早すぎた到着
本来であれば、俺とカルはドラゴイル男爵の守る領地を目指す所である。
彼の領地は南の蛮人国家と名高いアランバル国との境界線となっている要所でもあり、メディアとバーディットのどちらに付くか迷う時間などない。彼は常に国内よりも他国へに目を向けていなければならないという境遇なのである。
つまり、彼がアウローラ王国を守る盾として頑張っていたからこそ他国の侵入がなかったのであり、メディアが気兼ねなく国内を荒らしまわれたともいえる。
しかし、真面目な者がこの世で報われる事は無い。
ゲーム上ではこの立派な御仁は、ゲームプレイヤー達にメディア打倒の気持ちを植え付けるための捨て駒でしかなかった。
クエストは「ドラゴイル男爵の助力を乞うために砦に向かう。」である。
そこでプレイヤーはドラゴイル男爵がどんな立派なキャラなのだろうとワクワクしながらも、そのクエストを達成するべく砦に向かう。
また、砦に着くまでに六つ位の戦闘を潜り抜けなければいけないので、ゲーム上ではカルヴィンとヴィヴはレベルが30ぐらいには上がってもいる。
だが俺は思うのだが、このゲームの製作者は鬱展開が大好きらしいのだ。
俺は過去に自分がプレイした時は、素晴らしき男爵に出会ったそこで、男爵から新パーティとなる人物を紹介してくれるものだろうと勝手に考えて期待した。
しかし、キャラクターをドラゴイル男爵の砦に到着させて見れば、突然のイベントムービーが始まったのだ。
惨殺されたドラゴイルが城壁に打ち付けられてさらし者になっている、というシーンに。
城壁の上にはメディア。
四十代半ばとは思えない美貌の彼女は、魔女という仇名通りに真っ黒のドレスを纏い、自慢の真っ赤な髪を風にたなびかせて主人公の前に姿を現す。
「お前には女王など決して名乗らせない!」
二度とこのような悲劇を起こすものかと、カルが初めて自分が王になると決心するはずのイベントでもある。
さて実写版のカルヴィン君は、何とかレベルが25に上がっている。
敵に強化魔法をかけるという裏技的行為は、ゲームに改造ツールをぶち込んで難易度を変化させたような仕様となったからだ。
現時点でラスボス戦対応可能なハルバートとイーヴには大好評であり、適当に痛めつけた敵をカルヴィンに手渡してくれるぐらいの優しさも彼らから生まれたのである。
ただし、カルヴィンのレベルアップを体験した俺は、どうしてハルバートとイーヴがカルヴィンのレベルアップを妨げていたのか嫌でも思い知らされた。
カルヴィンがレベルアップする度に、パーティ全員が、ワンターンをしてポーズを決めるという喜びのダンスを強制的に踊らされてしまうのである。
それがすげえ間抜けになった気持ちでムカつくんだよ!
まあ、なんだかんだで、とりあえず俺達はドラゴイル男爵の砦に辿り着いた。
チートな仲間がいるために、きっと通常よりも早く辿り着けたのだと思う。
城壁に虐殺された彼がぶら下っているのではなく、俺達だって城壁前で地団太踏んでいる状態でもない。
大きくて男性的な城の広間に俺達は迎えられており、俺達の目の前には、背は高くスキンヘッドでやせ型のドラゴイル男爵が生きて動いているのだ。
それも、彼の最小公約数的な悪意付で俺達を持て成してくれているのである。
どうして最小公約数的悪意なのかは、最小公約数は1でしかない。
つまり、ドラゴイル男爵は俺を完全に無視というか、彼の愛すべき男達のパーティの一員だからと仕方なく、虫を見る目で見ながらも俺も同じテーブルに座らせてくれている状態である、ということだ。




