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宿屋的イベント

 追手を撒いたというか殺害しまくった俺達は宿屋というセーブポイントに着いており、俺は宿屋に泊まるという旅人だったら当たり前のシチェーションに頭を抱えることとなった。

 どうして俺がイーヴと相部屋なのだろう、と。


「あなたはイーヴの好みではありませんし、イーヴは寝ているか剣を振るっているか食っているかしか、行動選択のない男ですからね。」


 ハルバートは当たり前でしょうと笑って説明してきたが、お年頃の姫を守る必要性ならば、扉の前に立って廊下で見張り、では無いのか?


「部屋に侵入する者がいれば、イーヴが勝手に対処しますからご安心を。おや、それともあなたは私達に、廊下で寝ずの番をあなたの為にしろ、とおっしゃりたいのでしょうか?」


 外見は素晴らしいのに内面は糞野郎だったハルバートに、俺は笑顔を向けた。


「まさか。わたくしはあなた方を信じております。熟睡しすぎて私の首と胴が生き別れになるなんてありえない事と、ええ、信じておりますわ!」


 事実、イーヴは既に隣のベッドに熟睡している。

 死体のようにして寝入っている様に、絶対に俺が殺害された翌日まで目を覚まさないであろうと確信できるぐらいに、だ。


「ああ。確かにイーヴの熟睡ぶりでは不信感ばかりだね。そうだ、ヴィヴ。君はベッドから降りてベッド下に転がってくれるかな。」


 吐き戻し事件から様を俺から取り外したハルバートに逆らう気力もなく、俺は彼の言う通りにベッド下に潜った。

 ベッド下から覗いてもイーヴの寝姿など変わりはしない。

 しかし、俺の全身はぞわっと毛穴があぶく立った。


 俺に悪寒を与えたのはハルバートの殺気だ。


 そして、イーヴは既にベッド上におらず。


 ザシュン!


 俺の目の前にベッドをくし刺しにした剣の先が飛び出てきた!


「あれえ、ハルか。急に起こすのやめてよぉ。もう少しでお姫様を殺しちゃうところだったじゃない。」


「私としてはベッドに剣を突き刺す前に私の殺気だと気が付いて欲しかったけれどね。お姫様に君の勇姿を見せて安心させるはずが、暗殺者と一緒に胴四つにされそうだって逆に脅えちゃったじゃないのさ。」


 いや、俺が脅えているのはハルバート、糞野郎なお前にこそ、だよ!


 これは、言う事聞かないとお仕置きしちゃうぞ、的な嫌がらせだ。

 俺は完全なる敗北者な気持ちでのそのそとベッド下から這い出た。

 我慢するんだ、ヴィヴ!

 こいつらは明日の朝からは別行動だ。

 ゲームの展開によれば!


「うおっ!」


 俺は宙に浮いた。

 イーヴが俺を持ち上げただけなのだが、彼は眠たそうではあるがニヤニヤと嬉しそうにも見える笑顔を顔に浮かべていた。


「あ、あの、何か?」


「いいやあ。おっきくなったなあって思ってさぁ。七歳の君はリスみたいに小さかったねぇ。」


 彼はしみじみと言いながら俺を床に下ろした。

 俺はそんなイーヴの優しさによって脳裏にヴィヴの記憶、助け出されて女子修道院でもあるカルメア神殿へ向かった旅路のいくつかの思い出が閃いた。

 イーヴは時々俺に木の実を握らせていたのだ。

 小さな可愛らしい帽子付きのドングリだ。


「あなたが私に色々と木の実をくれたのは、私がリスだったからなのね。」


「うん。一度も齧ってくれなかったけどねぇ。」


「どんぐりは齧れませんわ。でも、神殿の庭に思い出にって埋めましたのよ!ええと、芽が出ませんでしたけれど。」


「うーん。虫に食われていた奴だったからねぇ。その虫が美味しいんだよ。」


 アリクイだ!

 怠け者なのに有毛ゆうもう目で括れるナマケモノ亜目とアリクイ亜目のアリクイ選択だったのは、イーヴが虫食いだったからなのか!

 ナマケモノは草食だ!


「おや、信じた?まじめだねぇ。普通に嘘。笑わせられないなんて、俺はやっぱり冗談が下手だねぇ。寝る。」


 イーヴは自分のベッドに倒れ込むようにどさりと沈み込み、俺は自分に明日の朝まであと十数時間だからと言い聞かせた。


「はあ、和気藹々ですね。」


「どこがです?幼い日に虫を食べろと揶揄われた事ですか?」


「いいえ。私との記憶は一つも思い出してくれないので、単なるひがみです。」


 俺はハルバートによる嫌がらせは彼の事を思い出さなかったその一点かと、ぎゅうっと目を瞑って記憶を遡った。


 …………。


「あの。あなたに救われた事と、あなたに手を振ってお別れした事は覚えていますが、私の面倒を見ていたのはイーヴか王様のバーデット様だけでしたよね。」


「ああ、思い出しましたか。私は子供が嫌いなんですよ。」


 ハハっと嬉しそうな笑い声をあげたろくでなしは、脳みそが真っ白になった俺を残して部屋を出て行こうとした。

 彼が出て行かなかったのは、俺達にはカルという空気が読めない青年がいたからである。

 カルは俺とイーヴの部屋に飛び込んでくると、君こそハルバートに仕込まれなさいよと言ってやりたくなる台詞を言い放った。


「お風呂の準備が出来たってさ!ヴィヴ!俺が見張ってやるから入っておいで。着替えも用意してあるから大丈夫だよ!」



 お風呂にはいりますか?

 はい   いいえ



 入るに決まっている。

 俺はまだゲロ臭いんだ。



 誰と一緒に入りますか?


 え?


 1、カルヴィン

 2、ハルバート

 3、イーヴ

 4、アディール



 え?

 どうして当て馬サブヒロインの彼女が、こんな初っ端で登場するんだ?

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