お風呂に女の子と入る?
カルに風呂に入ろうと誘われたが、そこに一緒に入浴する相手まで選択しなければいけないとは思わなかった。
俺のやったゲームにはそんな美味しい選択肢やイベントは無かったはずだ。
「まさか、今後の俺へのサービスイベント、か?」
いや、まて、俺は女の子だ。
腰までのさらさらの髪は銀色に光り、瞳の色は水色だ。
そんな色合いにぴったりくるような色素の薄い肌は雪のようだ。
つまり、鏡に裸体を映して何時間でも俺が鑑賞できるぐらいに、この実写版のヴィヴは美少女でもあるのだ。
細い腰にピンクの乳首。
いや、止そう。
俺は成長していくヴィヴの姿に自分自身という感覚もない代わりに、ヴィヴという外見に対しては自分の娘のような気持ちでいるのだ。
死んだ娘の体を動かしている父親の情念、そんな感じだ。
だからこそヴィヴの清純な体を汚すわけにいかず、一緒にお風呂は同じ女性のアディール姫を当り前だが選択した。
気持ち的に悪魔のハルバートを誘ってみたかったが、返り討ちにされた際の自分の致命傷を軽い傷だと言えそうもないと考え直したのである。
さて、俺が選んだアディール姫。
若き王、バーデット王の娘だ。
本来ならば彼女は物語中盤まで姿を現さない。
ヴィヴとカルが信頼関係を築いたところで出現する当て馬、あるいは別れさせ屋のような存在でもある。
いや、話が中だるみしたから動かすためのキャラなのかもしれない。
赤毛に近い金髪はオレンジに輝き健康的で、瞳はエメラルドグリーン、そして、長い髪の毛はツインテールにしている気の強い16歳のお姫様。
特定男子にはおいしい存在では無いだろうか?
前世の俺を含めて、だが。
そう考えるのは、俺の目の前にオレンジに輝く髪を健康的な肌色の裸の背中に纏いつかせているという、直視してはいけないものが動いているからだ。
彼女はゲームと違いおしとやかで、外見についてもゲーム設定に書かれている通りに美少女だったが、想像していたよりも普通の十代の少女でしかなかった。
背中には甘いものを食べ過ぎでできるニキビがぽつぽつとあり、体つきはヴィヴより5キロは確実に多いだろうと思えるものだった。
ヴィヴが意外とゲームのデザインに近いのは、あの修道女生活で甘いものどころか食べたいものが満足に食べられなかったからであろう。
いや、俺の監督のもとに育っているのだから、俺の指導のたまものか?
前世ではしたことも無い腹筋も俺はヴィヴに課したのである。
「恥ずかしがってないで。風邪をひく前にお風呂に入ってしまいましょう。」
アディール姫はもじもじとするだけで、俺は正面を向かれたら俺の方こそいたたまれないと考え直して自分一人で湯に向かった。
この宿屋の風呂は露天風呂という自然の温泉であったのだ。
カルが風呂の準備と言っていたが、その意味は単純にヴィヴかあるいはアディール姫が利用できるように目隠しの天幕を張り巡らしましたよ、という意味でしかなかった。
まず、湯に浸かる前に部屋から持ってきたタライを使って全身に湯をかけた。
ああ、俺から臭気が少しずつ遠ざかっていく。
中世には香り高い石鹸などまだ存在していなかっただろうが、ここはゲーム世界だけあるのか、香料バリバリの高級石鹸が存在していた。
羊の油に木炭を混ぜただけのドロッとした臭い石鹸だったら、きっと俺は獣油の臭い匂いによって再びここで吐いていただろう。
ちなみに、清貧を良しとする修道院では、俺がそんな臭い石鹸をババ様シスターズに作らされて使わせられていたのである。
湯に浸かれば、その気持ちのよさに勝手に口からため息交じりの言葉が零れた。
「ああ、極楽。神殿には戻りたくはないわね。」
「では、別のところに家を買いますから、全てが終わったらそこに住んでくださりますか?年金だって用意いたしますわ。」
アディールの声に俺は振り返ってしまい、アディールがどうして5キロは体重が多そうに見えたのかの真実を知る事が出来た。
畜生。
腰回りに少し肉がついているが、全体的に見ればゲームと違って男好きのするナイスボディじゃないか。
しかし、俺がアディールにピクリともしないのは女の子の皮を被っているからではなく、アディールの顔がとっても幼い十代と判る顔立ちでしかないからであろう。
俺は今も昔も変態ではない。
十代特有の肉のついた丸っこい輪郭の少女は、俺に言い放った大人びた言葉の内容とは裏腹に口元が自信の無さで震えていた。




