エピソード17滅びた廃城〈大樹城〉
甘飴甘味「え⁈
ここって平原の近くじゃないの??」
甘飴甘味からの問いに、
十六夜は無言でコクリと頷いた。
「……昼間にもかかわらず薄暗いのは、
大きな大樹がこの廃城を
包みこんでいるからだよ」ボソッ
十六夜は出口を探すわけでもなく、
体育座りをしながらのんびりとしていた。
悪田わるぞう「おぃおぃ。
『大樹城』って言えば、
12年ほど前に滅んだ城だろ?
たしか地図の上から見ると
東の大陸と南の大陸のちょうど
境界線にあたる場所じゃ……
そんな場所に、
俺たちは転送されたってのかよ」
ヤンキー姿のわるぞうが驚いていた。
「とりあえず出口を見つけなきゃね!♪」
知らない場所だと言うのに
なぜかワクワクしながら
動き出したピンクの髪の女の子。
いや、
この子は知らない場所だからこそ、
ワクワクしているのかもしれない。
「精霊は
『長い廊下の左側の部屋に他の生徒たちもいる』
って教えてくれたよ」ボソッ
十六夜はまだ体育座りをしていて
ここから動こうとはしなかった。
「ほら、いざっぴ行くよ♪
……うーん、
やっぱなんかちょっと違うかも、、、
いざよん……いざいざ……いざぴん
"いざぴ"……これや!
いざぴ行くよ♪」
再度あだ名をつけ直して
十六夜に出発するよう促した。
それでも十六夜は動こうとしなかった。
ニコッと微笑んだ甘飴甘味が
いきなり十六夜の身体を
ガバッと持ち上げて、
わるぞうの背中に向けて
ポイッと投げて わるぞうにおんぶさせた。
わるぞうはいきなりおんぶさせられ
びっくりしていたが、
「オレっちワルだからよぉー。
いざとゆう時は置き去りにしてやるぜぇ」
などと言ってワルぶりながらも、
ちゃんとしっかりと
十六夜のことをおんぶして歩き出した。
置き去りにするなんて
そんな気がサラサラ無いことを、
ピンクの髪と黄色の髪の女の子の2人に
見抜かれている わるぞうだった。
薄暗い長い長い廊下を少しずつ進んでいると、
左側の部屋から少し光が漏れていた。
甘飴甘味がわるぞうと視線を合わせ、
警戒しながら壊れかけのドアへと近付いた。
……ちなみに十六夜はと言うと、
わるぞうの背中でスヤスヤと寝ている。
ーーギ、ギィィィ。
甘飴甘味が先頭に立ち、
ドアを開けた。
ま、眩しい、、、
……が、
この眩しさは2人の知っている眩しさだった。
にぎぃ「あっ!かんみちゃんだぁ〜♪
やっぱりお祈りが通じたぁ♪」
てふ「かんみぃ〜、心配しとったでぇー
どこで迷子になってたんやぁー
うちを1人にせんといてなぁー」
レート「やぁ かんみ。無事でよかったよ」
クラスメイトたちの元気な姿を確認し、
ほっと安堵した甘飴甘味とわるぞう。
すると、
ーーギィィィ。
今度は『夏輝』と『カメリア』が現れた。
この2人もまた、
みんな無事だったことにほっとしていた。
甘飴甘味とわるぞうは、
寝ている十六夜の代わりに
今いるこの場所がどこなのかを
みんなに詳しく説明してあげた。
シャウラ「ふっ……」
転送された場所を聞き、
シャウラは不敵に笑った。
甘飴甘味「シャウラさんだよね?
はじめまして♪
かんみね、
あなたのこと気になってたんだぁ♪
シャウラさんのことをこれから
『シャウぴ』って呼ぶね♪
いつも独りで行動してるよね?
よかったらかんみ達と
お友達になってほしいなぁ♪」
ピンクの髪の女の子は、
青い髪の女の子に向かって
無邪気なニコニコ笑顔で挨拶をした。
こんな可愛い顔と可愛い声でそう言われたら、
断われる男子生徒なんてそうはいない。
……あっ、シャウラは女の子だったわね。
シャウラ「(まさか同じクラスだったとはな……)
あぁ、これからよろしく」
っとひとことだけ言った。
甘飴甘味はシャウラのイケボが
聴けて嬉しそうだった。
アカベコ「お前ら、
今はそんなことやってる場合かよ?
てか、
なんで俺たちがこんな場所に
転送されたんだぁ?」
シャウラと甘飴甘味の間を割り込むようにして、
アカベコが甘飴甘味に突っかかった。
甘飴甘味「知らないわよっ!
みんな魔法陣の罠にかかって
ここにいるんだからね!」
ピンクの髪の女の子は
シャウラとの2人の時間を邪魔され
少し不機嫌になっていた。
アカベコ「はぁぁ?
お前が魔法陣に
突っ込んだせいだろうがっ!」
アカベコと甘飴甘味の言い争いが幕をあけた。
普段は誰にでも優しく、
相手のことを尊重し、
否定をあまりしない甘飴甘味。
そんな彼女のことを一部の人達は、
『全肯定マシーンの甘飴甘味』
と呼んでいるとか……
それなのに、
なぜかアカベコに対してはあたりがキツいのだ。
「はぃはぃ、ケンカはやめようね」パンパン、
手のひらを叩き仲裁に出たのは、
黒い髪の女の子『レート』だった。
真面目な彼女はクラスメイトたちから
信頼されているのだ。
こうして2人の言い争いに早くも終止符が打たれた。
生徒たちは出口を探すべく移動することにした。
少し先に進むと、
大きめな部屋へとたどり着いた。
……そう、
ナカジマが何者かの手により倒された場所よ。
シャウラ「!!!
待てっ、とまれ!
何かいやがる……」
シャウラはどこから取り出したのか
いつのまにか"鋭い短剣"を手に持ち、
それを握り締めては鋭い眼差しで
周囲の気配を探っていた。
てふ「な、なんやぁ?
まさかモンスターかぁ⁈」
にぎぃ「なんだろ??何かあったのかなぁ?」
戦闘をほとんどしない者にとっては、
シャウラがなぜ警戒しているのかわからず、
少し緊張感に欠けていた。
レートは床に書いてあった
ダイイングメッセージに気付いた。
レート「こんなところにメッセージが⁈
てふてふ と にぎぃさん
2人は僕の側に!はやく!」
夏輝「よくわかんねぇが、
『カメリア』は俺の後ろにいてろ」
夏輝とレートも、
遅れて何かの気配を感じて
守るべき者の前に立ち身構えていた。
アカベコ「おぃピンク。俺の後ろに下がれ。」
意外や意外、
この赤い髪をした吟遊詩人見習いのアカベコも、
何かの気配を察していたのだ。
戦闘要員でもない職業のアカベコに指図をされたので
ピンクの髪の女の子は少しイラッときていた。
甘飴甘味「牛は黙ってなさい!」
アカベコ「う、牛って……」
シャウラ「ぷっぷははは」
レート「あっあははは」
夏輝「ぶっw」
わるぞう「ちげぇねぇw」
てふ「うし?
……ほ、ほんまや。
ググッてみたら
赤い牛の画像が出てきたわw」
にぎぃ「クスクス」
カメリア「うふふ」
突然の甘飴甘味の突拍子もない言葉に、
不意にみんなは笑ってしまった。
……ちょっと待って?1人現代っ子がいたわね?
『気配を感じたのは褒めてやるが、
笑ってられるのも今のうちだぜぇ』
『あぁ、俺たち"ジップ&ロック三人衆"が、
お前たちをこれから痛い目に合うせてやるよ。
……こいつらのようになぁ」ドサッ。
突如!
薄暗い部屋の壁が崩れて
山賊のような格好をした2人組の男が現れたのだ!
2人組の男達の後ろにはなんと!
傷付き倒れている『ナカジマ』と『りと!』の
姿があったのだ。
ジップ「女どもはお前が相手をしろ」
ロック「おぅ、任せろ。
お前も気を抜くなよ?
こいつらギルド学園の生徒たちだぜ」
2人組の男は戦闘態勢へと入り
ジリジリとこちらに向かって歩き出しては
距離を詰めて来ている。
夏輝「くっ、、、
相手は"2人"だ!
数はこっちが勝ってるぞ!
怯むな、いくぞぉ!」
夏輝がみんなの指揮を取り、
励ましてはみんなを奮い立たせた。
悪田わるぞう「オレっちも戦いてぇが、、、」
チラッと背中で寝ている十六夜の方を見た
そして防御に徹することに専念した わるぞう。
シャウラ「……(相手の実力が計り切れない内は、
''見"に撤した方が正解だがな)」
青い髪の女の子は1人冷静にそう考えていた。
人数差で不利なはずの
山賊のような格好をした2人組は、
ニヤニヤと笑っていて余裕の表情だった。
戦わずして相手の実力がわかっているかのような、
そんな"玄人"の雰囲気を
この2人組は醸し出していた。




