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迫り来る悪意の足音 1

俺がエーゼル少年に忠告を投げ掛けた翌日の朝。


「シュラ君、ゴドリック君、悪い報せがある。とてもとても悪い報せだ」


沈痛な面持ちでティアリアが朝一番にそう切り出した。


それを見た瞬間に俺もゴドリックも続きを聞かずとも何が来たのか察してしまった。


「連中、とうとう痺れを切らせたって訳か。規模は?そして、あとどれくらいで来る?」


だが、落ち込んでいる暇は無い。


情報を集めて、対策を練る必要がある。


「詳しい人数は分からない。だけど、かなり大きな帆船だ。1000人ぐらいは乗ってそうな感じがするかな。今の速度だと陸地に接岸するのにあと半日。平地を行軍して森に来るまで1日と言った具合かな」


ティアリエは『千里眼』スキルを用いて、それを視認したのだろう。


必要な情報を的確に挙げてくれる。


「丸1日あれば十分だ。最低でもエーゼルには知らせる事が出来る」


昼前にはミラフィアがここに来て、昼過ぎにはエーゼルも来る。


そこから避難を始めれば最悪の事態にはならない筈だ。


問題は半日でどれだけ逃がせるかだ。


「だけど、それは飽くまで本隊が来るまでの時間だ」


「と言うと?」


「本隊は飽くまでも目標の周辺を包囲して捉えて搬送する為の部隊なんだ。恐らく、既に先行部隊が既に陸路伝いで森の中に入ってると思う」


「俺達で発見した侵入経路にはしこたま罠を仕掛けたと思うがそれでも居ると思うか?」


俺とティアリエもただ遊んでいた訳では無い。


森を散策しながら、連中の侵入経路を探ったり、発見した経路には罠を仕掛けたりと打てる手は打っていた。


「連中は大きな金になる時は嫌になる程周到な準備を進めて来る。多分、地面に穴掘って新しい侵入経路を確保するぐらいはしてると思う」


結構な間が空いていたのはその準備期間も込みって事か。


「先行部隊は何をするのが役目なんだ?」


「燻り出しだよ。標的の集落を包囲して火を放って襲撃を掛けるんだ。ワザと逃げ場を残すようにしてね」


「そうして誘導した所を本隊と連携して一網打尽にするって事か」


「そうなるね」


胸糞が悪くなる話だ。


「金狐族の集落においても全く同じだった。間違いないと思う」


実際に連中の襲撃を受けた事のある2人の証言は、非常に重いものがある。


「先行部隊に関しては本隊の到着待ちで待機って所か?」


「多分、そうだろうね」


「おい、それはヤバイんじゃないか?」


「まあ、間違いなくヤバいね。早く行動しないとエルフの集落は……」


「そっちじゃない。ミラフィアだ!」


「「!!!」」


俺の言葉で2人も気付いたのだろう。


今現在一番の危機に曝されているのが誰なのかを。


「ゴドリック、ミラフィアは里の連中からは疎まれていて、里から少し離れた所に独りで暮らしているんだよな?」


「……ああ。そう聞いている」


待機しているであろう先行部隊の連中がそんな無防備なミラフィアを見付けたら?


そこから先は言うまでも無い事だろう。


確実に捕えられる。


或いは口封じで殺される。


何にしても良い結果は待ち受けていないのは確実だ。


全員が同じ結論に辿り着き、バッと顔を上げる。


「ゴドリック、ミラフィアの家の位置は分かるか?」


「ああ!案内する!」


その後の俺達の行動は早かった。


即座にミラフィアの住処へと全速力で向かった。


(無事でいてくれよ)


彼女の無事を祈ってただひた走るのであった。


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