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真夜中の遭遇 1

シュラのマッサージが気持ち良くてゴドリックに続いて寝落ちしたティアリエだったが、普段より大分早い時間帯に寝てしまった為に夜中に目が覚めた。


再び瞼を閉じてみるが、眠気が全く来ないので少しだけゴドリックの家の周囲で散歩することにした。


夜の森の中には虫の声と風に揺れる木の葉の擦れる音が響いていた。


時折、狼の遠吠えの音も聞こえて来る。


暗い森の中を月明かりだけが照らし出す中、ティアリエは静かに歩く。


湖畔沿いを歩いていると、ブンブンと何やら空気を切る音が聞こえて来た。


ティアリエは索敵と隠形のスキルを最低限のものから警戒行動中のモノへと切り替えて、その音源の方へと足を向ける。


暗視と遠視のスキルを発動させて、その音を発しているだろう存在を遠間から覗き見る。


すると、その先に居たのはシュラに渡された訓練杖を振るうゴドリックであった。


ティアリエは警戒する必要が無い相手だと分かると、警戒レベルを一気に落としてゴドリックの方へと歩み寄る事にした。


ゴドリックは集中して訓練杖を振るっているようで、普通に近付いてくるティアリエに気付く様子も無い。


(凄い集中力だね)


それを見ていたティアリエは素直にそう思いながらどんどん近付いて、


「やあ、ゴドリック君」


ティアリエが声を掛けると、彼は訓練杖を振るう手を止めて構えを解いた。


「ティアリエ殿」


ゴドリックも夜目が利くようで、暗い真夜中の森の中でもティアリエの姿が見えているようであった。


「随分と精が出ているみたいだけど、こんな真夜中に一体全体どうしたんだい?」


「うむ。普段よりも随分と早い時間に寝てしまった為、目が覚めてしまったのである」


「あはは、私と一緒だね!私もゴドリック君の後にシュラ君のマッサージを受けたんだけど、気持ち良過ぎてそのまま寝ちゃったんだよね。そんでもって、さっき目が覚めて目を閉じても眠れそうにないから散歩してたって訳さ」


「成程。ティアリエ殿も手前と同じであったか」


「そうなんだよ。いや、アレはヤバいね。気持ち良過ぎて睡魔に抗えない」


「然り。アレには手前も抗えそうにない」


ティアリエもゴドリックもそれはもう落ちる瞬間は一瞬だった。


それこそ、本人達がいつ寝落ちしたのかすら分からない程に。


「それはそれとして体の方は大丈夫なのかい?」


「うむ。シュラ殿とティアリエ殿のおかげで体調は万全だ。むしろ、今までかつて無い程に快調な程だ」


「正直、快調過ぎて逆に怖いよね」


「うむ。手前もそれは思った」


2人揃って回復が速過ぎて、真夜中の時間に目覚めてしまう程であった。


「随分と真剣な様子で素振りしていたみたいだけど、それもシュラ君の指示かい?」


「いや、シュラ殿には何も言われていない」


「そうなのかい?」


「ああ。手前は何においてもそうだが要領が良い方では無い。故に確かな感覚が残っている間にシュラ殿が教えてくれた動きをしっかりと身に刻んでおきたいから勝手に杖を振るっているだけなのである。才能が無いのであれば量をこなすしか道はあるまい」


「明日もあるんだから程々にするんだよ?それじゃあ、私は散歩の続きをするよ。邪魔して悪かったね」


「手前も小休止を入れようとしていた所だったから気にする必要は無い。無用な心配かもしれないが、夜の森は昼とは違う危険があるのでティアリエ殿もお気をつけて」


「心遣いに感謝するよ。でも、それはゴドリック君にも言える事だよ?集中するのは良いけど、周囲の警戒もしないとダメだよ。私が近付いてくるの分からなかったでしょ?」


「むぅ……その通りであるな。手前には難しいが留意するよう心に留めておく。忠告感謝する」


真面目で不器用で真っ直ぐなゴドリックのその姿に、ティアリエは微笑ましい気持ちを覚えた。


「フフ……じゃあ、またね」


「ああ。また明日」


ブンブンと振るわれるゴドリックの杖の音を背にティアリエは散歩を再開した。


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