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それぞれの戦い(シュラ) 1

漆黒の魔○馬姿で森の中を駆け抜けていた俺だったが、森を出るまでに何時間も走り続けることになった。


森が広過ぎる上にミラフィアの家はかなり奥地にあったのだから仕方が無い。


それに今の躰は体力という軛が存在していないので精神力が持つ限り全力疾走を続けられるのが救いであった。


でなければもっと時間を要していただろう。


太陽は真上を通り過ぎて西に傾き始めていた。


ティアリエが向かって来る船の存在を伝えて来たのが日が昇り始めた早朝であったので、それから6~7時間ぐらいが経過したぐらいであろう。


ティアリエの推察が正しければそろそろ接岸していてもおかしくない頃合いだ。


森から出たと言ってもまだまだ長い距離が残っている。


直線距離で言えば、森から今の位置に来るよりもここから海岸までの方が長いぐらいである。


だが、それは俺に関しては問題にはならない。


体力が無限だと言うのもあるが何よりも、ここは平原で障害物が無いという辺りだ。


(森の中だと木が邪魔だったから馬の姿で走り抜けたが、ここから先は飛んで行けるからな)


まあ、邪魔な木々を切り倒してしまえば森の中からでも飛び立てたのだが、むやみやたらと自然破壊するのは気が引けたし、相手側も到着まで時間が掛かるという事だったので森は陸路で抜ける事にしたのだ。


『確実に殲滅しろ』という要求(オーダー)だったので、相手が陸に上がってからの方が良いしな。


海上で船ごと撃沈させるのが一番早いと言えば早いのだが、取りこぼしが出る可能性を否定できない。


生物が多い海中では探知するのも大変だ。


運良く漂流した結果生き残る者が居てもおかしくはない。


陸上なら見通しも良いし、逃げ場も無いのでその辺りが楽なのだ。


どちらにせよ上陸するまでは待たないといけないので、無理をして急ぐ必要性が無かったというのもある。


平原へと出た俺は早速『形状操作』を発動させて、自らの形を変える。


左右に上下2枚の翼を持つ複葉機。


紅○豚でポ○コと激闘を見せたカ○チスR3C-0だ。


趣味でラジコン飛ばしたりもしていたので形状はバッチリ覚えている。


ただ早く飛ぶだけならミサイルにでも変形してブッ飛べば良いだけの話なのだが、今回は索敵をする必要性があるので敢えてレトロな機体にしてみた。


カー○スを選んだのは無論ただの趣味である。


男というものは幾つになっても童心を忘れないロマンを追い求めてしまう残念な生き物なのだ。


カ○チスだと浮舟(フロート)の部分が擦れるだろうと心配されるかもだが、船底の部分に車輪を付けた状態にしてあるので問題無い。


飛び立ってから再度『形状操作』を使用して車輪は消す予定である。


(それじゃあ、離陸(テイクオフ)といきますか!)


風竜玉に魔力を送り込み風を発生させて推進力に変える。


ちなみにプロペラは風を受けたら回るだけの完全な飾りである。


エンジンも使用していないので非常に静かと言えよう。


俺としては騒がしいエンジン音とガソリンの臭いも嫌いではないので一抹の物足りなさを感じてしまうが、その辺りは電動式のラジコンと一緒だと思えば気にはならない。


段々と速度が上がり、翼が受けた風を揚力へと変えてふわりと浮き上がる。


安定して飛べるようになるまでに物凄い苦労をしたが、やはり空を飛ぶのは楽しい。


心躍るものがある。


(さて、ここから先は気を引き締めて行こう。今から俺は命のやり取りをしに行くんだからな)


だが、楽しんでばかりもいられない。


これから俺は戦いに赴くのだから。


スイッチを押すかの様に気持ちを切り替える。


一瞬の油断が命取りになるなど前世でもザラであった。


この魔術の存在する異世界では尚更であろう。


空の中独り、静かに覚悟を決める。


見落としがないように注意しながら地上を眺めて、俺は飛ぶのであった。


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