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異世界転生開幕

この世界の地形と大国の位置を理解した所で、


「ちなみにここは何処に当たるんだ?」


と聞いたのだが……


「何処にも当たらないわ」


訳の分からない返答が返って来た。


「何?」


「実は地図には載っていない、知られていない第6の大陸があるの」


「それがここだと?」


「その通り!雲の遥か上を特定の座標を持たず気流に流されながら漂う浮遊大陸!通常の手段だと来れるような場所じゃないから私みたいなお尋ね者でも人目を気にせず悠々と暮らせるのさ!」


ラピ○タとか天空都市エ○ザイアみたいなものか。


「お尋ね者って、何かやらかしたのか?」


「失敬な!人様に恨まれるようなことはしてないよ!多分!」


「『多分』って不安になる言葉が最後に付いてたんですけど!?」


「まあ、そこは深く気にしない。私ってかなりやり手の錬金術師だからその才能を妬む人も少なからず居るのさ!」


「ふーん」


ティアリエが本当にやり手なのかどうかは知らないが、特に気にすることでも無かった。


「あ、その反応は信じてないな!」


「いや、ティアリエがやり手なのかどうかとか心底どうでも良いし」


「関心持たれないのも何か寂しい!」


初めて声を聞いた時から思っていたが、騒がしいヤツだ。


そして、寂しがり屋の構ってちゃんという地味に面倒なタイプと見た。


「まあ、私が何者であれ種族的に色んな方面から狙われるんだけどね」


「どういう事だ?」


「翼人種の中でも私の種族……翠翼(すいよく)種は絶滅寸前の希少種族なのさ。見ての通り翼人種の中でも特に美しい翼や羽根を有してるから芸術的な価値もあるし、羽根は魔導触媒としても優秀な上に血はとある驚異的な伝染病に対する特効薬の材料にもなる。そんな訳だから何もしてなくても狙われるのさ」


「絶滅寸前ということは……」


「うん。元々そう多い種族でも無かった上に乱獲されたからね。今の地上で純血の同族は相当少ないんじゃないかな?数が減って尚更価値が上がってるから尚更狙われるんだよね。それこそ私が小さい頃に集落が襲われて両親とか親しい人達が奴隷商に捕まったりしたし」


心が痛くなる話だ。


「とまあ、そんな訳もあって私は君に護って貰いたい訳なのさ。獣人とはいえ、翼人種は普通に弱い部類の種族だからね」


「ティアリア、『護って貰いたい』と言ったが具体的には何をすれば良いんだ?」


正直、先程まで乗り気ではなかったのだが、不遇な境遇の中でも明るく笑うこの少女を見ていたら力になってやりたいと思った。


「それは単純。私の周囲に近付く脅威を物理的に追い払ってくれればそれで良いよ!」


(えら)く端的ではあるが分かった。君は俺の今生における産みの母に当たる訳だし、家族として君を護ると誓おう」


産まれからして、孤独を強いられる命運を背負わされた少女に寄り添うと決めてしまった単純なバカがここに1人居た。


それに頭の悪い俺でも何も分からないまま手さぐりで理の違う世界を生きるのは難しいと分かる。


彼女には色々と教えて貰わねばならない立場なのだから、少なくともその恩義の分ぐらいは彼女の力になってやらねばなるまい。


要はそれだけの話だ。


「家族……家族か!そうだね、私は君の製造者な訳だし、母親と言えなくもないね!これから宜しくね、シュラ君!」


「ああ、宜しく頼む」


(俺に何が出来るかは分からないが、俺みたいなろくでなしでも何か力になれる事が1つぐらいはあるだろう)


そんな事を思いながら、心から嬉しそうな笑顔を浮かべて手を伸ばすティアリアに、ギギギとぎこちない緩慢な動作ながらも俺も手を伸ばして、巨大な俺の指先をその小さな手が包む様に握った。


そうして俺の異世界転生が幕を開けたのであった。

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