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シュラとエーゼル 3

「実は俺もそっちに聞きたい事がある」


「何だ?」


「何をそんなに迷っているんだ?」


「……ッ!!」


どうやら、今の言葉は彼の核心を衝いてしまったようだ。


『ギリッ!』と奥歯を強く噛み締める音が聞こえた。


「貴様に何が分かる」


「そっちの事情は知らん」


当然だ。


お互い深く関わらないような距離を保って接してきただけなのだ。


ミラフィアやゴドリックから少しだけ話を聞いているだけしか知らない。


「が、その歳で何かと重過ぎるモノを色々抱え込んでるだろう事ぐらいは察している」


それはミラフィアにも言える事だが……


彼女の場合、集団の中の立場というものはない。


次期里長であるエーゼル少年は違う。


彼の迷いはその立場というものも大きく絡んでいる気がする。


確信のないただの勘だけどな。


「だから、2つだけ忠告しておく。優先順位はハッキリと決めておけ。そして、いざとなったら絶対に躊躇うな」


守るべきモノが多いと時に選択を迫られる。


どちらかしか選べないという事だって普通に起こり得る。


そこで躊躇った結果、どちらも守れない……


更に言えば自身すらも守れなかった者達を前世では実際に何度も見て来たからこその言葉だ。


「貴様のような訳が分からん者の言葉を我が聞き入れるとでも?」


「何、ただのお節介さ。戯言として聞き流すも良し、真剣に受け止めて考えるも良し。どう扱おうとそれはそちら次第だ」


どれだけ真剣な思いであろうと、それは受け止める側次第でしかない。


だから、これは本当にただのお節介だ。


人間歳を喰うと段々とお節介になっちまうからな。


思い悩む若者を前にしちまうと特にな。


『言っておけば良かった』という後悔をしない為の自己満足とも言える。


「チッ……」


舌打ちをして立ち去るエーゼル少年を見て、俺は満足していた。


あれだけ渋い顔をしていたという事は少なくとも聞き流されたという訳では無いだろう。


それだけで十分だ。


「やれやれ、アレは苦労するぞ」


ミラフィアの『将来ハゲ』というのもあながち間違いでも無い気がする。


間違いなく真面目過ぎてストレス溜め込むタイプだわ。


ゴドリックとは違った方面で真面目で不器用な生き方をしていると言えよう。


「ま、だからこそこんなに気にしちまってるんだろうな」


ぶっちゃけ、俺はエーゼル少年の事が嫌いでは無かった。


向こうはどうかは知らんけど、少なくともミラフィアを守ろうとしている事は本当だろうし、常に警戒を切らさない在り方に好感を抱いている。


「やれやれ、どうにも俺は昔から真っ直ぐなヤツには弱いからな。困った性分だよ」


誰に聞かせるでも無く、独り呟いて俺は釣りを再開した。


結局、その日は何も釣れず、ボウズのまま戻るのも癪だったので帰り道に森で山菜の類を収穫してからゴドリックの家へと戻る俺なのであった。


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