらえて。」

「うん!うれしい!でもね」


「ほんとのサンタさん、いつくるの?」

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