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旅立ち 3

「この辺りには目ぼしい素材はあるのか?」


「この辺りは私も来たことが無いから何とも言えないんだけど、取り敢えず森に行こう!浮遊大陸は環境が特殊過ぎて一般的な植物や菌類が生息してないからね!」


エベレストとかよりも遥かに高い位置を飛んでるからな、浮遊大陸。


当然空気も半端なく薄い。


ティアリエは鳥の獣人なので気嚢(きのう)が体内に存在するらしく、空気が薄い環境でも問題無く生活できるというだけで、大抵の種族は意識を保つことすら困難な過酷な環境だったりする。


地球でならそんな高度であれば常時氷点下の極寒と化しているのだろうが、浮遊大陸は空を巡る自由魔力素(エーテル)が集中する流れの中を漂っているので、活性化した自由魔力素(エーテル)の放熱によって0~15℃ぐらいの気温で安定しているとの事であった。


空気が薄く、自由魔力素(エーテル)が濃い特殊環境なので地上とは全く異なる生態系となっているのだ。


「森なら確かここから見て北西の方に大きいのが見えたな。取り敢えず、そこに向かってみるか」


「そうだね!少しこの草原も調べておきたいからゆっくり歩きながら行こうか!」


「了解」


時間はあるのだし、急ぐ必要性もないので気楽なものである。


ティアリエはメモを取り出して、植生や気候、地形といった様々な情報を書き込み始める。


その間俺は周辺の警戒をしておく。


元々はそれも込みでティアリエ1人でやっていたみたいだから、俺が警戒する必要性は少ないのだろうが性分というものであった。


そういった記録を取るのは彼女の趣味という事であった。


彼女がこれまでに取って来た記録を幾つか見せて貰った事があるが、人によっては大枚をはたいてでも購入したいと思えるような詳細な記録が残されていた。


普段は色々とアレなのだが、探究者であり、研究者でもあるんだよなティアリエは。


彼女の残す記録は有益なので、初めて行った場所等では時間を取られても気にならないというものだ。


情報の重要性を理解していれば尚更である。


今俺達が居る草原の草は足首に届かないぐらいの長さしかないので見渡しが良い。


目的地の森までは5~6kmぐらいはあるのだが、その境界がバッチリ見えるぐらいに視界良好である。


まあ、今の俺の身長が前世よりも随分と高いというのもあるだろうが。


前世における俺の身長は176cmと割と一般的な感じであったが、今の俺の身長は250cmとかなり大柄だ。


ティアリエは随分と大きめに俺の躰を造ってくれたものだが、竜とか巨人とかが存在する世界では俺ぐらいの大きさは別段珍しくないと言っていた。


まあ、図体がデカいからこそ乗り物に変形して尚ティアリエを余裕で乗せられるだけの体積があるのだ。


別に文句は無いのだが、ティアリエとの身長差が1m近いので、冗談抜きでティアリエを子供のように感じてしまうのが困りものであった。



しばらくして、満足いくだけの記録が取れたようで、ティアリエは


「お待たせ!さあ、森へ向かおうか!」


と言いながら、鞄から焦げ茶色の使い古されたローブを取り出して、頭の上からそれをズッポリと被った。


「そのローブは?浮遊大陸では使って無かったよな?」


「今は確認できないけど、ここは地上だからね。人がいないとも限らないから翼とか目立つ特徴は隠しておいた方が良いからね。まあ、念の為ってヤツさ!」


(成程な。そういう訳か)


狙われ易い彼女としては当然の措置である。


俺が納得した様子を見て、ティアリエは目的地の方へと歩き始めた。


俺はティアリエの少し後ろに続いて歩いた。



当初の目的地であった森の手前まで何の問題も無く俺達は辿り着いた。


俺達が森の中へ足を踏み入れようとしたその時であった。


『グルォォオオオオッッ!!!』


森の奥から空気を震わす程の大きな獣の咆哮のような声が響いた。


そして、それに続くようにガンガンと金属同士がぶつかり合う甲高い音とズンと地面が震える鈍い音が聞こえて来る。


「これはどうやら森の中で何者かが森の中で戦闘をしているみたいだね」


「どうする?」


「隠れながら様子を見てみよう。何が居るにせよ知っておかないといけないだろうし」


「分かった」


ティアリエと俺は隠蔽系のスキルを発動させて、森の中へと入り音のする方へと足を進めた。


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