初めての遭遇
森を抜けた先には燦々と日の光が降り注ぐ緑の平原が広がっていた。
俺とティアリエはその平原を歩いていた。
「今日は素材集めと俺の戦闘訓練が目的なんだよな?」
「そうだよ」
「オレ、丸腰なんだが良いのか?」
相変わらず装備無しのままです。
「君のレベルで装備できるような鉄製の装備とか使っても君のステータスだとブッ壊すのがオチだよ?」
「なら良いわ」
どうやら装備にレベル適正が存在する世界みたいだ。
そういうゲームもあったりするので理解は出来る。
そういう事情なら仕方あるまい。
ステータスとレベルが見合うまでは素手で殴る脳筋プレイがメインになりそうだ。
「まあ、安心しなよ。君の防御力を突破できるような魔物はこの辺りにはいないからさ」
「おい、不用意にそういう事言うなよ……」
『フラグが立つだろ』と言おうとした瞬間だった。
脳裏に頭上から何か巨大なものが物凄い速度で飛んでくる情景が浮かび、その次の瞬間には『直感』スキルが致命的な危機の到来を予見した。
「ティアリエ!!」
何が来るのか分かってなどいない。
ただ、ヤバイと頭が魂に告げている。
俺は反射的に前を歩くティアリエの襟首を掴んで後ろに投げ飛ばす。
一瞬『ぐえッ!?』とくぐもった声が聞こえたが、気にしている余裕は無い。
ティアリエを投げると同時に俺も後方に向かって駆け出してヘッドダイブを敢行。
その直後だった。
ズドンッ!!!
大地を大きく揺るがす爆音と衝撃が先程まで俺達が立っていた位置から響き渡る。
なんつー衝撃だ。
まるで砲弾の着弾だ。
「な、何事!?」
突然の事態にティアリエは状況を把握できていないみたいである。
いや、俺も分かってはいないんだけどな!
濛々と湧き上がる土煙の中で何か巨大な影が蠢くのが見えた。
徐々に土煙も晴れてその全容が明らかになってくる。
高さはおおよそ10m前後。
その全身を彩るのは輝きを放つ淡いエメラルドグリーン。
その巨大な何かは鎌首を擡げて、俺とティアリエを睥睨する。
その容貌は巨大な爬虫類。
大きな蜥蜴の背中に蝙蝠のような翼が生えているそれは、俺達の世界あっても誰でもその存在だけは知っている空想上の存在そのものだ。
「ドラゴン……!」
「くっ……この辺りの生態調査はしてたから油断してた!はぐれの竜か!!しかもよりにもよって風竜とかついてない!他の属性竜ならまだ戦い様があるのに!」
「その言い分だと厄介な相手みたいだな!」
まあ、あの威容だ。
半端なく強いという事だけはビンビンと感じられる。
「正直、厄介なんてもんじゃないね!私達翼人にとっては相性的に天敵としか言い様が無い存在だよ!!」
「どうする?逃げるか?」
「無理だ。もう補足されてる!私の速度でも追われたらスグに追い付かれる!」
マジか。
ティアリエのSPDは8000を越えていた筈だ。
それでも追い付かれるとか相当だな。
となるとSPDが100にも満たない鈍ガメの俺は言うに及ばずってヤツだな。
「しかも、対竜兵装は軒並み拠点に置いてきてるしどうしたものかな!」
使う予定が無かったから置いてきたのだろう。
素材集めもすると言っていたから余計な荷物を持って来たくなかったのだと想像できる。
「ティアリエ、拠点に戻ってその対竜兵装を持って来ればアレを倒せるか?」
「倒し切るのは難しいけど、撃退ぐらいならできると思う!」
「良し、ならここは俺が引き受ける。俺が足止めしている間にティアリエは拠点に戻って対竜兵装を持ってきてくれ」
逃げられないというのであれば、覚悟を決めるしかなかろう。
(全く、異世界に転生して初の遭遇と初戦闘がいきなりドラゴンとかどうなってるのかね!?)
内心で毒づきながらも俺は、目の前の巨大な竜を相手に睨み返していた。




