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菱沼浩之の場合6

「菱沼くん!」

 仕事終わり。段ボールの解体をしていると後ろから声を掛けられた。茶髪で派手な化粧。見覚えのある顔。

「あ、どうも」

 僕は作業を続けながら応対した。彼女は気にせず続ける。

「ひさしぶりじゃん! 相変わらずティッシュ配り?」

「ええ。そうですね。昼間はだいたい」

 そう言いながら段ボールを紐で縛る。

「そっかそっか。ねぇ? 今日の夕飯たかってもいい?」

「いいですよ。前回は僕がたかったので」

「よっしゃ! じゃあ終わったらサーティーワンの前まできてよ。待ってるから」

 そう言うと彼女は猫のように笑って去って行った――。


 彼女と初めて出会ったのはかれこれ五年前だ。当時の僕はまだ大学生で就職難に喘いでいた。中小企業の内定さえ取れない。そんな毎日に辟易していたわけだ。

 そんな中、藁にもすがる思いで占って貰ったのが彼女だ。彼女はオラクルカード、タロットカード、占星術。それらを駆使しして僕の就職について占ってくれた。まぁ、残念ながらそこから導き出された結論は「あなたは雇われて働くのは向いてない」ってことだったけれど……。

 今思うとその占いの結果は天啓だったのだと思う。もし普通に就職してサラリーマンになっていたらこんなに自由には生きていられなかったと思う――。


 仕事を終えるとすぐに待ち合わせ場所に向かった。夕方の駅前は酷い混みようで、大学生やらサラリーマンやらでごった返している。

「お疲れ!」

「お疲れ様です」

 サーティーワンアイスクリームの前で彼女はアイスをなめながら待っていた。チョコミントアイスのダブル。好みは相変わらずらしい。

「じゃあ行こうか! 私が飯屋決めちゃっていいのかな?」

「大丈夫ですよ」

「さっすがー! 売れっこは違うね!」

 彼女はそう言うと茶化すように僕の肩を小突いた。


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