騎士隊と豚鬼種(オーク)
音を追って俺達が森の中を慎重に進んで行くと……
10人以上鎧を纏った騎士達と1体の黒いオークが戦っていた。
(オークと騎士だと!?)
その光景を目の当たりにして俺は目を見張る。
(女騎士、女騎士はいませんか!?)
異世界ファンタジーの鉄板『くっころ』展開カモン!
期待に胸を膨らませてみるが、見た所騎士達は全員男のようで女騎士はいなかった。
非常に残念だ。
騎士達が対峙するオークは巨大で上背が3mは確実にあり、ボディービルダーも真っ青なゴリゴリの筋肉をしていて、下っ腹が出てるとかそんなのは一切無い。
騎士達は既に4名の犠牲者が出ているようで、今立っているのは11人だ。
分隊規模だ。
「(ティアリエ、どうする?騎士達に加勢するか?)」
個体としてはオークの方が強いみたいだが、人数差という強みを生かして騎士達は立ち回っているのでこのまま放置しても騎士達が勝つのは確実だろうが、その分犠牲も多くなるだろう。
「(シュラ君、少し待って。あの騎士達……多分、カルディア傭兵国の騎士だ)」
「(カルディア傭兵国?)」
聞き覚えの無い国名が出て来た。
聞き覚えが無いという事は大国ではないのだろうが、ここで国名を上げるという事は何かあるのだろう。
「(カルディア傭兵国は中央大陸に存在する小国なんだけど、『傭兵国』と言うだけあって戦争時の兵隊の貸出を生業にしている国なのさ。だけど、この国はガルドセイン連合商国と繋がっていてね。裏で奴隷売買もやっているのさ。こんな戦争のせの字も無いような辺境にカルディア傭兵国の連中が居るということは……)」
「(高値で売れそうな種族の所在が明らかになったと見るべきか?)」
「(そうなるね。実際、私の故郷もカルディア傭兵国の連中に襲われて滅びたし)」
ティアリエにとっては因縁の相手という事になるのか。
俺とティアリエがそのような話をしている間に状況は動いていた。
「グゥッ……!」
黒いオークは善戦していたが、人数差に押し切られて膝を着いていた。
だが、立っている騎士達も5人で全員が大なり小なり怪我をしている状況だ。
他の騎士達は既に死亡しているのが明らかだ。
「クソが!森人種の集落がここにあるという情報を聞いて調査に来て、豚鬼種の変異種に襲撃されるとかついてない……」
「分隊長、このオークどうします?オークとはいえ変異種です。それなりに高く売れそうですが」
「バカ言え!この人数でどう運ぶつもりだ!?回復して暴れられたら手が付けられねえぞ。散々な目に遭わされたし殺すに決まってんだろ!」
生き残った騎士達は聞いていて非常に胸糞が悪くなる会話をしていた。
「だが、その前に……おい、汚らわしい豚野郎、お前この森の中にあるという森人種の隠れ集落がどこにあるか知ってるんじゃないか?」
「貴様ラニ、語ル事、何一ツナイ」
ガッ!!
分隊長と呼ばれた男が黒いオークの顔面を殴りつけた。
「おいおい、知ってるなら早く話した方が良いぜ?さっさと楽にしてやるからよ」
「クッ……殺セ」
その台詞、お前が言うんかーい!!?
男騎士×オーク(♂)ってどんだけマニアックなのさ!?
確かに『くっころ』展開を求めたけどリバじゃない。
というか、そもそも女騎士がいないしその時点でダメだわ。
「(シュラ君、あのオークを助けよう)」
「(了解した。正直、あの連中色々と気に食わない)」
人を喰い物にしている連中というのは見ていて気持ちの良いものではない。
「チッ……心を折ってやる時間はねぇか」
騎士は黒いオークのその瞳を見て、強がりでも何でもない強い意思を感じたようで、腹立たしげに舌打ちする。
「じゃ、あばよ豚野郎」
そして、剣を振り上げ……
ドバンッ!!
頭が爆散した。
何の前触れも無く分隊長の頭が爆散して、ビチャビチャと赤黒い液体を撒き散らした。
「「「「ひぃッ……!!?」」」」
突然の出来事に部下であろう4人の顔が引き攣り、腰を抜かして尻餅をついた。
その次の瞬間にはその4人も突如頭が爆散して分隊長と同じ末路を辿る事になった。
何が起こったのかと言えば、俺が石を投げて連中の頭に直撃させた。
ただそれだけなのであるが、ティアリエが『火竜並』と評したATKの高さによってまるで対物ライフルで頭を撃ち抜いたような有様になってしまった。




