鈍痛 1
「どういう手段を使っても良い、とにかく俺の攻撃をひたすら防げ。やる事はそれだけだ。勿論、隙があれば反撃して良い。悪い部分はしっかりと言う。攻撃の仕方は防ぎながら見て覚えてくれ」
とシュラが言ったその直後、空気が変わるのをゴドリックは感じていた。
「先に言っておく、本気で俺を殺すぐらいの意気込みで来い」
その空気の正体は殺気だ。
シュラが本気で殺すつもりはないというのはゴドリックも理解していた。
だが、少しでも実戦に近い感覚を体験させる為に強いの殺気を放っているのだと分かる。
冒険者に襲撃された故郷の中においてもこれ程濃密で鋭い殺気というものは感じられなかった。
それ故に全身の肌がざわつき、頭が自然と危険だと警鐘を掻き鳴らしていた。
「訓練の為の訓練なんてのはクソの役にも立たない。常に実戦を想定して挑む事だ」
静かに告げられるシュラの言葉は間違いなく真剣で、殺すつもりがないと頭で理解していてもゴドリックは背筋にビリビリとした怖気が走るのを止められない程に強烈なものであった。
(だが、恐れてばかりではいられない。手前には守りたい者達が居るのだから)
自らに向けられる殺気に足が震える中、それでもゴドリックは踏み出した。
それよりも恐ろしい事があると知っていたからだ。
護りたい者を失う事。
その怖さを知る故にゴドリックは目の前の恐怖震えながらも、心を揮わせてに懸命に立ち向かう。
その姿を見たシュラは、
「良い覚悟だ」
そう言って『ふっ』と息を吐くように小さく笑う。
その一瞬だけ、殺気が和らぐのを感じたが本当にそれは一瞬だった。
「構えろ。今回は初回だからそのぐらいは待ってやる」
荒くなる息を無理矢理整えるように、意識的に深呼吸をしてゴドリックは訓練杖を構えて目の前に立つシュラを見据えた。
重心を僅かに落としてゴドリックと同じ訓練杖を構えるシュラは自然体で、力みというものが一切感じられない。
その姿だけで圧倒的な技量と経験の差が嫌でも分からされてしまう。
シュラの動きを見落とさないようにしっかりと意識を集中した矢先であった。
ドスッ!!
腹部に衝撃。
そして、その僅かな間を置いて鈍い痛みが走った。
「ぐぅッ……!」
ゴドリックが視線を下げて自らの腹部見ると腹を見事に突かれていた。
(いつの間に動いた!?)
しっかりと見ていた筈だ。
なのに目の前のシュラの動きが全く見えなかった事にゴドリックは困惑する。
「初動が見えなかったろ?突きってのは対人戦において非常に有用だ。モーションが小さい上に点の攻撃だから察知と回避が難しい。相手の呼吸や瞬きのタイミングを見計らえば今のように気取られる事なく攻撃をするなんて事も出来る様になる」
ゴドリックは無意識的にシュラの杖を掴んで反撃しようとしていたが、シュラが杖を引く速度は速く……
その手は空を掴み、シュラは何事も無かったかのように同じ構えをしていた。
言うや否やシュラは再度杖を突き出す。
今度は敢えて隙を突くという事をしていなかったので、その動きはゴドリックにも見えた。
動き自体は見えた。
確かにゴドリックの半分程の速度だった。
だが、鋭く無駄のないモーションによりゴドリックの防御が間に合わないのが確実で、回避しようと動いたが、完全には間に合わず横腹を突かれる結果となる。
「ぐ……!」
腹を突かれた鈍い痛みにゴドリックは呻く。
ATKもゴドリックの半分とはいえ、ダメージは通る。
『修行』スキル効果の確認ついでに、『鑑定』スキルを併用してシュラはダメージ計算式の割り出し等もやっていたので、アバウトではあるがどのぐらいの差ならダメージが通るというのを理解していた。
それを考慮した上のスタータス操作を行っていた。
「体を傾けて衝撃を散らしたか。咄嗟としては良い判断だ」
シュラはそう言いつつも、杖を引いては三連突。
腹部に横一文字を描くように3発がゴドリックの腹に叩き込まれる。
続けざまに腹に攻撃を喰らう事になったゴドリックは更に呻くことになる。




