変わり者の豚鬼種(オーク) 1
突然の出来事に驚いたのは何も騎士達だけでは無かった。
「何ダ……?」
傷付き膝を着いていた黒いオークも困惑している様子であった。
パシャリ。
困惑の最中にあるオークの頭の上から何かの液体が振り掛けられる。
「ッ!?」
予期せぬ事態にオークの巨体がビクリと震える。
「傷、癒エテク……」
黒いオークの身体からシュウシュウと湯気が上がり、全身に刻まれた切り傷がみるみる塞がっていく。
「少しだけじっとしてて貰えるかな。私特製のポーションで外傷を治してるから」
黒いオークの目の前で『光波遮断』を解除して姿を現したティアリエが告げる。
「子供?」
ティアリエを見た黒いオークはつい思った事が漏れたのだろう。
「確かに私は小さいけど子供じゃないよ!」
それを聞いたティアリエはプリプリと反論した。
その姿は正直子供っぽいと思ってしまうが、言ったら確実に火に油を注ぐ結果になる事が明らかなので言わない。
「ム……ソレハ、失敬シタ」
黒いオークは素直に頭を下げて謝っていた。
まあ、ティアリエは小さいから子供に見えても仕方あるまい。
膝着いてる状態のオークよりも背が低いからな。
どうやらこの黒いオーク、戦闘中は正に狂戦士といった有様だったが、実はかなり知的だったみたいだ。
「分かれば宜しい。はい、もう動いても大丈夫だろうからこれ飲んで」
黒いオークの傷の様子を見て、ティアリエは鞄から緑色の半透明な液体が入った三角フラスコみたいなビンを取り出して掲げる。
「コレハ?」
「造血剤入りの内服用ポーション。外傷は塞いだけど、流れ出た血は戻らないからね」
黒いオークはじっとティアリエを見詰めて、
「……有リ難ク頂コウ」
害意がないと判断したのかそう言って、ティアリエの差し出したポーションのビンを受け取ってその中身を飲み乾した。
「苦イ……」
ティアリエ特製の内服用ポーション。
効き目は保証するが味は昔のクソ苦い青汁みたいな感じの『良薬は口に苦し』の典型パターンな回復薬である。
ポ○モンだったら確実になつき度が下がるであろう一品だ。
ちなみに俺は食事を必要としない躰ではあるが、別に食事が出来ない訳でも無いし、味覚もちゃんとある。
その辺りの機能はティアリエが搭載してくれていた。
そのような機能を搭載した理由としては『食事が出来ないって生きてる中の幸福が減っちゃうじゃないか!そんな可哀想な事、私には出来ない!』との事であった。
「ダガ悪クナイ味ダ」
マジか!?
凄いなオーク!
「どうやら伏兵の類はいないようだね。シュラ君出てきて良いよ」
オークの治療をしながら、周辺の探知を行っていたティアリエに言われて、俺は繁みから立ち上がりティアリエの少し後ろまで歩み寄った。
「モウ1人居タノカ……気付カナカッタ」
「私程じゃないにしてもシュラ君も気配を隠すのが上手いからね」
元々、自衛隊でその手の訓練はしてたし、今の躰は呼吸も無ければ、心臓の鼓動も無いし、体温も無い。
隠蔽系のスキルが無くとも感知するには難しい条件が揃ってるからな。
「手前、共通語、上手クナシ。伝ワル、不安ダガ、助力ニ、感謝スル」
俺とティアリエの目の前に居る黒いオークは体力も回復してきたのか、一度立ち上がって姿勢を正すと、深く頭を下げて片言ながらも真剣に礼を述べていた。
そんな姿を見て、『騎士達の方に加勢しなくて良かった』と本気で思ったものであった。




