勉強と探索と鍛錬の日々 11
「ゴドリック、その訓練杖はお前にやるわ。好きに使って良いぞ」
「良いのか。武器に詳しくない手前でも分かるがこの杖の素材はかなり良い物であろう?」
まあ、若い個体だったとはいえ竜の素材だからな。
間違いなく上物ではある。
とはいえ、この世界に第2の生を受けてから人里に出た事が無いのでどれ程の価値があるのかは分からないが、安いという事もなかろう。
「別に構わない。素材なら有り余ってる。同じ物を1000本作ってもまだまだ余る程度にはあるから気にしなくて良い。それにゴドリックも全力で振り回しても壊れない武器の1つくらい持っていた方が良いだろ?」
「ありがとう。大事に使わせてもらう」
「おう。まあ、雑に扱っても簡単に壊れる代物でも無いからあんまり気にする必要性は無いだろうがな」
「そうだとしてもこれだけ上等な素材を粗雑に扱っては罰が当たる」
「良い心掛けだ」
「職人たる者、道具を大事にするのは当たり前である」
「それは道理だね!」
俺達3人揃って、生産スキルと生産職を持っているからな。
方向性は違うかもしれないが職人としての矜持も持ち合わせている。
「さてと、このままだと訓練にならんからステータスはゴドリックの半分ぐらいにしとくか」
俺は補助スキル『修行』を発動させて、HPとMP以外の全ステータスをゴドリックの半分になるように調整する。
『修行』スキルはステータスを減らした割合に応じて経験値の取得率が上昇するというものだ。
風竜を倒して強くなった俺ではあったが、急激に上がった高いステータスをコントロールするのは難しく、魔物を爆散させて素材として使えない状態にしてしまう事が多かった。
それを防ぐためにティアリエに重力増加や拘束等の魔術を使って貰い、敢えて高負荷状態で戦っていたらいつの間にか習得していたスキルであった。
確かに目的は違ったけど、やってることは完全に悟○やベ○ータの高重力修行そのものだったからなぁ……
「こっちの準備は完了だ。ゴドリックの実力を知っておきたいし、好きに打ち込んで来い」
「手前の半分のステータスで大丈夫なのか?」
「半分もあれば十分過ぎるだろうな。多分だが、1/3ぐらいまでなら削っても問題無いとは思うぞ。だが、それだとダメージが殆ど通らないだろう。それはそれで訓練にはならないからな」
「では、遠慮なく行かせて貰う!」
ブンッ!!
杖の端を両手で握り上段から斜めに振り下ろすような一撃が唸りを上げて飛んでくる。
樵の伐採作業の時の動作なのだろう。
実にスムーズな動きだ。
(だが、動きが素直過ぎる)
カッ!
小気味の良い音を発てて、俺の杖がゴドリックの一撃を受け止める。
「ッ!?」
「良い一撃だ。しっかりと腕を絞っているし、腰が入っている。まともに受ければ今の俺のステータスならふっ飛ばされる事は間違いないだろう攻撃だ。しばらくは俺から攻撃するつもりは無いからガンガン来い」
それからしばらくゴドリックの攻撃を受け続けて、様子を見たのだが大上段からの振り下ろしと横薙ぎの払いの攻撃が良い動きをしていたが、突き等のそれ以外の動作は今一つという感じであった。
あと、剣道で言う『小手面』のような連続して攻撃の動作を繋げるといった動きはしてこなかった。
まあ、この辺りはある程度習熟が必要な技術ではあるし仕方ないか。
だが、筋は悪く無さそうな感じで安心した。
何より思いっきりが良いのがグッドだ。
「大体掴めたかな。さて、ゴドリックここから先は辛く厳しい時間になるから覚悟しとけよ」
「分かった」
「どういう手段を使っても良い、とにかく俺の攻撃をひたすら防げ。やる事はそれだけだ。勿論、隙があれば反撃して良い。悪い部分はしっかりと言う。攻撃の仕方は防ぎながら見て覚えてくれ」
さて、ゴドリックにとって辛い訓練の始まりだな。
俺も少し心が痛むがこればかりは心を鬼にして当たるしかあるまい。




