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ゴドリックと小さな少女 5

(エルフでも子供は子供なんだな)


ミラフィア達を見ていて、それが分かって不思議な安心感が芽生えた。


「チッ……!」


ミラフィアと自分のやり取りで空気が弛緩したのを感じ取ったのだろう。


エーゼルと呼ばれた少年が苛立たしげに舌打ちする。


「エーゼル、お行儀が悪いよ!」


「ええい、やかましい!いちいち突っかかって来るな、話が進まん!」


「いきなり突っかかって来たのはエーゼルの方でしょー!」


2人が俺達そっちのけでヒートアップしていく中、


「2人共、少シ、落チ着ク。続キ、茶、飲ミナガラ」


いつの間にかお茶を淹れていたゴドリックが、湯気が揺らめくカップを2人の目の前に差し出して静かに告げる。


明らかに慣れた様子である。


この2人の間ではこのようなやり取りは日常茶飯事なんだろうなと窺える姿であった。


道理で落ち着き払っていた訳だと納得してしまう。


少年は目の前に出されたカップを手に取って、中身を一口啜って、


「このままでは埒が明かない。言葉もまともに話せん獣の意見に従うのは癪だが、その方が良さそうだ」


と言って、大きなテーブルの前の背の高い椅子に身軽な動きを見せて飛び乗る形で着席する。


手に持ったカップからは1滴も中の茶が零れていなかったことからかなりのバランス感覚を有していると窺える。


彼は座るなり不機嫌そうな顔で茶を再び啜っていた。


ミラフィアはゴドリックに両脇を抱えられる形で持ち上げられて、ミラフィア専用の背の高さにしてあるであろう椅子に乗せられていた。


それに続いて俺達も着席する事にした。


「それで、お前達は本当にこの森に素材集めに来ただけなのか?」


「そうだよ!」


「この森に我らの集落があると知っていた訳では無いと?」


「そうなるね!何せ適当にぶらり旅をしてるもんだから情報収集なんて一切してないし」


エーゼル少年はじっと見極める様にティアリエを見詰めていたが、しばらくすると俺の方を向いて、


「オイ、そこの鎧!お前達は本当に何も知らずにこの森に来たというのか?」


と聞いて来た。


「間違いなくそうだぞ。植物系の素材が軒並み足りなくなってきたから適当に森に入って素材採取しようと思っていただけだ」


浮遊大陸の位置なんて把握してないから適当に飛び降りた結果、ここに来ただけだしな!


「どちらも嘘を言ってはいないか……」


どうやら彼は何らかの方法で嘘を見抜くことが出来るようだ。


「ホラ、わたしとゴドリックが言った通りじゃない!」


「それとこれとは話が別だ、馬鹿者」


「むー、エーゼルの頭でっかち」


「お花畑よりマシだ」


そんな風に言われたミラフィアはベッとエーゼルに対して舌を出していた。


「良かろう。貴様らが我らの種族に害を成すつもりが無いという事は認めてやる。しかし、森の奥地……川より先には近付いてくれるな。その時は害意の有無に関わらず射殺すとだけ言っておく」


「川より奥に行かなければ良いんだね?バッチリ了解したよ!」


「俺達は基本的に集落とか人が集まる場所に行くつもりは無いから安心してくれ」


「フン……」


俺達の言葉に偽りはないと分かったからか、エーゼルは不機嫌そうに鼻を鳴らせてそっぽを向いた。


「おい、そこの大馬鹿者、戻るぞ」


「エーゼル1人で帰れば良いじゃない」


「貴様1人に戻らせて森で迷われる方が面倒だ。貴様のような混じり者であれ、我は次代の里長として守る義務があるのだ。手間をかけさせるな」


「もー、分かったわよ。帰れば良いんでしょ、帰れば。全く、エーゼルは頑固なんだから」


「既に何度も言っているが、ここには来ないように……」


「そんな横暴は聞けません!聞ーこーえーなーいー!!」


「この……愚か者が」


「ゴドリック、ティアリエ、シュラ!じゃあ、またね!」


そう言いながらミラフィアはエーゼルから逃げる様にトテトテと玄関の方に走って行った。


「おい、黒いの。先程はあの馬鹿者が居たから言わなかったが、貴様から途轍もなく濃い血の匂いがするぞ。何かあったな?」


「カルディア傭兵国、調査兵、来テタ」


「チッ、あの人狩共が!もう嗅ぎ付けて来たか!」


「手前達デ、連中、全滅、シタ」


「フン……礼など言わんぞ。あと、貴様からもあの馬鹿に言っておけ『しばらくの間、不用意に外を出歩くな』と」


「分カッタ」


「チッ……しばらくの間、我の仕事が増えそうだ」


憮然とした様子で呟きながら、エーゼル少年はミラフィアを追うように家の外に出ていくのであった。


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