ブルーな季節
しんしんと、鳴るように真っ白な綿が舞う。風と共に吹きつけるチクチクとした冷たさに、ついにこの季節が来たか、と少しブルーになる。時刻は18時過ぎ。まだ夕方だというのに、辺りは日が落ちて仄暗い。冬化粧を始めた寒空の下、僕は幼稚園へと身を縮めて走り出した。
園につくと、時刻は19時前。延長保育ギリギリの時刻だ。小走りで園舎に入ると、20代前半ぐらいの小柄な若い先生がやってきた。パッチリとした目に、明るめの茶髪を後ろで短く結んだ、活発そうな女性だ。
「遅くなってすみません、あやか先生。」
「いえいえ。遅くまでお疲れ様ですっ。むぎちゃん、とってもお利口に待っていましたよ。」
そう話すあやか先生の後方から、トットットッと軽い足音が近づいてきて、あやか先生の隣で止まる。
「パパ。」
「うん、むぎ、待たせたね。」
「むぎ、おりこうだったよ。」
「そうだね、むぎはえらい。」
両手を上に挙げて、抱っこ待ちのポーズをしているむぎを抱き上げる。子ども特有の高い体温が、コート越しでもじんわりと胸に伝わる。
「遅くまですみませんでした。あやか先生。」
「いえいえ!とんでもないです。むぎちゃん、さようなら。」
「さようならー。」
あやか先生に一礼して、園舎を出る。凍てつくような空気を受けて、むぎがキュッと体を縮込ませたのを感じて、急いで車へと戻った。
「むぎ、サンタさんへのお手紙は書いたかい?」
ゆったりと流れていく町の明かりの中に、時折カラフルな光がピカピカ点滅する。賑やかしくて、どこかそわそわする景色を、ぼんやりとした目で眺めている娘がバックミラー越しに見えて、繕うように明るい声で訊いた。
「ん……むぎ、サンタさんいい。パパといっしょがいい。」
「サンタさんが来たって、パパは一緒にいるよ。」
「うん……えとね、じゃあむぎ、サンタさんじゃなくて、ママにおてがみ、かきたい。」
「……!」
胸が詰まるようにも、欠けた隙間に冷たい風が吹き抜けるようにも感じた。何とかして言葉を紡ぎ出そうとしても、空虚に半開きになった口に、生温い空気が入り込んでくるだけだ。それきり再び静かになった車を走らせて帰宅すると、いつの間にか眠っていた娘をそうっと抱き上げて、ぽっかりと空いた心の穴のような家へと入っていった。




