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シュラとエーゼル 1

それからしばらくの間、俺が懸念したような急を要するような事態にはならなかった。


ここが恐ろしいぐらいに辺境だというのが功を奏したと言う事だろうか?


実際はどうかは分からないが、そのおかげで俺達の訓練の日々は至って順調である。


特にゴドリックは俺が想定していた以上に目覚ましい成長を遂げており、魔術、言語学、武術どの面においてもここ2ヶ月で俺達の想像以上の成長を遂げていた。


努力家なゴドリックの研鑽が着実に実を結んでいるようで俺はそれが嬉しく感じられた。


ただ、漠然とした不安感を感じない訳でもない。


ちなみに、例の傭兵国の探査隊はあの後5回ぐらい来ているのだが、ティアリエの探知能力に見事発見されてゴドリックの実戦の経験値になってもらってる。


定期的にではなく忘れた頃辺りに来るから実に面倒だ。


だが、何度も来る辺りエルフの隠れ集落の情報はどこからか漏れているのだろう。


潰した探査隊から可能な限り情報を吐き出させたが、割と確度の高い情報として扱われている事が判明した。


まあ、末端なので碌な情報は持っていなかったが無いよりはマシではあった。


気掛かりなのは何故確度が高いとみなされているのかという辺りだ。


情報源がどこからのものなのか分かれば良かったのだが、探査に回された連中はその辺りは知らされていないらしい。


ま、使い走りにまともな情報を与える訳無いので、想定の範囲内ではある。


「このまま何も無ければ良いんだけどな……」


ポツリと誰に聞かせるでも無く俺は自身の希望を呟くが、多分そうはならないだろうと経験が告げていた。


この件に関しては嫌な予感がするのだ。


そういう予感程嫌になるぐらい当たるのだから、冗談抜きで嫌になる。


俺に出来るのは備えを充実させる。


ただそれだけだ。


俺達は週1回の間隔で定期的に休息日を設けており、今日はその休息日に当たり全員が自由行動だ。


ティアリエは素材集めと探索で森の中へ、ゴドリックはミラフィアと共に趣味の木工細工、俺は湖畔で釣りをしている訳なのだが……


「フン……まだ居たのか。いつまで居座る気なのだ、貴様らは」


「それを俺に言われても困る。俺の護衛対象である自由人(ティアリエ)に言ってくれ」


エーゼル少年が俺の背後に来ており、いつもと変わらない不機嫌そうな声を背中から投げかけられた。


「そんな事を聞きに来たわけじゃないんだろう?俺が1人になるタイミングを態々見計らって現れたという事は」


「フン……こちらとしては話が速くて何よりだ。貴様は何者なのだ?どうにも貴様からは生命の気配を感じられん。かと言って不死者(アンデッド)の不浄の気配も感じない。貴様のような訳が分からん存在は見たことが無い」


この辺りは多分、ゴドリックとミラフィアも気付いているだろう。


だが、2人は大して気にしてはいないみたいで、彼のように聞いて来た事は無い。


「『ティアリエの守護騎士だ』って答えじゃ満足しないんだろうな」


「当然だ」


「最初に言っておくが、一応俺は生命体だぞ。不死者(アンデッド)じゃない」


「生命の気配が感じられないのはどういう訳だ?」


「それは俺が一般的な生命体とは少しばかり在り方が違うからだろうな」


「在り方だと?」


「最初に会った時、『兜も含めて鎧全てどうやっても外すことが出来ない』って言っただろ」


「言っていたな」


まあ、それが原因で今も現在進行形で絶賛警戒されている訳なんだがな。


「それはこの姿が鎧を着こんでる訳じゃなくて、本体そのものだからだ」


「は?」


どうやら俺の答えは予想外だったみたいで、彼は少しだけ間の抜けた声を漏らしていた。


「俺の躰は殆どが金属で構成された無機生命体だ。呼吸も食事も睡眠も必要としないし、鼓動や体温というものも無いからそれが『生命の気配が感じられない』原因だろうな」


色々と便利ではあるが、有る筈のものが無いというのも逆に目立つよな。


それを改めて実感させられる。


「……嘘を言っている訳ではないようだな」


「嘘を見抜く術を持つ相手に嘘言っても仕方ないだろ」


手段は分からないが、相手のやれることが分かっていれば自然と対応は定まるものだ。


エーゼル少年が俺を敵では無いと信用して単身で聞いて来たのだから、その信用に応えるぐらいの気位は見せるというものである。


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