現状把握(世界)
ティアリエの話は脱力させられたのものだが、理解出来ない訳では無かった。
元々高専卒でロボコンにも携わっていた俺としてはAIの学習機能とかフィードバックの難しさを幾度なく経験している。
プリセットがある程度整っていたとしても物凄い面倒くさいのだこれが。
人間などの動物は本能的に出来る事を体に刻み込まれているからある程度放置しても勝手に学習するが機械は違う。
何がダメだったのか、どうダメだったのかという情報を逐一教え込まないといけないのだ。
ティアリエが言っていた『人造魂』だったか?
それは恐らく、赤ん坊みたいな無垢な魂を入れるという事なのだろうと察する事が出来た。
こんな訳分からん体に真っ新な魂放り込もうものならそりゃ莫大な時間と労力が掛かるだろうなと想像に難くない。
面倒に思っても仕方ないと思ってしまった。
それはそれとして、
「そうか。俺は死んだのか」
改めて俺は自らの死を自覚させられた。
「まあ、ここにいる以上君が元々居た世界ではそうなるね」
「自覚したら色々思い出して来たわ。確かに俺は死んだみたいだな」
仕事の帰り道に大きな地震が起こり、道路が崩落して車ごと土砂に飲み込まれたのだ。
一瞬で車ごとペシャンコにされて圧死したから、痛みを感じる間もなく逝って今まで気付けなかったという事なのだろう。
「慰めにはならないだろうけど、一度死んだとはいえ今の君はここでこうして生きている訳だから私と一緒にそれを謳歌しようではないか」
「ふむ、そうだな。そうさせて貰おう」
死やら人外転生を悔やむよりもその方が建設的だろう。
なった以上はどうにもならん事だしな。
「聞きたい事は他にはないかい?」
「この世界について聞かせて欲しい。君も知っての通り俺は異界の者だ。この世界について何も分からない」
「了解だよ!替わりに君の世界の話も聞かせて欲しいな!」
「それぐらいなら構わない」
とは言っても俺は大して自分の世界について知っている訳では無いんだけどな。
生まれ育った日本の事ですらどれだけ語れるか分からないが、努力はするつもりだ。
「先ずはこの世界『フラクティス』の現在の情勢についてザラッとした部分を語ろうか」
この世界はフラクティスというのか。
「正直に言おう。ぶっちゃけ、この世界は平和とは程遠いね!色んな国や地域で戦争やら抗争はしてるし、外に出れば魔獣とか盗賊も出るからね」
テェアリエの発した単語を拾い上げてみて、『錬金術』やら『魔力』やら『召喚』やらに続いて『魔獣』と来たか。
もう、これはR18指定系のダークファンタジー異世界確定かな?
「ま、大きな国はどこも偏った主義を掲げてるから仲が良いとは言えないのは当然なんだけどね!」
偏った主義ねぇ……
俺達の世界でも国毎に特色ってあるからな。
「大体の国は種族主義を掲げてるね!自分の種族こそが至高なんてアホみたいだよね?それで長年戦争してるってんだから良く飽きないものだと呆れを通り越して寒心しちゃうね」
良い笑顔でバッサリ言う。
まあ、俺も下らないとは思う。
「ガルドセイン連合商国の掲げる『利益主義』、ディゼフィル魔術王国の掲げる『魔力主義』、フィオナ教国の掲げる『信仰主義』、カルヴァロス帝国の掲げる『実力主義』辺りは種族関係無いけど、これらの国もやっぱどこかしらの国と戦争してるしね」
どうやら、この世界の国家の関係性はあまり宜しくないものらしい。
「軽くだけどこの世界の地理と8大大国の位置関係を押さえておこうか!」
「宜しく頼む」
俺が頼むとティアリエは白衣の内側に手を入れて、地図を取り出して広げて見せた。
「フラクティスには5つの大陸があって、その位置関係からそれぞれ北大陸、東大陸、西大陸、南大陸、中央大陸って呼ばれてるね」
成程、分かり易い。
翼を広げた鳥のような形をした中央大陸を中心に東西南北に海を隔てて大陸がある感じだ。
「一番大きな北大陸に『実力主義』のカルヴァロス帝国。西大陸に『獣人主義』のケネス獣皇国と『普人主義』のアドル共和国。東大陸に『信仰主義』のフィオナ教国と『聖樹主義』のナトゥーラ森人国。南大陸に『利益主義』のガルドセイン連合商国と『職人主義』のドーヴェルク鉱人国。中央大陸に『魔力主義』のディゼフィル魔術王国がそれぞれ存在するわ!」
ティアリエが指で地図を差しながら言ってくれたので、大体の位置関係は把握できた。




