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選択は間違うことなかれ

 アディールは俺の視線が耐えられないという風に俯いた。

 その幼気な素振りは俺の心にグッと響いた。

 この申し出が精いっぱいだからイエスと言って!というのが丸わかりだ。


 ああ、アディールちゃんは下唇まで噛んでいる!


 俺こそすぐさまこの可愛い彼女にイエスと言ってやりたいが、彼女のこの申し出はゲームでもあったエンディング決定の申し出でしかないのである。

 これにヴィヴが賛同すると、バッドエンドに一直線となる。


 俺が狙っているバッドエンドではなく、ヴィヴのバッドエンドだ。


 ゲーム上では主人公の意思選択の積み重ね判定により、このイベントでヴィヴがイエスと答えるかノーと答えるかが勝手に決まる。


 つまり、ゲームオーバーかゲーム続行の判定だ。


 ワンプレイヤーのみのゲームの意思選択は基本的には主人公の意思しか出来ないものなのだが、しかし、ゲームでない現実ではヴィヴにもちゃんと選択権があるようだ。



アディールの申し出を受けますか?

 はい   いいえ



 もちろん、いいえ、である。

 与えられた家に向かう最中に自分が謀殺される選択などするわけがない。


「ま、まあ!あなたはカルを好きになってしまったのね!酷いわ!私達の十年をあなたはたった一日で奪ってしまうのね!」


「あなたは何をおっしゃるの?私達の目的は何?魔女メディアの討伐でしょう。私達はまだまだ若い。結婚も恋も今すぐ選択することは無くてよ。私は私を助けてくれたバーデット様、あなたのお父様を尊敬しているの。彼の治世がずっと続くように手助けをしたいと思っているわ。ええ、カルはそのために頑張っているのでしょう。私達こそ手を取り合って、カルを応援するべきでは無くて?」


 どうだ!エンディング全部見た俺の言葉は!

 アディールは両目をウルウルさせて俺を尊敬の目で見つめているじゃないか!

 ああ!俺は何と素晴らしい台詞を言い放ったものだろうか!

 自画自賛する俺の両手は湯船から出てぎゅっと拳を作ったが、その両手をがしっと力強い両手で掴まれた。


「ああ!その通りだ!ヴィヴ。俺もバーデットを助けたい一心で頑張っているんだ!君は神殿の奥からこの国の事をずっと憂いでいたんだね。」


 俺はカルにふふっと笑顔を見せながら片手を何とか彼の両手から引き出し、タライでを掴んでお湯を掬うと、呼んでもいない犬に対してするようにしてお湯を被せた。


「カルヴィン?乙女の湯あみに乗り込むのは無作法では無くて?」


 湯を被った青年は水風船をぶつけられたような吃驚した顔を俺に見せていたが、すぐに紫色の瞳を星がいっぱいになったかのように煌かせた。


「アハハハ!俺達は婚約者同士だ!アディールは幼い頃から一緒にお風呂も入った妹同然。何を照れることがあるの!」


 本気でアハハハと無邪気で笑う主人公カルだが、お陰で俺は心置きなくカル暗殺バッドエンドに進めるなと皮肉に考えていた。

 確かに彼がこのままだったら、無邪気すぎて国民や臣下の反発しか貰えなさそうな王になること間違いなしだろう。


「お黙りなさい!私は結婚初夜まで男に肌を見せないと神に誓ったのです。私に誓いを破らせて神の加護を遠ざけたいのですか?」


 私の台詞に、駄犬カルはガガーンと聞こえるぐらいに表情をこわばらせた。


「ああ、ごめんなさい!ああ、ハルバートに言われた通りだった。あなたは聖女だ!本当にすいませんでした。」


 濡れネズミのカルはあたふたと天幕の向こうへと駆けて行った。


――あの戦闘狂。誰が教育したのだか。


――子供が嫌いなんですよ。


 カルの教育係らしいハルバートはカルから目を離せないが、本当は息抜きにカルよりも大人である俺と同室になりたかった?のかな。

 あれはいじめじゃなくて、ハルと一緒に!と俺に叫んで欲しかったのかな?

 俺はカルが消えた天幕を眺めながら、くすくす笑いが次々と込み上げていた。

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