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翌日の展開 その二

「ハルは本当にヴィヴが好きだねぇ。君はさあ、二人を置いて王城に戻る予定だったじゃないの。二人ぼっちで仲良くさせたい、カルには独り立ちさせるための最終試験になるだろう、だなんだと言ってなかったかなあ。」


 カルの寂しそうな瞳を受けて混乱している俺の助け舟は、乗ったら確実に沈むだろうイーヴであった。

 余計なことを考えずに眠いんだったら寝てこい、と金色の瞳が笑顔に見えない単なる半目状態のイーヴに俺は言ってやりたい気がした。


 いや、起きていてもらった方が俺には良いのだろうか?


「イーヴ。君こそ王宮だったら好き勝手に寝ていられるって、出来うる限り早く王宮に戻りたい気持ちじゃ無かったかな?どうして君こそここに残ったの?」


 俺を揶揄う事を趣味にしたらしいハルバートが、自分の戦友で親友にあからさまに邪魔だという風な言葉を返した。

 いや、直だよね。

 直に、お前は帰らないの?って、親友だったら言っていいものなの?

 俺だって部屋に押しかけて来た友人に、もう帰れよ、とは言った事はあるよ。

 これって、それと一緒にできないシチェーションだよね?

 しかし、性格が破綻していた美青年との付き合いが俺よりもはるかに長い彼の相棒は、ハルの言葉に全く意に返さないどころか余計なことを言い出した。


「うーん。そうなんだけどね。ヴィヴとのおしゃべりが殊の外楽しくてさあ。俺達は朝まで話し込んじゃったよねぇ。」


 迷惑な話だ。

 純粋に寝すぎで寝れなくなったらしきイーヴがベッドでごろごろ動くがために、俺こそ睡眠妨害されて寝たいのに寝られない、という目に遭っていたのである。

 そこで、奴が寝たくなるだろう会話を向けてみたのだ。

 男が寝たくなる女の会話。

 ハハっ、俺こそ思いつかねぇよ。

 結局、俺はイーヴにこの先の旅についての助言やらを尋ねて、そのうちにこの場合はどのように戦うか、という会話に発展したのである。



――え~。まあ、とりあえず、敵さんが団子になっている所に飛び込んでね、おもいっきり剣を振り回す、かなあ。ハイゼン砦だったら、背面に崖を持ってくるとスリルがあっていいかなぁ、ねえ?


 良いから寝ろよ。

 俺はその言葉をぐっと飲みこんで、嬉しそうに自分の考える素敵な戦い方を語り始めたイーヴに笑顔を見せていた、と思い出す。

 そうだ、その苦行の中、俺は前世の酒の席で俺の話にウンザリした顔の女性達をも思い出したのだ。

 そして、仕事の話は女は嫌がる、と勝手に決めつけていた自分を反省した。

 意味が分からない上に落ちもなくダラダラ続く一方的な会話は、聞く方には苦痛この上ないじゃないのか、と。



「でねぇ、ヴィヴは俺の馬に乗るかな?話の続きをしようかあ?」


「何を言ってるの?君の鞍は特別じゃないの。君が転寝できる改良がしてある。そんな変形鞍ではヴィヴが疲れてしまうでしょう。」


「うん。一緒に馬の背の上で横になるのもいいねぇ。」


 私は、お前ら黙れと言う風に、右手の手の平を掲げていた。


「皆様。お気持ちはありがたいですけれど、わたくしはカルヴィンの婚約者ですの。彼の馬に同乗させてもらいますわ。ねえ。」


 カルヴィンは既に馬に乗って馬を歩かせていた。

 たった一人でトボトボと。


 そんな彼の動きがカキーンと止まったのは、アクリルボードが彼を取り囲んだからだ。



 ヴィヴを自由にしますか?

 はい  いいえ



「うわああああ!」


 俺が思わず叫んじゃったのは、その選択肢が最後の戦いでの選択肢だからだ。


 総力戦で愛する女性と共に戦うか、パーティから外すか、その選択だ。

 いいえを選んだ場合はハッピーエンドに進むが、はいを選んだ場合はヴィヴは一人の所を襲われて敵に惨殺されるのだ。


 ああ!はいの辺りがピコピコと輝き始めている。

 俺が!謀殺!虐殺!なぶり殺しじゃないか!


「ちょ、ちょっと待って!ああ!待てよ!こら!」


 俺は慌ててて自分の靴を脱ぐと、カルヴィンの頭を目掛けて投げつけていた。

 靴は木靴だったからかなかなかな放物線を描いて、スコーンとカルの頭にぶち当たった。

 選択肢の文字は消えたが、カルは落馬して気絶した。


「まあ、木靴ったら、おそるべし攻撃力ね。」 


 男二人が俺を酷い人間だと見下しているが、俺の命が掛かっているのだ。


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