ゴドリックと小さな少女 4
そんな感じで俺達は森の外の世界に興味深々な様子のミラフィアの質問に答えながら、穏やかな時間を共に過ごしていたのだが……
ゴンゴン!!
玄関の扉を力強く叩く音が聞こえた。
テンポが速くいやに強い叩き方だったので、何か苛立たしげな印象を受けた。
「ミラ、迎エ、来タ」
「えー、もっとシュラやティアリエとお話ししたいのに……」
ミラフィアは明らかに不満顔であった。
ゴドリック達がそんなやり取りをしている間に、
「おい、黒いの!入るぞ!」
と外から声が聞こえて来たと思うと
バンッ!!
ミラフィアが来た時よりも強く扉が壁に叩き付けられる音がした。
そして、ズカズカと苛立ちを感じさせる足音がやってくる。
廊下の向こうから現れたのは、短めの白銀の髪にエメラルドのように鮮やかな緑色の瞳をした13~14歳ぐらいの外見の美しい少年のエルフであった。
よく見るとミラフィアよりも耳が長いのが分かる。
「やはりここに居たか!ここには来るなと何度言えば……」
少年のエルフはミラフィアを見付けると同時に声を張り上げたのだが、俺とティアリエを見た瞬間に口を閉ざした。
「見ない顔があるな。何者だ?」
そして、鋭い眼差しを向けて問うてきた。
彼の腰の裏側に延ばされた手は短剣をスグに取れる位置だ。
明らかに警戒されている。
まあ、当然の反応だ。
「私はティアリエ・テークシス。旅の錬金術師さ!」
「俺はシュラ・ヴァンドゥ。ティアリエの守護騎士をしている」
ティアリエが自己紹介を始めたので、俺も倣う事にする。
「その錬金術師と守護騎士がこの森に一体何の用だ?」
「私達は単に素材集めに来ただけなんだ。君達に手出しするつもりは無いからそう警戒しないで欲しいな」
「フン……口ではどうとでも言える。どちらも素顔を曝さない見るからに怪しい風体をしおって」
「おっと、そういえばフードを被りっぱなしだったのスッカリ忘れてたよ」
ティアリエはそう言って、サッと外套のフードを頭から脱いでその素顔を出す。
「わぁー、綺麗……」
ティアリエの素顔とキラキラとした煌めきを見せる水色と翠色の髪を見たミラフィアは目を輝かせていた。
「悪いが俺の場合、兜も含めて鎧全てどうやっても外すことが出来ないから冗談抜きでどうしようもないんだ」
着込んでる訳じゃなくて本体そのものだからなぁ……
見た目フルアーマーなんだけど、実は素顔曝しているという分かり難い仕様なんです。
「外せないだと?ハッ……冗談も休み休みにしろ。漂う魔力に穢れを感じられん。呪装具でも無いのにそれは無かろう。何か顔を曝せない疾しい事情でもあるのではないか?」
どうやらこの少年は魔力の良し悪しを感じ取れるみたいだ。
そういや、レベリング中にティアリエが『魔力の扱いに長ける種族は基本的に周囲に漂う魔力の気配に鋭敏な感覚を備えている』とか言ってた気がする。
(本当なんだけどなー)
しかし、どうしたものか。
状況はどう見ても良くない流れになってるよな、コレ。
「いきなり、失礼な事ばかり言っちゃダメ!!ティアリエもシュラも悪い人じゃないよ!」
「ウム。2人共、良キ者。手前モ保証スル」
俺が思い悩んで頭を捻っていると、ミラフィアとゴドリックが擁護してくれた。
凄く有り難い。
「貴様やそこの黒いのは騙されている危険性が否めん。貴様らは能天気が過ぎる故に参考にならん」
(確かにこの2人は善良過ぎるところがあるから、そう思われても仕方ないかも)
思わず、内心で少年に同意してしまった。
「エーゼルの馬鹿!堅物!石頭!将来ハゲ!」
エーゼルの言葉を聞いたミラフィアはぷくっと頬を膨らませて不満を露わに、思い切り声を張り上げて罵倒していた。
「誰の将来がハゲだ!?勝手に決めるな!今それは関係あるまい!あと、我の名を明かしおって……この大馬鹿者が!!」
ミラフィアの罵倒を耳にしたエーゼルと呼ばれた少年は反射的にだろう、ミラフィアに反論して盛大に悪態を吐いていた。
何か、そんなやり取りを見て微笑ましく思ってしまったのは多分、俺だけではあるまい。




