再起戦
【青コーナー、阪田ジム所属、125パウンド、佐野~圭佑~】
「いけー、ケースケ!お前なら勝てる!」
「あの選手が仲村さんのお知り合いですか。しなやかな腕の振りしてますね」
リングサイドで彩音が早速解説を始めた。
ホントによく見てるなぁ、細かいとこまで。
【赤コーナー、滝沢ジム所属、124パウンド二分の一、真鍋~和彦~】
「おぉーし、真鍋ーっ!あんなヤツぶっ飛ばせ!」
「まーなーべ!まーなーべ!」
「スゴいわね、向こうの声援…」
リングでは両者が中央でレフェリーの説明を聞いてる。
弾丸はややうつむき加減で、対戦相手は物凄い顔してガン飛ばしている。
「何か相手の選手見てると根津くん思い出すわね」
見た目がヤンキー同士だからそう見えるんじゃないのか、沙織には。
しかしこんなとこで根津だなんて、変なこと思い出させるなよ。
「ん?亜美、どうした?」
亜美は下を向き、両手を合わせ拳を握るようにして祈っている。
「教会じゃねーんだから、しっかりケースケの試合を観ろ!」
「アニキ、そんな簡単に言わないでよ!」
亜美は不安で試合を観れない状態だ
「いいからお前はケースケの試合をよく観るんだ」
そう、亜美はそのために弾丸の練習に付き合ったんだから。
「ファーストコンタクトでこの試合の行方がわかるような気がします」
彩音、そんな事まで予想してんのか?
両者がコーナーに戻り、セコンドはリングを降りた。
【カァーーン!】
第一ラウンドのゴングが鳴った。
相手はサウスポースタイル、オレはサウスポーだから弾丸のスパーにとことん付き合った。
弾丸が足を使って小刻みにジャブを繰り出す。
相手はあまり動かず、ジーっと弾丸の動きを見ている。
最初に動いたのは弾丸だ。
独特のノーモーションのジャブをヒットさせた。
「スゴい!あのノーモーションのジャブ!あれでペースを握れます!」
今回は彩音の解説付きだ。
一瞬相手がひるんだが、左ストレートを返してきた。
弾丸は上手くスウェーバック(上体反らし)でよけた。
「あの左をスウェーでよけるなんて、かなりの高等テクニックです!」
何だか彩音がうるさくなってきたぞ…
リングでは相手がプレッシャーをかけに左右の連打を放つ。
弾丸は足を使ってかわし、ノーモーションのジャブで主導権を握ろうとしている。
「アウトボクシングでカウンター狙いですね!」
「酒井さんホントよく観てるわね!」
沙織も感心していた。
弾丸が仕掛けようとした瞬間、対戦相手は弾丸の爪先を踏んだ。
足を使う弾丸は爪先が踏まれている為、動けない。
そして左ストレートを放った。
「レフェリー、そいつ足踏んでるぞ!反則じゃねーか!」
オレはつい叫んでしまった。
スパーで反則を繰り出し、対策まで練ったが、いざリングに上がると、思うように対応出来ない。
弾丸は左ストレートをもらったが、上手く衝撃をかわしていた。
「スゴい、あのディフェンス!超一流の防御です!」
スゲーな、そんな事までわかるのか、彩音は。
シロートならそんなとこまでわからないのに。
「ケースケさん、頑張って!」
亜美も声援を送った。
その後、動きがないまま第一ラウンド終了のゴングが鳴った。
「仲村さん、ケースケ選手のテクニックは超一流ですね。ワタシ久しぶりに見ました、こんな選手を!」
「酒井さん、そんなとこまでわかるの?」
「はい、この試合はケースケ選手の勝ちです。次のラウンドが勝負どころです」
オレもそう思った。
ヤツは反則をしてくる。
てことは裏を返せば、まともにいっても勝ち目は無いと思ってるに違いない。
【カァーーン】
第二ラウンドのゴングが鳴った。
弾丸は先程と同じ足を使って的を絞らせないようにしている。
相手は弾丸の動きについていけない。
アウトボクシングとインファイト。弾丸はヒット&アウェイで、相手は懐に潜り込んでパンチを打つタイプだ。
面白いように弾丸のジャブがクリーンヒットする。
ジャブとはいえ、何度もまともに食らうとストレート並の威力になる。
「あっまた!」
彩音が声を上げた。
弾丸の爪先を踏もうとしていた。
だが弾丸はそれ以上に速く動いた。
がら空きのボディにフックを叩き込んだ。
「よし、ダウンだ!」
「きゃー、すごーい!」
「お願いそのまま倒れていて!」
「今のフック、スクリュー気味のいい角度に入りましたね!」
三者三様ならぬ、四者四様のコメントだ!
相手はカウント8で立ち上がった。
「いけー、ケースケ!ここで終わらせろ!」
オレも必死になって声を送った。
さっきのボディブローで足にきている。
今がチャンスだ!オレたちは立ち上がり声援を送った。
弾丸は足を止め、インファイトに挑んだ。
そして一瞬速く弾丸の右ストレートが相手の顔面を捕らえた!
ダウン!ここでレフェリーが手を交差し、試合を止めた。
「よぅーし、勝ったーっ!」
「すごーい、ケースケくん勝ったぁ!」
「やったー!勝ったぁ!」
「あの右ストレートがほんの一瞬遅れたら逆にやれてましたね」
もう彩音の解説には大笑いだw
ついでに弾丸のKO勝ちだから、更に大笑いだ!
ワッハハハハハ!
「いいぞー、ケースケ!」
2ラウンド1分27秒、右ストレートで弾丸のKO勝ちだ。
リング中央で勝ち名乗りを上げる弾丸。
「アニキ~…初めてボクシング観たけどさぁ…何かこう、観てるだけでしんどいよねぇ」
亜美がヘナヘナと座り込んだ。
まぁ殴り合いだからな、ボクシングは。
亜美にはちょっと刺激が強すぎたかも。
こうして弾丸の再起戦はKO勝ちで幕を閉じた。
次はスーパーフェザー級なのか。
それは今後の話し合い次第だと思う。




