迫り来る悪意の足音 3
ゴドリックの案内もあって、川を越えてから10分もしない内に俺達はミラフィアの住処へと辿り着いた。
エルフの警備からの襲撃を警戒していたがそれもなく着いた。
俺も隠形系のスキルを発動させていたが、多分、ティアリエが色々とフォローしてくれていたからだろうと察する事が出来る。
ミラフィアの家は森の奥深くに佇む魔女の家とでも言った感じであった。
ミラフィアの家に着くなり、ゴドリックは俺から飛び降りると、
「ミラ、居たら返事をしてくれ!!」
玄関を開け放ち、頭を下げて大声で彼女を呼んだ。
中に入らないのは入口が普通サイズなのでゴドリックの巨体だと通れないからだ。
ちなみに俺も通れ無さそうな大きさであった。
ゴドリックの呼び掛けに対し、返って来るのは静寂のみ。
森の木々のざわめきの音だけが聞こえる。
「どうやら、居ないみたいだね」
その間にティアリエが周辺を探知していたのであろう。
結果を端的に告げる。
「私が中に入って様子を見てくるよ。シュラ君とゴドリック君は少しだけ待ってて」
俺とゴドリックの大きさだと普通サイズの家の中には入れないからな。
仕方あるまい。
「了解」
「……分かった」
俺達が返事をすると、ティアリエは家の中へと姿を消した。
ミラフィアが居ないと判明して、ゴドリックは落胆と不安を露わにしていた。
彼女を心配する悲痛な感情がこちらにまで伝わって来る。
「ゴドリック、ティアリエが家の中を探ってる間に俺達も周辺を探っておこう。ミラフィアの向かった先ぐらいは分かるかもしれない」
「分かった」
このままじっとしていても良い事は無さそうだと判断した俺はそのように提案した。
少しでも気を紛らわせた方が良いというのもあるし、上手く行けば次の行動を早めることが出来る。
「さて、家から伸びる足跡は……」
猟師もやっていた関係で前世に習得したトラッキング……
足跡を追跡する技術を動員して、最新の足跡を辿る。
ゴドリックは『フー……フー……』と鼻を鳴らせて匂いを重点的に追ってくれている。
地球においても、地中に埋まっているトリュフを見付けるのに豚を使ったという例もあるので、ゴドリックが匂いに対して鋭敏な感覚を有していても不思議では無い。
今のところ、俺の見立てとゴドリックの匂い探査のラインは重なっている。
そして、それは50m近く辿っても変わらなかった。
「どうやら、ミラフィアは俺達が向かって来た方向とは違う方面に向かったみたいだな」
ミラフィアがゴドリックの家に訪れる時、手土産に野草やら果物やらを持ってくるのでそれの採取に向かったのかもしれない。
「どうやらそのようだ」
「だが、一つ朗報があるぞ。この周辺にはミラフィアとエーゼル以外は来ていないみたいだ」
足跡を判別する限り、ミラフィアの家周辺にあった足跡は2種類のみ。
しかも、両方小さな足跡だ。
となると、あの2人以外有り得まい。
「手前の鼻も同じ結論を出している。どうやら、ここはまだ先行部隊には見付かっていないようだ」
それが判明してゴドリックは少しだけ胸を撫で下ろしていた。
「おーい、2人共!家の中は荒らされた形跡とか諍いの痕跡とか無いみたいだから、ミラフィア君は攫われた訳では無さそうだよ!」
俺達が調査している間にティアリエも家の中の調査を終えていて、その結果を2階の窓を開けて、その身を乗り出して声を飛ばして伝えてくれた。
「俺達も外を調べて同じ結論だ。だが、ここからミラフィアは森の中に向かったみたいだ!」
「分かった!私も今そっちに行くよ!」
ティアリエは窓を閉めると、玄関から出てきてスグに合流した。
「良し!じゃあ、ミラフィア君を追うとしよう!」
俺の上に再度、ゴドリックとティアリエが騎乗して気合を入れる様にティアリエが言った瞬間……
トスッ!
俺の目の前の足元に木で出来た矢が突き刺さる。
「おい、貴様ら!ここで何をしている!?」
そして、森の中からいつも以上に苛立たし気な様子を見せるエーゼルが声を張り上げていた。




