変わり者の豚鬼種(オーク) 2
「気にしなくて良いよ!私は個人的にカルディア傭兵国の連中が嫌いなだけだからね!」
まあ、家族やら知り合いを連れ去られて故郷が滅びていれば、好きになる理由は無いよな。
「俺も連中とアンタのやり取りを見ていて、腹に据えかねただけだから右に同じだな」
正直、連中の頭を爆散させて胸がスッとしたぐらいである。
「ところで、君はどの言語なら堪能に話せるかな?私は殆どの種族の言語は話せるから安心して良いよ」
「獣人語カ鬼人語ナラ、大丈夫ダ」
「じゃあ、獣人語でお願いするよ。シュラ君は鬼人語を知らないからね。まあ、種族言語については追々教えるつもりだったから仕方ないんだけどね」
え、俺の言語教育まだあるんですか!?
うっわ、ヤダー(真剣)。
共通語と各大国で使われている言語覚えるだけでなく、各種族の言語もあるとか……
また、あのスパルタ言語学の日々が始まってしまうのか?
うっ、頭がッ……!!
「分かった。手前の名はゴドリック・オークロットという」
黒いオーク……
ゴドリックは使用言語を獣人語に切り替えたようで、先程のような片言ではなくしっかりとした言葉が聞こえた。
獣人語はケネス獣皇国で主言語として使われているので、俺のスキルにも在る。
スキルがバッチリと作用して問題無く聞き取れている。
何か、想像してたよりずっとカッコいい名前でした。
正直、羨ましい。
「私はティアリエ・テークシス。旅の錬金術師さ!」
「俺はシュラ・ヴァンドゥ。ティアリエの守護騎士をしている」
職業に守護騎士とかは無いんだが、一応騎士系の職には就いているし良いだろう。
「危なき所を助けて頂き真に感謝する」
一般的に物語に登場するオークは本能に忠実な乱暴者だが、目の前に居るゴドリックはその逆であった。
とても理知的だ。
「聞きたいんだけど、君はどうしてあの騎士達と戦っていたんだい?君は多分だけどやり過ごすって選択肢も取れた筈だ。単体としては勝っていても、あの人数相手だと最終的には負けるとも分かっていたんじゃないのかい?」
「貴方の言う通りである。手前は自身が負ける事を承知で連中と戦っていた」
「それは何故?」
「……連中も言っていたが、この森の奥地にはエルフの隠れ集落がある。そこに手前が守りたい者達が居る。故に命を賭して戦っていた。手前が倒れる事になっても頭数を減らせばそれだけ危険性は減らせる」
とティアリエに答えるゴドリックは真剣であった。
その力強い眼差しは正に漢の眼であった。
「悪いが命を救って貰った恩人に対してもエルフの集落の場所を教える事は出来ない」
「そこは別に構わないよ。私達は素材採取に来ただけだし、エルフと関わるつもりは一切無いからね!」
というか、基本的に人が集まる場所に行くつもり自体無いからな、俺達は。
「そうか。良かった。エルフが目的であったなら手前は恩人相手に牙を向けなければならない所であった。それ以外であれば手前は恩義に報いたいと思っている」
「じゃあ、この森の事を教えて貰えないかな。どこでどんな植物が取れるとか、どんな魔物がいるのかとかその程度で良いから」
「分かった。手前の知る範囲で森の中を案内しよう。食せる植物や木の実の生る場所についてであれば詳しい自信がある。その前に騎士達の死体を処理しておきたい。敵なれど死なば等しく骸である。放置して不死者になられても困る故に」
この世界では死体を放置してると、周辺に彷徨う魂が中に入り込み動く死体……
グールやゾンビと言われる不死者になるみたいで、死体は燃やすなり、バラバラに刻むなりして動けない状態にするのが常識であるらしい。
「それなら、俺がやっておこう」
森の中で燃やすのはどうかと思うし、切り刻んで埋めるのも手間だ。
俺なら死体であるならば『物質貯蔵』で内部保存が可能だ。
そして、内部保存してしまえば死体を『組成操作』で原子単位に分解して、単体の塊として『形状操作』で纏めておけば良いだけの話だ。
「剣やら鎧やらの装備はどうする?」
「好きにして貰っても構わない。手前の体格では防具は装備出来ぬし、剣も直ぐに圧し折ってしまう故に必要ない」
「了解。じゃあ、装備も含めて回収しておこう」
装備も適当に分解してインゴットにしておけば何かしらの使い道があるだろう。
そう判断して俺は、総勢15名にもなる騎士の死体をサクサクと回収しておいた。




