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変わり者の豚鬼種(オーク) 5

「うーん、どれも丁寧に作られていて美味しいね!」


「それは良かった」


ニコニコと満面の笑みを浮かべるティアリエに言われて、ゴドリックははにかんだ笑顔を見せていた。


「少し気になったんだけど、お肉が全然無いね。あ、別に文句があるとかそういう訳じゃないんだ。確か、豚鬼種(オーク)に限らず鬼人族は雑食だけど肉食寄りな方を好む傾向にあるから気になってね」


実は俺も気になっていた。


肉は目の前の湖で取れたであろう魚のみで他の食材は全て植物由来だ。


「恥ずかしながら、手前は肉が食えないのだ。正確に言えば、食えない訳では無いが少量でも胃もたれを起こしてしまう。どうやら肉の脂と徹底的に相性が悪いみたいでギリギリ食せるのは魚2匹分といった所だ」


「それは珍しいね。集落じゃ苦労したんじゃないかい?」


「うむ。集落の皆は肉が大好きであったので本当に大変だった。何度胃もたれで寝込む羽目になったか正直、覚えておらん」


うわぁ……それは本当に大変だ。


想像しただけで嫌気が差しそうだ。


「肉を食おうとしない手前は変な目で見られたが、皆としては食える肉が増えるので喜んでいたな。だが、それ故に必死で料理を覚えた。肉を食わずとも生きて行けるようにする為に」


と語るゴドリックは実に切実な表情をしていた。


それでこの腕前と言う訳か。


必要は成長の母とも言うし、納得である。


俺も35歳を越えた辺りから胃が油に弱くなって、ケ○タッキーは1ピースが限度ぐらいになった覚えがあるからその辛さは理解できる。


そうなるとCMで霜降りとかサーロインとか見ても惹かれなくなって、逆に熟成赤身肉とかに惹かれるようになるからなぁ……


そんな中年の食事情を思い出して、しみじみと若干悲しい気分になる。


菜食主義という訳では無いが、極力肉を食おうとしないオーク。


これまた変わってると言えよう。


「ふーむ、鬼人族としては本当に珍しいね。ゴドリック君は変異種みたいだから何とも言い難いんだけど、身体機能が強くなってる代わりに内部機能の一部が弱くなったとかはあるかもしれないね」


「ふむ……手前としてはそれが当たり前だったので原因を考えた事は無かったが、言われてみればそうかもしれないと感じる部分もあるな」


「時間とゴドリック君の承諾が在ったら是非ともその辺りを調べてみたいね!それはさて置いて、美味しい料理のお礼に私特製の消化を助ける脂特化の胃薬を進呈しよう!特化してる分、効き目は保証するから、胃もたれがキツイ時やどうしても肉を食べないといけない事態になった時にでも使ってくれたまえ!」


ティアリエはそう言って、空間袋から大き目のビンを取り出してテーブルの上に置く。


ビンには錠剤がみっちりと入っていて、少なくとも300粒以上はあるのは確実だ。


「重ね重ね感謝する。手前は薬には明るくないので非常に助かる」


「気にしなくて良いよ。流石にお肉が食べられないってのは可哀想だからね!」


「うむ。味で言えば手前としても肉は好きなのだ。ただ、それを体が受け付けないというだけで……」


何か、聞いててゴドリックの苦労を思うと涙出そうになるわ。


この躰は涙とか出ないんだけど、その辺りは気にしない方向で。


「それと、これに関しては答えたくなかったら答えなくて良い。君は今1人のようだけどどうしたんだい?」


「おい、ティアリエ」


その辺りはかなりデリケートな問題じゃないのか?


俺も気にはなっていたが聞かなかった部分だ。


「シュラ殿、気遣ってくれるのは有り難いが当然の疑問だろう。手前としては構わないので気にする必要は無い。手前の故郷の集落はアドル共和国の冒険者による襲撃を受けて滅びた。手前らにとっては別段珍しい話でも無い」


ティアリエの故郷も襲撃を受けて滅びたと言っていた。


確かにこの世界では珍しい話では無いのかもしれない。


だが、それでも俺には聞いてて胸が痛くなる話であった。


「手前は先に告げた特殊能力のおかげで、焼けて崩れ落ちた家屋の倒壊に巻き込まれても生き残れた。ただ、それだけなのだ」


「恨みとかは無いのか?」


「手前らだって狩りをする。であるならば狩られる事もあって当然であろう。今回は手前らが狩られる側であったというだけである。手前らはその覚悟を持って生きる様にと教えられた。生き残った手前に出来るのは狩られた(ともがら)達の分まで悔いなく生きる事だけである」


非情な世界における生死感なのだろう。


そう語るゴドリックの瞳には暗い感情の陰りは一切見られなかった。


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