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ゴドリックの護りたい存在(モノ) 1

ゴドリックの家からエルフの少年少女が出ていくのを見送って、


「何というか、口の悪い少年だったね!」


「終始無駄に高圧的だったしな」


俺達はエーゼルという少年の所感を端的に述べていた。


「そう言ってくれるな。エーゼルにも立場というモノがあるのだ。あの歳で重い役目を背負わされながらも懸命に勤めを果たそうと尽力しているだけで、決して根は悪い子ではない」


ミラフィアとエーゼルが立ち去ったので再び獣人語に切り替えたようでゴドリックの言葉が流暢に聞こえる。


「それは節々から伝わって来たね!根がクソ真面目なんだろうね!」


「散々悪態を吐きながらもミラフィアを守ろうとしていたみたいだしな」


でなければあそこまで世話を焼いたりしないだろう。


「なあ、ティアリエ。ミラフィアが里での立場が良くないって言っていた辺りがどうにも気になるんだが、お前はその理由について何か察しがついているんだろう?」


「良く分かったね。まあ、そうだね。確実とは言えないけど十中八九って感じだけどそれでも良いかな?」


「十分だ」


「彼女がハーフエルフだからだろうね」


「……良く分かるモノだ。ティアリエ殿の慧眼に感服する」


「これでも錬金術師だからね。物事をじっくり見て分析と推察をするのは癖みたいなものさ。彼女の右目の赤色はエルフの形質では発現しないものだし、纏っている魔力の質もエルフとしては奇妙な感じだったからね」


そういう理由で当たりを付けていたのか。


普段はアレだが、意外と見てるところは見てるんだなと感心してしまう。


「ハーフエルフだと何か問題があるのか?」


「私達からしたら何もないさ。でも、エルフには面倒な主義が根強く残ってる場合が多いからねぇ……」


「面倒な主義?」


「『純血主義』、他の国でもある程度は見られる傾向なんだけど、エルフはそれが極端な場合が多いんだ。彼らはハーフエルフとハーフエルフを産んだエルフを酷く毛嫌いして、冷遇する傾向が強い。種族的に無駄に寿命が長いものだから昔の因習が抜けにくい体系だしね」


「そういう事か」


老害が残り続ける体質という訳か。


それで、エーゼルはミラフィアを『混じり者』と言っていたのかと納得する。


だが……


「くだらねえな」


正直、そう思わざるを得なかった。


「そうだね。私もそう思うよ」


「手前はエルフのその在り方が理解出来ない。子供は生まれる種族など選べない。なのに何故、純血でないというだけで酷い扱いを受けるのか。親がどのような存在であれ子供に咎など無い。子供は守るもの。そんなの手前らオークでも当たり前。手前は異質にして異形なれど、分け隔てなく育てられた。ミラのような真っ直ぐな子が、純血でないという理由で……本人にはどうしようも出来ない理由で冷遇されることに手前は憤りを禁じ得ない」


哀し気な瞳で語るゴドリックからは、静かな怒気が感じられた。


本気でそう思っているのだろう。


「そうだね。本当にその通りだよ。ただ、彼女の場合それが少し難しいだろうね。引いてる血が問題だ」


「引いてる血?」


「うん。多分だけど彼女は魔人族……多分、夢魔種の血を引いてるね。エルフは遠い昔に魔人族に国を滅ぼされて蹂躙された経歴があるから、魔人族を酷く嫌うんだよね。それこそ、種族的に仲が悪いと言われるドワーフ以上にね」


「他の種族であればまだマシだったって訳か。でも、そんなのゴドリックも言っていたが本人にはどうしようも無いだろ」


俺みたいに転生して、種族変えろとか言えないしな。


「手前も何度ミラを森の外に連れ出そうと思ったか分からない」


「でも、君はそうしない。何故だい?」


「ミラに『森を離れる気は無いのか?』と聞いたことがある。『望むなら手前が全力でそれを叶える』とも言った。だが、ミラは『エーゼルを置いては行けない。わたしが居なくなったら、エーゼルは1人になって色んなモノに押し潰されちゃう』とそう言ったのだ」


と語るゴドリックの背中からはどこか哀愁が漂っていた。


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