シュラとエーゼル 2
「『嘘言っても仕方ない』とは言ったものの簡単に信じられる話でも無いだろうしな……そうだな、もう少し分かり易い証拠を見せるか」
少しだけ『形状操作』を使用して、胸の辺りをガパッと開く。
そして、ティアリエの造り出した内部機構を露出させて、それをエーゼル少年に見せる。
俺の核の部分、その横に併設されている『風竜玉』の風力発生ユニット、その他の複雑な魔導機構が露わになる。
俺の内部に詰まっているのはそれだけだ。
「何だ、それは……!?」
森に住まい、自然と共存するエルフであるエーゼル少年にはどれも見慣れないものであろう。
見るからに狼狽してた。
「俺を構成する魔導機構。俺そのものだ。俺の中にあるのはこれだけだ」
所謂、中の人などいない状態だな。
意味は全然違うがまあ、言っても仕方ないし、そこは気にしない方向で。
躰のサイズがサイズなので小柄であれば人が入れる程度のスペースはあるが、逆を言えばその程度の空間しかない。
「まあ、分かり難いかもしれないが、一応、俺は出会った時に素顔を出していたって訳だ」
「……信じ難いが本当のようだな」
「俺は必要があれば嘘も吐くが、必要無ければ基本的に嘘はあまり言わない方だしな」
下手に嘘吐いてボロが出ると困るし。
俺はそういう腹芸が得意なタイプでは無いので尚更だ。
「貴様はアレか?ゴーレムというヤツなのか?」
「ティアリエが言うには違うみたいだぞ。詳しい違いはよく知らんけど」
何か魔力がどうこうとか言っていた気はするがあんまり覚えていない。
「『よく知らん』だと、自分の事なのにか?」
「自分の事だからこそだな。何者であろうと俺は俺だから深く気にしたことが無い。そんなん知らんでも生きていけるしな。そっちだって自分の事だからって全て分かるという訳では無いだろう?」
「チッ……!」
「ま、俺が何者であれ基本的に敵対するつもりはないし、ゴドリックやミラフィアに危害を加えるつもりもない」
「それを信じろと?」
「いや別に。ただこっちが勝手に宣言してるだけだし、信じる信じないはそっちの自由だ。こっちは警戒されて当然の存在だからな。存分に警戒してくれて良い」
「ほう……」
「むしろ、ゴドリックとミラフィアの2人が無警戒に過ぎるんだよ。信じることが悪い事だとは言わんがもう少し危機感を持っても良いと思うんだよな、俺は」
どっちも存在を知られれば狙われる立場だろうに。
ティアリエはああ見えてその辺りの警戒は怠っていないから安心だが、あの2人はどうにも危うい。
「非常に癪ではあるが、その意見には同意する」
俺の意見に賛同するエーゼル少年は見事なまでの渋面である。
まあ、その気持ちは良く分かる。
「だからこそ、そういう役割のヤツが必要ってのも分かるからな。それを担っているヤツに『疑うな』なんて無茶は言わんさ」
俺もどちらかと言うとそちら側だ。
かつての友人達がそれはもうおめでたい程の正直者ばかりだったからな。
自然とそういう役割に俺はなっていた。
世の中は綺麗事ばかりではない。
一見平和に見える日本においてもそれは変わらない。
国防の為に何人を闇の中で陰ながら葬って来たのか覚えてすらいない。
綺麗なモノが綺麗で在り続ける為には誰かが汚れる役目を果たさねばならない。
それはいつだってどこだって変わらない純然たる事実だ。




