勉強と探索と鍛錬の日々 5
「ほう!この畑は良いね!」
ゴドリックの畑を見たティアリエは目を輝かせていた。
「普通の畑だと思うが?」
ティアリエの反応を見て、ゴドリックはその評価が分からないといった感じだ。
「いや、その普通が良いんだよ。大雨が降ってもキチンと水が流れ出るように作ってあるし、輪作用に畑を区画で分割して使って土壌の環境を維持できるようにしてあるじゃないか。簡単に見えて結構難しいものだからね!」
「確かにそうだな。俺も昔、畑を自分で作ってみて、水捌けで失敗して根腐れして全滅したとかやった覚えがあるしな」
周囲にしっかりと囲いがしてあって害獣対策もしているようであった。
水捌けを改善した後に鹿被害で俺の畑だけ全滅したこともあったな……
両親には『囮になってくれてありがとう!』とからかい交じりに感謝されたが喜べないものだった。
その他諸々畑に関する失敗談に関しては、大概一通り体験したことがある。
実家が農家故の苦い思い出である。
「私も拠点で薬草園をやっているからね!農業やっている人の畑を見るのは勉強になるよ」
ちなみに、ティアリエの薬草園の管理はゴーレムにお任せの自動運用であるので俺達が離れていても問題は無い。
それにあの薬草園は特殊な環境で育つ希少な植物を主に取り扱ってるから一般的とは言い難いからな。
そういう意味では普通の畑というのが勉強になるのだろう。
多分、今回の在庫切れの一件で比較的によく使う一般的な薬草の類の栽培も始めるつもりだろうし。
昨日の素材採取で薬草の種を多めに集めていたし間違いないと思う。
浮遊大陸に関しては、完全にティアリエの独占状態だから土地は有り余ってるしな。
まあ、土地の環境が特殊過ぎるから整えてやる必要性はありそうではあるが、その辺りはティアリエが何とかするだろう。
「では、手前は雑草を抜いているので2人は適当に時間を潰していてほしい」
実家が農家であった俺の目から見れば、ゴドリックの畑はそう大きくないように見えるが個人用でやっているものとしては結構大きい。
この広さ全ての雑草抜きを手作業で行うのであれば、確かに午前中いっぱい使うだろうなと想像に難くないものであった。
日本の農業と違って雑草用の除草剤とか機械とか無いもんな。
「じゃあ、この周辺を探索しつつ素材採取しようか」
「だな」
探索ついでに周辺の危機も探っておこう。
あの騎士達は調査隊だろうが、他にも居ないとは限らない。
むしろ、連絡が途絶えた事で増員される可能性もある。
(あんまり、悠長にしている余裕は無いかもな)
この世界の連絡手段がどうなっているのかは知らないが、伝書鳩のような手段ぐらいは持っていると考えられる。
しばらくはここに向けられる調査隊を全滅させてやれば時間を稼げるだろうが、それを繰り返せば危険地帯と判断されて、大規模な調査隊が組まれてもおかしくない。
「なあ、ティアリエ。カルディア傭兵国って言ったか?その連中はどこからこの森に来ているんだろうな?」
「本国が中央大陸にあるから船で海を渡って来たか、或いは各大陸に連絡拠点を持っているからそこから陸路で来たかのどちらかじゃないかな?」
「そうか。時間がある時に俺達で連中の経路を探ってみないか?」
ルートが分かれば対応はし易くなる。
ここは森の中だ。
罠を仕掛けるにはもってこいの環境だし、ゲリラ戦も可能だ。
下手に罠を仕掛けては高い知能を持つ生命体が居る事が判明してしまうが、どうにも連中はこの森にエルフが居る事を確信している節があったので、割り切った方が良い気がする。
「そうだね。私としてもゴドリック君やミラフィア君に危ない目には遭って欲しくないから大いに賛成だよ」
良かった。
探知及び潜伏能力に長けるティアリエの協力があれば心強い。
「それに連中に一泡吹かせてやるのも一興というものだからね」
付け加える様にそう言ってニヤリと暗い笑みを浮かべるティアリエは教育上よろしく無い類の表情であったが、彼女の経歴を考えれば当然と言えた。




