勉強と探索と鍛錬の日々 1
ゴドリックを鍛えると決めた翌日、太陽が昇るか登らないかのギリギリの時間帯に俺、ティアリエ、ゴドリックの3人は外に出ていた。
取り決め通りゴドリックの魔術訓練を行う為だ。
「ゴドリック君は魔術を既に扱えるって話だったよね?」
「どれも初級の簡単なものばかりではあるが」
「十分さ。下地は既に出来てるって訳だ。神官の扱える魔術は無属性魔術だから魔力の属性変換が無い分楽だよ!」
「え、光属性とかじゃないの!?」
神官だから光とか聖ってイメージなんだけど、凄い意外だ。
「実は無属性なんだよね。魔力の活性で光って見えるから勘違いされがちだけどね!逆に聞きたいんだけど光が治癒に使えると思うかい?」
「言われてみれば確かにそうだな。冬季うつ病とかの一部の精神病とか、しみそばかすの治療に美容目的で使われてたりとか、そういうのに利用されているというのは耳にした覚えはあるが、光が直接的に傷を癒すとかは聞いた覚えが無いな」
「シュラ君シュラ君、チョットその辺りの治療法の話詳しく聞きたいんだけど!?」
「後でな。それに俺は医者だった訳じゃないから、詳しくは知らんがそれでも構わないなら良いぞ」
「約束だよ!」
相変わらずティアリエは未知に対して興味深々なようだ。
彼女に関しては平常運転なのだが……
「はいはい。今はゴドリックの魔術訓練の時間だからな。それを優先な」
ただ、目的を忘れるのは頂けないから、逸れた意識を戻してやる事にする。
「おっと、それもそうだね!脱線して悪かったね、ゴドリック君」
「手前としても興味深い話であった故、気にしていない」
「そう言って貰えると助かるよ。神官職で覚えられる治癒魔術は分類で言えば、身体強化と同じジャンルの魔術なんだよ」
「そうなのか」
「身体強化は筋力の活性化と骨や腱の補強を魔力を用いて行っている訳だけど、治癒魔術は肉体の持つ自然回復力を活性化させている訳なのさ。身体強化と治癒魔術を組み合わせて、動いただけで自壊するレベルの身体強化を行いながら、無理矢理治癒して戦うなんて無茶な事も出来るけど、断固としてオススメはしないね。壮絶な痛みを味わいながら魔術の制御をしなくてはならない狂気の所業だからね。しかも、治癒魔術はそれなりに燃費が悪いからそれだけ魔力も使うしね」
「でも知ってるって事は実際にそれをやった人が居たって事だろ?」
「まあね。一度だけ私の師匠がやって見せてくれたけど、『もう二度とやりたくない』ってボヤいてたなぁ……私も窮地に追いやられて全力で逃走する為に仕方なく使った事があるけど、全身の筋肉がブチブチと千切れながら治って、また千切れるのを繰り返す痛みは悶絶モンだった覚えがあるよ。よく痛みに意識を持っていかれず魔術の制御を手放さずにやれたモンだと逃げ切った後に思ったよ……」
相当辛かったんだろう。
実体験を語るティアリエが物凄く遠い目をしていた。
ありゃ、死にたくなる程辛かった目だわ。
俺も覚えがある。
「「うわぁ……」」
ぶっちゃけ、生々し過ぎて想像したくないなそれ。
それを聞いていた俺とゴドリックは同じ事を想像したみたいで、揃って声を漏らしていた。
「あと、その無茶な技は師匠のお母さんの1人が若い頃に思い付いた技だって言ってたっけ。『こんな尋常じゃない痛みに曝される技を平気な顔して日常的に使いまくってたミリア母さんはやっぱ頭おかしい』とも言ってたよ」
それは実際頭おかしいとしか言えんわな。
だが、気になる部分は別にある。
「お母さんの1人?」
「ああ、シュラ君の住んでた辺りだと違うのかもしれないけど、殆どの国が一夫多妻を認めてるからね。養える余裕がある者なら何人も妻を抱え込むのは別に珍しい事でも無いのさ。魔物も出るし、戦争もある世の中だからね。大人も子供もバンバン死ぬから国としてもバンバン産んでもらわないと困るって訳さ」
(これはハーレム展開もあるんじゃね?)
と異世界ファンタジーの定番に淡い期待が見えてきて、胸が高鳴るのを感じるが問題は……
(今の俺の躰、無機物だからか性欲の類も殆ど無いんだよな)
元々が割と枯れてる感じだったから深くは気にしていないが、若干の寂しさ程度のものはある。
そもそも反応する海綿体自体無いから、生殖機能そのものが存在してない訳だしな。
仮にハーレム展開があったとしても、どうしようも無い悲しさに見舞われるのではなかろうか?
まあ、良いか!
綺麗な姉ちゃんは見てるだけで十分幸せな気持ちにしてくれるからな。
それだけでも十分だろう。
今更そのような事に不安を覚えても仕方ないので、俺は気にしない事にした。
今ある幸せを精一杯噛み締めて生きる。
ただそれだけだ。




