初めての戦闘 4
2回目のブレスを受けて立ち上がった時に密かに『心眼』スキルを発動させて、急所の位置は確認している。
狙うは目と目の間、人間で言う眉間の辺り。
キィィィィ……!!
目には見えない遥か遠くから、超高速で空気を切り裂きながらこちらに向かって落ちて来るであろう風竜が残した舞い上がる時の音が今更になって遅れて聞こえてくる。
流石異世界、生身で平気で音速を超えてくる。
それでいて無事なのだから恐ろしい。
昔読んだ『空○科学読本』で、マッハ5で飛行するウ○トラマンは衝撃波で首がもげるという考察を思い出してしまう。
風竜は今、頭を下にしてこちらに全速力で突っ込んで来ている。
心を風の無い水面のように落ち着かせて、精神を研ぎ澄ませる。
(タイミングを合わせる……3、2、1、今!!)
頭に浮かび上がる『弾道計算』のビジョンに合わせて、『騎士の逆襲』を発動。
そして、それを『格闘』スキルのDFE無視効化を持つ戦技『正拳突き』に乗せて放つ。
技を借りるぜ、ハ○サン!!
どうせ見える速度では無いのだ。
見るだけ無駄なので俺は『弾道計算』のビジョンを信じて拳を放ってその場に置いておくだけで良い。
ゴッッ……!!!!
俺が拳を繰り出した瞬間、気が付けば激しい衝撃。
天空の彼方から風竜の速度を全開にして重力を味方にした流星の如き竜墜。
その衝撃で俺は宙に飛ばされていた。
当然だ。
攻撃を当てたからといって相手のエネルギーを打ち消せるわけでは無いのだから。
むしろ、その衝撃をモロに受ける訳なのである。
反転する視界の中で先程まで俺が立っていたであろう位置にクレーターが生み出されており、土煙が激しく舞い上がるのが見える。
その土煙の中心には巨大な影。
ドサッ!!
強い衝撃と共に地面に叩き付けられながらも視線を切らずに見続ける。
段々と土煙は風に流されて晴れてきて、俺の目に映ったのは……
それこそ『空想○学読本』で見たウル○ラマンと同様に頭の上側が捥げた状態で倒れ伏す風竜の姿がそこにあった。
ブレス2発分と幾多もの風の刃の攻撃の威力が、ステータス増強状態の俺の防御力無視攻撃の一撃に乗せられて、更に『心眼』の効果である急所攻撃の威力増加が一点に集中して炸裂した結果だ。
完全に脳みそが消し飛んでいる。
流石にこれなら生きていないだろう。
念の為に『鑑定』で風竜のステータスを確認すると、HPは0で死亡が確認できた。
身じろぎ一つしない風竜を見て、俺はその場に座り込む。
「あー……きつかった。やっと終わったわ……」
紛れも無く本心である。
(異世界での初戦闘がこれとか、この先が思いやられる)
とか思いながらも、内部保存の残り重量を確認すると、残りは94kgとなっていた。
先程の墜落攻撃は威力は高いが単発判定で、地面が弾けた時の衝撃で2HIT扱いだったのかなと推察する。
などと俺が現実逃避気味に考えていると、
「シュラ君、助けに来たよ!!」
いつもの白衣姿ではなく、パワードスーツのような物々しい恰好のティアリエが姿を現していた。
「……って、ええええッッ!!?風竜が死んでる!?何でェ!!?」
そして、俺が先程倒した風竜の姿を見て驚きの声を上げていた。
ティアリエの事すっかり忘れてた。
そんな余裕無かったし、仕方ないよな。
「シュラ君、シュラ君!!これは一体どういう事なんだい!?」
俺の姿に気付いたティアリエがギュンと物凄い高速で目の前にまで来て捲し立てる様に問う。
「急いで来てもらった所悪い。今さっき倒しちまった。済まない、無駄足を踏ませちまったな」
「いや、それは別に全然構わないんだけど、倒したって一体何がどうなったらこうなるのさ?」
「一言で言うとすげー頑張った」
「だろうね!!でも私が聞きたいのはそこじゃないんだよ!?」
「悪いんだが、今は説明する気力が湧かねえから少しだけ待って貰えないか?」
何度も味わった風竜の攻撃のダメージと『自動修復』による強制修復の痛みのせいで精神的な疲弊が半端じゃないのだ。
「……それもそうか。お疲れ様、シュラ君。本当に頑張ったね」
俺の様子を見たティアリエは慈しみに満ちた表情で、座り込む俺の頭を撫でてそう言った。
むう、そういう歳でもないんだが、今は抗う気力も湧かないのでティアリエの好きにさせることにした。
風竜の最期の攻撃はバ○ファルクの急降下攻撃の規模凄い版って感じです。




